研究活動一覧

科学研究費補助金による研究

平成16~20年度 文部科学省・科学研究費補助金 学術創成研究費:
弥生農耕の起源と東アジア-炭素年代測定による高精度編年体系の構築-

AMS-14C年代測定研究の現状

学術創成研究「弥生農耕の起源と東アジア」は、高精度炭素14年代測定によって日本の先史年代編年の実年代を再構築すること、またそれを通して、日本における農耕の成立とその列島における展開、さらに東アジアとの関連を明らかにすることを目標にしています。具体的には、まず、土器編年で組み立てられた日本の先史時代の時間軸を地域ごとに暦年のスケールで決めていくことです。次に、これまでに明らかにされてきた考古事象・歴史事象を実年代の時間軸に沿って、地域ごとに再整理することです。これによって、農耕文化・社会の展開を時空的に理解する基本的なデータが得られ、また自然環境や社会的な変動とのつながりを議論する手がかりとなるはずです。また将来、年代精度をより高く決めることができれば、考古・歴史事象の相互の関連や、原因・結果の分析など、問題のより深い理解に繋げることができるものと考えています。AMS炭素14(14C)測定で得られる年代データは、こうした研究を行うための基礎資料となるものです。

年代測定研究の取り組み

地域または遺跡ごとに分担者・協力者を組織して資料収集、前処理・試料作成、14C測定、年代分析を行っています。資料収集は全国各地の埋蔵文化財関係者の協力を得て収集しています。対象となる資料は、土器型式の明確な土器付着炭化物(スス・コゲ)資料、あるいは共伴する土器の型式との関連が明確な木材、木炭、漆、種実などです。1土器型式あたり約10資料が目標です。統計的な「ゆらぎ」*のため、資料数が少ないと精確な年代の把握が難しいためです。前処理・試料作製は、ほとんどを歴博で行っています。AMS14C測定については、(1)国内の大学のAMS施設と共同研究、(2)民間分析施設への依頼分析の形で行っています。2005年には、669個体、1015測定を行いました(坂本による記事参照)。なお、データ解析(較正年代への変換等)は歴博で独自に行い、データ集積、全体的な分析・解釈を行っています。

*註)
収集資料が、1土器型式の間のどの段階のものかは、一般には、分からない。
また、測定値には測定誤差があり、測定値と誤差で与えられる分布(一般にガウス分布)に従いランダムに分散する。

研究の現状

2006年2月12日に行われた報告会では、北部九州の測定結果とその解釈を藤尾が、近畿については春成が、また東日本については小林が行いました。またJCALプロジェクトについて尾嵜が報告しました。JCALプロジェクトは、端的に言えば、日本の木材による暦年較正データベースづくりです。歴博-名古屋大・東大-奈文研の共同研究で現在2資料(701BC~194BC、817BC~424BC)のヒノキの出土木材について5年ごとの年輪の14C測定を測っています。これまで得られた結果は、ほぼIntCal04に沿っており、歴博による年代観を変えるものではありません。

年代データの精確度向上への取り組み

1つは、土器付着炭化物の分析同定等によるリザーバー効果などの影響の評価です。炭素・窒素の同位体分析や組成分析を進めています。北日本を除くと海洋性の食物の頻度は非常に少ないことなどがわかっています。もう一つは、いわゆる2400年問題への取り組みです。ウィグルマッチ法を利用した精確度の向上に取り組んでいます。木材等の多数の年輪を適当な間隔で採取し、暦年較正曲線の凸凹(wiggle)の特性と、炭素14測定値のパターンを較正曲線上で比較照合する方法で、±10年あるいはそれ以下の年代推定が可能です。 また、相対年代情報を活用し、暦年較正曲線上で土器型式と実年代の関係を新旧の序列で解釈する方法も活用しています。一種のウィグルマッチ法です。このほか、測定における系統的エラーの評価と低減、微量資料の年代測定などの課題に取り組んでいます。

(文責 今村峯雄)