基盤研究

公募型共同研究

直良コレクションを構成する更新統産動植物化石の分類学的再検討と現代的評価

研究期間:平成29年度~平成31年度

研究代表者 甲能 直樹 (国立科学博物館)
研究組織

半田 直人(大阪大学総合博物館)
甲能 純子(国立科学博物館)
百原 新(千葉大学大学院)
西岡 佑一郎(早稲田大学高等研究所)
茂原 信生(奈良国立文化財研究所)
高橋 啓一(琵琶湖博物館)
門叶 冬樹(山形大学)
坂本 稔(本館研究部)
工藤 雄一郎(本館研究部)

研究目的

本研究の申請者は、1995年ごろから本研究の課題対象である国立歴史民俗博物館所蔵(以下歴博)の故直良信夫博士収集コレクションに含まれている日本産哺乳類化石について、継続的に調査研究を行ってきた。その後、2008年ごろから更新統産哺乳類化石について再検討を始めたところ、この中に日本列島からは絶滅してしまったネコ科食肉類やこれまで日本列島からは未知だったウシ科の小型種(ニルガイの仲間)が含まれていることに気がついた。とくに、後者についてはそれが古く大正年間に東北帝国大学の松本彦七郎によって中国四川省の更新統から記載された哺乳類化石であることが明らかとなり、現在では2度と得ることのできない国内外の貴重な標本群を多数含んでいることがますます鮮明となってきた。そうしたことから、コレクションを構成する更新統産動植物化石をそれぞれの分野で先頭に立つ研究者が共同で研究を行って、個別の研究成果を統合してその全体像を明らかにすることができれば、日本の更新世の動植物群集の知識を充実させる上で極めて意義深い寄与を導き出せると考えるに至った。また、コレクション中には直良により端緒が切り開かれ日本列島の氷期研究の原点となった東京都江古田産の最終氷期の植物化石が残されている。そこで、本研究の目的は直良コレクションの中でもとくに更新統産の動植物化石を現在の知識で総合的に詳査し、個々の標本の概要把握を行った上でそれぞれの分類群を再検討してコレクションの持つ学術的価値を再評価し、日本および東アジア各地の更新世動植物群集の種構成に新たな情報を付け加えることで、広く東アジアの更新世の動植物群集変遷史の理解に寄与することである。

この目的を達成するため,本研究においては(1)直良コレクションを構成する日本および東アジアの更新統産動植物化石の一つ一つの標本の記載と写真撮影、実測、必要に応じた標本の年代測定を実施し、その成果を個別論文ならびに総括論文にまとめて適切な国際誌ならびに歴博研究報告で報告すること、(2)近年様々な研究によってその実体が明らかとなりつつある有史時代のニホンオオカミの情報に基づいて、直良コレクションに含まれる化石に基づいた日本列島の更新世オオカミの実像に迫ること、(3)2019年に予定されている歴博第1展示室の更新に際してこの更新世オオカミの実像を可能な限り正確に再現した生体復元模型を作成することを目標とする。これらの課題を通して、日本の古生物学の黎明期を代表するにもかかわらずその古生物学史に必ずしも正確に反映されているとは言えない直良信夫の業績とコレクションの古生物学史的再評価も視野に入れて研究の充実を図る。