若手研究(B)

世界文化遺産厳島神社における災害と防災及び維持活動に関する史的研究

研究期間:2006年度~2008年度

研究代表者 工藤 雄一郎 (本館・研究部)

研究目的

世界文化遺産、国宝、特別名勝、特別史跡、天然記念物、国立公園と幾重にも登録・指定されている宮島・厳島神社は、自然を巧みに生かした日本を代表する文化財である。その厳島神社は、台風などによって、能舞台の倒壊、平舞台・楽房の流失など幾度も暴風・高潮の災害を受けてきた。また、土石流災害も度々発生している。高潮に関しては台風時に限らず、通常の大潮時に最近では水没することも多く、自然からの災害に絶えずさいなまれてきた。現在、そうした災害に対して、伝統文化と自然との調和を損なう防災・維持方法が検討課題とされつつある。

本研究は、900年近くも文化財の根本的な価値である伝統文化と自然とが共存し続けている厳島神社において、社殿群の保全がどのように図られてきたかという点に注目し、建築史学の立場から、災害に対しての防災に関する建築技法と建築の維持活動について調査し、自然との共存の関係のなかで生ずる災害であることを視野に入れながら、分析を試みるものである。明らかにしようとしている課題は具体的には、厳島神社における災害とその内容についての具体的な事例分析、どのように災害から免れ、災害を許容できる範囲に縮小させるかなどの防災に関する伝統的技法についての分析、社殿を維持しつづけるための活動に関する分析である。それらを通じて、伝統文化と自然との調和によってもたらされた、文化財の防災及び維持活動に関する伝統的、実効的な知識を見いだし、総合的に有益な文化財建造物の技法や維持について建築史学的に提示しようとするものである。