若手研究(B)

近代化過程における遺影の展開と死生観の変容に関する民俗学的調査研究

研究期間:2006年度~2008年度

研究代表者 山田慎也 (本館・研究部)

研究目的

本研究では、遺影の扱われ方の変遷を通して、近代における戦死者祭祀が、一般の人々の葬制に影響を与え、死生観の変容をもたらしたことについて分析を行う。

すでに平成15年度科研費若手研究B「国民国家形成と遺影の成立に関する民俗学的研究」において、岩手県中央部における近世末の絵額奉納習俗が明治期以降の国民国家形成過程で、絵額奉納習俗がある岩手県中央部以外にも、遺影を奉納する地域がかなり広い範囲で分布していたことが判明した。そして遺影の成立は絵額の奉納習俗の有無に関わらず、夭逝や事故死の以上死の祭祀に関連して、生じてきた可能性が考えられるのである。

そこで岩手県を中心に、絵額奉納などの習俗がない地域における遺影の奉納習俗をとりあげ、遺影が奉納された死者の性格を検討し、その使用の目的の変遷を明らかにすることで、遺影の成立が国家形成の影響を指摘できるだけでなく、さらに、死の意味づけの変容、つまり、近代化の中で死後の存在を前提に安楽を祈ることから、人生の決算と生の顕彰におおきく関心が移行していることについて分析することを目的としている。それによって葬送儀礼をはじめ現代の人々にとって、死のとらえ方の世俗化現象を検証することになる。