基幹研究

歴史文化資料に基づく日本中世社会像の再構築

(総括研究代表者 本館・研究部 小島 道裕)

【広領域歴史創成研究】中世日本の地域社会における武家領主支配の研究

研究期間:平成28年度~平成30年度

研究代表者 田中 大喜 (本館研究部)
研究組織 髙橋 典幸 (東京大学大学院)
清水 亮 (埼玉大学)
鈴木 康之 (県立広島大学)
井上 聡 (東京大学史料編纂所)
黒嶋 敏 (東京大学史料編纂所)
西田 友広 (東京大学史料編纂所)
中司 健一 (益田市教育委員会歴史文化研究センター)
水澤 幸一 (胎内市教育委員会)
田久保 佳寛 (小城市教育委員会)
高木 徳郎 (早稲田大学教育・総合科学学術院)
中島 圭一 (慶應義塾大学)
湯浅 治久 (専修大学)
貴田 潔 (静岡大学) 平成28年9月1日から
小野 正敏 (本館名誉教授) 平成28年6月1日から
小島 道裕 (本館研究部)
荒木 和憲 (本館研究部)
村木 二郎(本館研究部)
松田 睦彦(本館研究部)

研究目的

およそ12~16世紀の日本の中世と呼ばれる時代は、世襲制の職業戦士である武士という社会集団を生み出し、彼らの支配が地域社会レベルにまで浸透した時代である。したがって、中世の日本社会において、武士の支配がいかにして浸透=受容されたのかを明らかにすることは、その歴史的特質を究明するうえで必須の課題であると考える。そこで本研究では、中世の地域社会において、武士の領主支配が受容された諸契機を究明することで、中世の日本社会の歴史的特質に迫ることを目的とする。

武士による領主支配の内実を、地域社会との関わりのなかから追究する本研究は、1980年代以来積み重ねられてきた中世地域社会論の成果を直接の前提としており、その発展的継承を目指すものである。すなわち、武士も地域社会を構成した社会集団の一つと捉え、武士の領主支配は、地域社会における一定の「受容」と「合意」なしには機能し得ないとの認識を共有する。そのうえで、山野河海・耕地・水利・交通路・寺社・町場(集散地)・村落・領主居館等、荘園制の所産でもある地域社会の範域を規定したこれら諸要素の有機的連関についてフィールドワークを通して考察し、その構造を立体的に究明する。そして、そこに武士がいかにコミットしたのかを多角的に追究することで、武士の領主支配が受容された諸契機を明らかにする。

一方、ここで留意すべきは、中世前期以来武士の所領支配・維持は、武家政権・荘園領主・守護等の地域権力のほか、一族や近隣の武士たちとの多元的な結びつきのなかで実現されたという事実である。地域社会との関わりに加えて、こうした中世武士の所領支配・維持を支えた中央(京・鎌倉)と地域双方に張りめぐらされた多元的なネットワークの具体相と、中世を通じたその変化の様相について、政治史を踏まえながら追究することも、中世武士の領主支配の内実を明らかにするうえで重要な課題である。

以上の研究課題を遂行するべく、本研究では、石見国の益田川・高津川流域社会を基軸事例に取り上げる。益田荘と長野荘が存在した当該地域は、中世の荘園景観・遺跡・出土遺物・地名等が良好に保存されており、中世の地域社会の構造を追究するうえで好個のフィールドになる。またそこでは、在来武士の益田氏のほか、内田氏等の外来武士たちの領主支配が展開したが、なかでも益田氏と内田氏は豊富な文献史料群を残しており、彼らの領主支配と多元的なネットワークの具体相を知ることができる。しかし、領主支配のあり方は地域ごとに多様であるため、異なる地域との比較によって、その本質を究明することができると考える。そこで本研究では、越後国奥山荘と肥前国小城郡も取り上げ、これらとの比較を通して考察を進めていきたい。

研究会等

概要

日程:2017年5月31日(水)
場所:文書所蔵者個人宅、東京大学史料編纂所

内容

中世石見国・益田氏に係わる新出史料の調査・撮影

成果

中世石見国・益田氏に係わる新出史料原本を確認できた。鎌倉期~南北朝期の新出史料が数十点含まれていたが、当該期の新出史料が一度にこれだけ多く発見されることは希有であり、公表すれば社会・学界に多大なインパクトを与えることになると予想される。

概要

日程:2017年4月29日(土祝)~4月30日(日)
場所:国立歴史民俗博物館 大会議室

内容

【4月29日】2016年度石見国長野荘・益田荘調査成果報告
田中大喜「俣賀文書調査報告と俣賀氏系図復元の試み」
松田睦彦「近現代益田の生業―聞き取り調査成果報告―」
村木二郎・池谷初恵・小野正敏・佐々木健策・鈴木康之・水澤幸一「陶磁器からみた中世益田―陶磁器調査経過報告―」
渡邊浩貴「長野荘の中世景観と領主拠点―荘園現地調査経過報告―」

【4月30日】肥前千葉氏および中世小城郡に関する研究報告
湯浅治久「肥前千葉氏に関する論点と史料」
貴田潔「佐賀・筑後平野の地理的環境と地域社会」

成果

文献史学、考古学、民俗学の協業による現地調査の有効性について確認できた。また、参加者それぞれの専門性にもとづき、活発な議論を行うことができた。