基盤研究(A)

中世東アジアにおける技術の交流と移転-モデル・人・技術-

研究期間:2006年度~2009年度

研究代表者 小野正敏 (本館・研究部)
研究分担者 大澤研一 (大阪市文化財協会)
金沢陽 (出光美術館)
菊池誠一 (昭和女子大学)
佐伯弘次 (九州大学)
中島圭一 (慶應義塾大学)
新田栄治 (鹿児島大学)
福島金治 (愛知学院大学)
上野祥史 (本館・研究部)
齋藤 努 (本館・研究部)
小瀬戸恵美 (本館・研究部)
西谷大 (本館・研究部)
藤尾慎一郎 (本館・研究部)
村木二郎 (本館・研究部)
篠原徹 (本館・研究部)

研究目的

この研究では、モノがもつモデルとコピーの属性や彼我の生産技術の比較、技術の模倣と移植、受容に焦点をあてて、一体性と地域個性を併せ持つ東アジアを、考古資料、文献史料、民俗伝承、自然科学分析など、多様な資料と方法により、実証的に解明することを目的とする。

東アジアの中世は、海を共有する交易・交流世界に特徴づけられる。その求心力のひとつが、東アジアに共通して、広く大量に流通した中国商品とその裏付けとなった生産技術であった。それらはひとつひとつは小さなモノであり、直接的には政治力や武力を持たないが、広く普遍的に日常生活レベルで常に必要とされる品々が主体であることが特徴である。日本を含め、アジア各地では、高級品のみならず、日常商品においてもさまざまな文物が、文化的また経済商品としてのあこがれの上位モデルとして機能し、地元向けに翻案され、コピーされた。そのため実物のモノの流通にとどまらず、生産技術が移植され、それを移転する人間集団が動いた。こうしたモノの受容や技術の移転・移植は地味ではあるが、社会の基盤から地域を大きく変化させる要因となった。したがって、それらが見せる諸相は、単なる経済流通分野での状況にとどまることなく、政治や文化を包摂した大きな時代の画期とも連動したと考えられる。また,その枠組みは、中国対日本、中国対朝鮮、中国対東南アジアといった単軸ではなく、東アジア内各地域の相互関係であり、さらに,日本列島内では各地域間の関係としても検証される。

モノ資料や技術の模倣・移植・受容という視点をとおして、各レベルにおける東アジア内の地域に与えた問題を考えたい。