基幹研究

日本の原始・古代史像新構築のための研究統合による年代歴史学の新展開
―新領域開拓と研究発信―

(総括研究代表者 本館・研究部 藤尾 慎一郎)

【広領域歴史創成研究】北と南からみた古代の列島社会 ~列島諸地域の交流・形成と環境変動~

研究期間:平成28年度~平成30年度

研究代表者 三上 喜孝 (本館研究部)
研究組織 伊藤 武士 (秋田市役所)
川尻 秋生 (早稲田大学文学学術院)
小嶋 芳孝 (金沢学院大学)
坂井 秀弥 (奈良大学)
坂上 康俊 (九州大学大学院)
杉原 敏之 (福岡県教育庁)
高梨 修 (奄美市立奄美博物館)
田中 史生 (関東学院大学)
中塚 武 (総合地球環境学研究所)
永山 修一 (ラ・サール高等学校)
菱田 哲郎 (京都府立大学)
蓑島 栄紀 (北海道大学アイヌ・先住民研究センター)
八木 光則 (岩手大学平泉文化研究センター)
柳原 敏昭 (東北大学大学院)
山縣 耕太郞 (上越教育大学大学院)
吉野 武 (宮城県多賀城跡調査研究所)
桒畑 光博 (都城市教育委員会)平成28年10月1日より
青山 宏夫 (本館研究部)
内田 順子 (本館研究部)
坂本 稔 (本館研究部)
林部 均 (本館研究部)

研究目的

本研究は、7~10世紀の日本列島の北と南の地域をフィールドに、文献史学、考古学のみならず、自然科学との協業により、列島諸地域の交流の実態や、自然環境の変動の影響を念頭に置いた列島諸地域の形成の様相を明らかにすることを目的とする。

古代国家は7世紀後半以降、現在の東北地方を広域支配するための政治拠点として城柵、九州地方を広域支配するための政治拠点として大宰府を設置し、列島の北と南の地域の支配体制を固めた。東北の城柵や九州の大宰府は、政治・軍事の拠点のみならず、さらにその外側に広がる北方世界(北海道)や南方世界(奄美・琉球)の窓口として、人や物の交流を支えた拠点でもあった。蝦夷と呼ばれた北方との交流、奄美や琉球などの南方との交流を示す考古学的事実が、近年では次々と明らかにされている。

平成24年度から26年度にかけて実施された共同研究「古代地域社会の実像」(研究代表者:林部均)は、「共同研究実績報告」の中で「列島の北と南の世界が、王権とのかかわりの中においても、そして、地理的環境や自然状況などにおいても、きわめて独自な特徴をもった地域であり、その地域に軸足を置くことにより、列島の歴史(いわゆる日本史)についても相対化して考えることができるという共通の研究基盤が形成された」としている。本研究ではこの視点を継承し、フィールドを列島の北と南に絞り、具体的な交流の様相を明らかにするとともに、自然科学と協業しながら自然環境の変化や気候変動といった視点に重きを置き、これらが列島諸地域の社会の形成にどのような影響を与えたのかを明らかにしたい。

2011年の東日本大震災以降、今に至るまで、地震や火山噴火といった自然災害の脅威が、私たちの社会に大きな変化をもたらしつつあるが、本研究が対象とする時期の中でもとりわけ9世紀は、数多くの自然災害を経験した時代であった。有名な「貞観地震」のみならず、東北地方や南九州では火山の噴火が相次いだ。とくに列島の北と南では、こうした自然災害による環境の変化が、地域社会の新たな秩序の形成をもたらし、人と物の移動や交流を促進したのである。

さまざまな自然災害をどのように克服し、新たな地域社会を形成していくかは、現代に生きる私たちに課せられた使命である。7世紀から10世紀にかけて自然災害に見舞われた列島社会、なかでも直接的な影響を受けた北と南の地域社会が、災害をどのように克服し、新たな社会秩序を形成していったのかを歴史学的に検証することは、現在の私たちが直面する課題を解決するためにも、大きな意義をもつと考える。

研究会等

概要

日程:2017年6月17日(木)~6月18日(金)
場所:国立歴史民俗博物館 第一会議室

内容

1.永山修一(ラ・サール高等学校)「薩摩半島の史的展開 -古代を中心に-」
 8世紀~9世紀に至る薩摩・大隅の地域支配の実態を文献・考古両面から考察した。
2.柳原敏昭(東北大学)「平安末・鎌倉期の蝦夷島と奥羽・鎌倉」
 北海道厚真町の中世遺跡の調査成果に基づき、奥羽や鎌倉との交流の様相を描出した。
3.杉原敏之(福岡県教育委員会)「大宰府における官衙の成立と展開」
 近年の大宰府の発掘調査成果に基づき、西海道諸国の官衙の特質について論じた。
4.坂上康俊(九州大学)「筑紫館の風景」
 福岡市・鴻臚館の発掘調査成果と文献史料の両面から、鴻臚館の構造と機能、さらには8世紀における対外関係の特質について論じた。

成果

いずれの報告も、考古学の調査成果と文献史料を取り入れた、意欲的な報告であった。また各発表に対して、気候変動や年代測定との関わりが意識された議論がおこなわれた。