基盤研究(B)

呪術・呪法の系譜と実践に関する総合的調査研究

研究期間:平成16年度~平成18年度

研究代表者 小池淳一 (本館・研究部)
研究分担者 鐘江宏之 (学習院大学文学部)
鈴木一馨 (財団法人東方研究会)
三上喜孝 (山形大学人文学部)
増尾伸一郎 (東京成徳大学人文学部)
村木二郎 (本館・研究部)
平川南 (本館・館長)
松尾恒一 (本館・研究部)
常光徹 (本館・研究部)
山田慎也 (本館・研究部)

研究目的

本研究は呪術及び呪法が日本列島とその周辺においてどのように展開し、変遷を遂げてきたかを考古学・歴史学・民俗学の方法と知見とを総合することで明らかにしようとするものである。古代における木簡や墨書土器、中近世における呪術書や呪法の記録、民俗文化における儀礼や行事に使用される守札や祭文等を通して、それら相互の系譜関係と実際の使用状況を把握し、呪術・呪法の史的な位相を解明しようとする。これらの史資料はそれぞれの学問分野において、注意され、データとしては蓄積されてきているが、統一した視点からの把握、分析は充分におこなわれているとは言い難い。本研究は呪術・呪法を積極的に核として位置づけ、総合的に把握することで文化史に新たな知見を付け加えようとするものでもある。

考古学及び古代史においては呪符、呪具と判断される多くの出土品が見いだされてきており、さらに墨書土器の中には呪術に関連するであろうと推測される記号や絵画が残されている例は数多い。これらは個々の呪術の使用状況や環境を具体的に示すとともに地域的な偏りや特徴も存するところから、呪術の実践と古代における様相を示すものということができる。古代史研究において本館が中核となって進めてきた赤外線映像等による解読分析をさらに進めることで、こうした断片的な資料の位置づけをさらに明確なものとしていくことが可能である。

中世史、近世史においては、陰陽道、宿曜道、仏教、神祇等に関連して多くの呪術・呪法が行われ、貴族のみならず、武士や庶民などの日常生活においてもそれらが盛んに用いられていたことが判明している。本研究では特に陰陽道書及び密教の作法書等に注目し、そこで用いられている神仏や精霍の呼称と性格を明らかにして、中近世における呪術・呪法の規範を確定したい。それに次いで、私文書や記録類あるいは紙以外の文字記録(石塔、板碑、棟札等)などに記されている呪術・呪法の実際の用例を検討する。こうした作業によって、漠然と「まじない」関連の資料とされてきたものを宗教史的社会史的な位置づけを施していくことが可能になっていくと考えられる。

近現代の民俗儀礼や行事にも呪術・呪法は数多く見いだすことができ、それらの実践の様相を探るためには大きな課題とヒントとを提示してくれている。こうした民俗データの多くは呪術・呪法が社会的にどういったコンテクストのもとに実施され、影響や緊張を生じさせたかを示すとともに、秘匿され権威づけられる傾向をも併せて考慮することによって、系譜的相承的な視点からの考究も可能にする。さらには過去の史資料の解釈にも有力なヒントとなるので、民俗事象の歴史研究への適用の一つのケースとして位置づけることも可能である。特に具体的な身体所作や葬送儀礼などにおける呪術・呪法の問題をこうした観点から見直すことは、従来の儀礼、俗信研究に新しい視点を付け加えることにつながるものといえよう。

全体として、この研究は、これまでその重要性は繰り返し確認され、データそのものの蓄積が行われてきた呪術・呪法について、その歴史と具体的な使用の様態とを把握することを主眼とし、さらにその知見を総合することを通して、呪術・呪法研究の基礎を固め、新たな方法論を練り上げていくことを目指している。