若手研究(B)

経塚・墓地・寺社が形成する宗教空間の考古学的研究

研究期間:平成16年度~平成18年度

研究代表者 村木二郎 (本館・研究部)

研究目的

平安時代の後半に浄土信仰のもと全国各地でつくられ始める経塚は、中近世を経て、形態や背景を変えながらも、現代でもつくられ続けている日本特有の信仰遺跡である。経塚遺物は美術品として見られがちであったため、銘文研究を除き、その歴史資料としての価値は見過ごされがちであった。しかし、近年の考古学的手法による経塚研究は、経筒の型式分類化、共伴する陶磁器や鏡の年代観の確立をもたらし、今や経塚資料は当時の社会の多様性、信仰のあり方といったさらに高次の位相にまで迫りうる絶好の資料となっている。たとえば、近世の石塔が残る墓地に入ると、こういった経塚が入口や中央に配置されていることがある。それは、経塚によって土地が聖域化し、またそれを手がかりに死者が成仏できるという意識があるからで、人々にとって意外と身近な遺跡であったことがわかる。本研究では経塚・墓地・寺社を総体的に考証して、日本人の基層信仰を探っていきたい。