研究活動一覧

科学研究費補助金による研究

平成16~20年度 文部科学省・科学研究費補助金 学術創成研究費:
弥生農耕の起源と東アジア-炭素年代測定による高精度編年体系の構築-

学術創成研究「弥生農耕の起源と東アジア」土器付着物分科会

日時 平成18年2月11日(土) 13:00~17:00
会場 国立歴史民俗博物館
参加者 22名
内容

土器付着物研究について 小林謙一
土器付着物微細形態の観察 永嶋正春・村本周三
弥生中期~古墳前期の土器付着炭化物の炭素同位対比-愛知県・石川県を中心に-
(名古屋大学文学部 山本直人)
キャリパー形土器を用いた炭化物生成実験 
(新潟県立歴史博物館 西田泰民・宮尾 亨) 
土器に残された痕跡と使用方法 
(岡山大学埋蔵文化財調査研究センター 中村大介) 
カリンガ土鍋のススコゲの形成過程:使用回数の増加に伴う変化 
(北陸学院短期大学 小林正史)
討論 
挨拶 西本豊弘

研究会の概要

学術創成研究の分科会である土器付着物の研究会が、平成18年2月11日に国立歴史民俗博物館において22名の参加を得て実施され、6つの報告が行われた。
最初の報告は、小林謙一氏による「土器付着物研究について」である。年代測定研究の進展の中で、土器付着物の起源の検討は、重要な課題であるという指摘の後、具体的に多数の試料の分析結果を踏まえた安定同位体分析などについての経過を報告した。
2番目の報告は、永嶋正春・村本周三両氏による「土器付着物微細形態の観察」である。土器付着物の起源となる物質は、炭化物だけではなく、AAA処理を経た段階で残存する物質には、たとえば微細なミネラルなどがあり、両氏はこうした微細な付着物の構造について、電子顕微鏡の画像などを用いて報告をおこなった。安定同位体分析などと併行して、構造などの形状観察の必要性があらためて認識された。
3番目の報告は、名古屋大学文学部山本直人氏による「弥生中期~古墳前期の土器付着炭化物の炭素同位対比-愛知県・石川県を中心に-」である。愛知県・石川県におけるこれまでの研究成果が紹介された。
4番目の報告は、新潟県立博物館の西田泰民・宮尾亨両氏による、「キャリパー形土器を用いた炭化物生成実験」である。両氏の報告は、文部省科学研究費の研究により推進されている研究成果の途中経過報告である。これまでに現生のさまざまな食材を収集し、実際に煮沸実験を行って、煮沸後の土器の付着炭化物の炭素・窒素の濃度比、そして安定同位体比分析を行った。まだ、分析の途上であるが、付着炭化物と煮沸前の食材の炭素・窒素の濃度比に変化がないことが明らかになり、今後、何を煮たかを特定する可能性のあることが報告された。
5番目の報告は、岡山大学埋蔵文化財調査研究センターの中村大介氏による「土器に残された痕跡と使用方法」についてである。土器の付着炭化物の研究は、科学分析の前に土器の表面の付着状態を観察し、どのように煮沸したのかという点も分析する必要性がある。この点について、具体的な資料の分析と煮沸実験等の比較検討からモデルが提示された。 6番目の報告である、北陸学院短期大学の小林正史氏による「カリンガ土鍋のススコゲの形成過程:使用回数の増加に伴う変化」も、中村氏の報告と同様に土器付着炭化物の表面観察と煮沸方法の検討からなる。小林氏は、フィリピンのカリンガ村での民族調査の成果について、煮沸方法と土器の大きさや形との因果関係、また土器の焼成後に塗布される樹脂の話など、示唆に富むものであった。
以上の報告を踏まえて討論が行われた。特に弥生時代から古墳時代の土器の内面に付着する穀物類について、総じてヒエやアワといった雑穀類は数パーセントと少ないが、山本直人氏により古墳時代開始期に雑穀類の付着が顕著になることがあるという興味深い点が指摘されるなど、分析方法が中心の報告会であったが、今後の研究の方向性も検討され、盛会にうちに閉会した。

(文責 小林青樹)

小林謙一氏による発表

分科会の様子