基幹研究

日本の原始・古代史像新構築のための研究統合による年代歴史学の新展開
―新領域開拓と研究発信―

(総括研究代表者 本館・研究部 藤尾 慎一郎)

【広領域歴史創成研究】戦いと国家形成の環境的基盤-炭素14年代と酸素同位体による古気候復原と社会統合過程との比較照合-

研究期間:平成27年度~平成29年度

研究代表者 松木 武彦 (本館研究部)
研究組織

川尻 秋生 (早稲田大学文学学術院)平成28年度まで
小林 青樹 (奈良大学)
坂井 秀弥 (奈良大学)平成28年度まで
坂上 康俊 (九州大学大学院)平成28年度まで
重藤 輝行 (佐賀大学)
鈴木 一有 (浜松市文化財課)
中塚 武 (総合地球環境学研究所)
菱田 哲郎 (京都府立大学)平成28年度まで
深澤 芳樹 (奈良文化財研究所)
吉野 武 (宮城県多賀城跡調査研究所)平成28年度まで
若狭 徹 (明治大学)
上野 祥史 (本館研究部)
坂本 稔 (本館研究部)
高田 貫太 (本館研究部)
林部 均 (本館研究部)平成28年度まで
藤尾 慎一郎 (本館研究部)
箱﨑 真隆(本館研究部)平成29年度から

研究目的

炭素14年代法による実年代研究の成果、および、酸素同位体法等を用いた古気候復原の高精度化を基礎として、気候環境の変動や安定が、日本列島先史~古代社会に対していつどのように働きかけ、それに人間社会側がいつどのような形でリアクトすることによって社会関係をいかに改変・創出したかを復原する。その上で、それらの諸作業を総合することにより、いわゆる古代国家形成を一応の到達点とする日本列島の社会統合が、どのような環境的要因・人間的要因の相互関係によって進められたかについて、新たな歴史モデルを確立することを最終的な目的とする。

具体的には、下記のような成果の提示を目的とする。
(1)西日本および東日本における弥生時代から古代末期(10世紀)までの集落変動プロセスを、従来の各地・各時代の研究成果を収集し、それに新たな調査を加えることによって総合し、列島全体にわたるパターンを明示する。
(2)西日本および東日本のうち、集落の発掘データが充実している地域を選定し(現時点の候補としては「北部九州地域」「吉備地域」「東京湾沿岸地域」「東北地域」)、集落を構成する居住遺構(竪穴住居・掘立柱建物)の数を土器様式期ごとに計数して数量上の変化を算出し、それを炭素14年代法によって求められた各土器様式の年代幅と照合することによって、実際上の人口の変化を具体的に復原する。
(3)上記(1=マクロ)(2=ミクロ)の作業で得られた結果を総合することによって、いつどの地域において社会の安定や変動(解体・再編成)と認められる歴史事象が生じているかを復原する。
(4)上記(3)の作業結果と、高精度古気候復原のデータとを照合し、社会の安定・変動がいかなる気候環境と併行・継起して生じたかを明らかにする。
(5)上記(3)(4)の作業結果に、その他の考古学的記録に認められる顕著な事象を重ね合わせる。最も端的な社会の分裂と統合の過程である戦争(武器・防御施設の発展)を中心軸として、墳墓の築造(=社会的権威機構の形成)、人工物様式の地域色の展開(地域間交流の変化)、技術の革新、都城・寺院・城柵の造営ならびに中心・周縁関係の制度化(集権的政体の確立=国家形成)などの展開を重ねることによって、気候環境の変化が社会にいかなる具体的な影響を与え、また逆に社会がそれに対応していかなる形での解体や再編成がもたらされたかを復原する
(6)以上の作業を統合し、隣接地域との比較や理論的な深化を踏まえて、日本列島先史~古代の新たな歴史像を構築する。