基幹研究

歴史文化資料に基づく日本中世社会像の再構築

(総括研究代表者 本館・研究部 小島 道裕)

【広領域歴史創成研究】中世日本の国際交流における海上交通に関する研究

研究期間:平成28年度~平成30年度

研究代表者 荒木 和憲 (本館研究部)
研究組織 山内 晋次 (神戸女子大学)
榎本 渉 (国際日本文化研究センター)
四日市 康博 (早稲田大学 中央ユーラシア歴史文化研究所)
森平 雅彦 (九州大学大学院)
伊藤 幸司 (九州大学大学院)
渡辺 美季 (東京大学大学院)
米谷 均 (早稲田大学)
岡 美穂子 (東京大学史料編纂所)
佐々木 蘭貞 (九州国立博物館)
出口 晶子 (甲南大学)
藤田 明良 (天理大学)
小島 道裕 (本館研究部)
田中 大喜 (本館研究部)
村木 二郎 (本館研究部)

研究目的

前近代の東アジア国際交流史に関する研究は、近年、きわめて活発であり、「人」「モノ」「情報」の移動・交流の具体的な様相を明らかにする研究が豊富に蓄積されている。一方、そうした移動・交流を支える基盤(インフラ)としての「海上交通」も重要なテーマであるが、資料や方法論の制約も相俟って、どちらかといえば副次的なテーマとして扱われる場合が多く、また対象とする時代・地域によって研究の進展状況は一様でない。

近年の中世日本国際交流史研究において、海上交通史的視点からの歴史像の転換を最も迫られているのは、日宋貿易(10~13世紀)の分野である。11世紀後半以降に日本人商人が日宋間を往来するようになったとする通説が否定され、13世紀後半頃までは中国商人が往来していたとする説が有力となっており、その来航地である博多の国際貿易都市としての地位を従来以上に高く評価する傾向も強まっている。近年の研究成果は、日宋間の海上交通のあり方―船体・乗組員・航路など―を根本的に見直す必要を迫るものである。

日宋貿易と日元貿易(13~14世紀)との連続性については、日本史学の分野で検討課題となっている。一方、近年の中国史・朝鮮史の分野では、世界帝国である元(大元ウルス)の統治下における海上交通の発達、高麗の海上交通の活発性などが明らかになってきている。水中考古学の分野では、東アジア海域における沈没船の調査研究が進み、宋・元・高麗の船舶の船体構造に関する知見が蓄積されている。こうした隣接分野の研究状況に鑑みながら、日元間の海上交通の実態を追究する必要がある。

14世紀後半に明が海禁=朝貢システムを導入したこと、14世紀末期~15世紀初期に朝鮮が明と類似した対外政策を実施したことなどによって、東アジア海域の海上交通における日本と琉球の地位が飛躍的に向上したことが明らかとなっている。日明貿易の研究においては、近年、遣明使の渡航記録である「入明記」の研究が進み、日明間の海上交通の実態を詳しく検討できる状況であるが、日朝貿易・日琉貿易の研究においては、海上交通に関する基本的な事実関係の積み上げが必要な段階である。また、16世紀半ば以降に「後期倭寇」(中国海商を中心とする密貿易集団)の来航やポルトガル船の直接来航が相次ぎ、博多の存在を相対化する国際貿易都市が分立したことで複雑化した海上交通網のあり方を把握することも課題である。

このように、中世日本の国際交流を支えた基盤である「海上交通」に関しては、さまざまな課題がある。そこで本研究においては、日本史学・中国史学・朝鮮史学・考古学・民俗学の研究者からなる研究会を組織し、「船体構造」「乗組員」「航海知識」「操船技術」「航路」「港湾」「乗継」「航海信仰」「漂流」などを共通のキーワードとして、各時代の国際交流における海上交通の特徴を明らかにすることを第一の目的とする。さらに、中世日本の国際交流における海上交通のあり方を通時的かつ体系的に整理し、本館の総合展示および企画展示に反映させることを第二の目的とする。

 

研究会等

概要

日程:2017年5月19日(金)~5月21日(日)
場所:長崎県松浦市・平戸市・長崎市

内容

〔19日〕松浦市埋蔵文化財センター及び松浦市歴史民俗資料館を訪問し、鷹島海底遺跡から発掘された船材・碇石等の遺物を見学した。現地で研究会を開催し、佐々木蘭貞氏より研究報告「鷹島出土の木材などから見える船体構造について」を得た。

〔20日〕松浦史料博物館及び平戸オランダ商館を訪問し、平戸松浦家伝来の船幟、「蛮錨図」及び付属文書を調査した。平戸市内を巡検し、碇石・錨(市街地)、海寺跡・熊野神社・薩摩塔(田平)、媽祖像(川内)、烽火推定地(大島)等を巡見・調査した。

〔21日〕長崎歴史文化博物館を訪問し、対馬藩船大工の黒岩家に伝来した文書類・図面類・器物類を調査した。

成果

長崎県内に所在する海上交通関連の史跡・遺跡及び歴史文化資料を幅広く巡見・調査し、あわせて島影・潮流などの海洋環境を観察することができた。