基盤研究

多元的フィールド解析研究

中世東アジア海域における琉球の動態に関する総合的研究

研究期間:平成27年度~平成29年度

研究代表者 村木 二郎(本館研究部)
研究組織

池田 榮史 (琉球大学)
池谷 初恵 (伊豆の国市教育委員会)
岩元 康成 (姶良市教育委員会)
岡本 弘道 (県立広島大学)
久貝 弥嗣 (宮古島市教育委員会)
佐々木 健策 (小田原城総合管理事務所)
鈴木 康之 (県立広島大学)
中島 圭一 (慶應義塾大学)
小野 正敏 (本館名誉教授)
齋藤 努 (本館研究部)
松田 睦彦 (本館研究部)
田中 大喜 (本館研究部)
荒木 和憲(本館研究部)

研究目的

14~16世紀の東アジア海域では、世界史の中の大航海時代を前に、すでに活発な交易がおこなわれていた。その立役者は琉球王国である。大明帝国は海禁政策を建て前としたために自由な貿易ができず、冊封体制下にある琉球王国に貿易公社としての役割を担わせた(岡本弘道『琉球王国海上交渉史研究』2010年)。これを逆手に、琉球は明と東南アジア諸国、朝鮮、そして日本をつなぐパイプ役として積極的な交易活動を展開し、「大交易時代」を現出したのである。

従来、琉球王国は明の冊封体制のなかで中継貿易国家として存立したが、ヨーロッパ勢力のアジア進出によって存在感が弱まり、日本に統一政権が成立すると、その尖兵である薩摩の侵攻を受けて支配下に入った、という受動的なトーンで語られがちであった。

しかし、昨今の研究では、この時代を作った琉球王国は、諸外国との複雑かつ柔軟な外交交渉を通して巧みな交易活動を積極的に展開したことがわかっている。東南アジア諸国とは対等な関係を作り上げ、南九州の諸勢力に対しては時には弱味に付け込んで優位な関係を築きもしている(村井章介「古琉球をめぐる冊封関係と海域交流」『琉球からみた世界史』2011年)。

そして何より、琉球とは異なった文化をもつ奄美諸島や、宮古、八重山といった先島諸島に侵攻し、中央集権的な体制で支配したのである。のちに奄美は薩摩に割譲されて現在は鹿児島県に含まれるが、先島諸島は近世期も琉球王府の支配下にあり続けて現在の沖縄県域に至っている。そのためか、先島に関しては所与のものとして琉球領土と認識されており、1500年に八重山で起こったオヤケアカハチによる蜂起も“反乱”、“鎮圧”と表現される。しかし、戦後に米軍が日本を支配した際、琉球とは別に、奄美、宮古、八重山を個別に群島支配したように、これらの地域は琉球とは異なる文化圏であり、強権をもった時代の琉球帝国によって版図とされたのである。

この研究では、大交易時代に繁栄した琉球を中心に据え、新たにその帝国的側面に注目しながら、中世後半の東アジア海域における多様な動態を捉え直すことを目的とする。その際、これまで独壇場であった文献史学による研究に目を配りながらも、集落構造や流通、技術に着目し、考古学、民俗学、分析化学等のさまざまな手法により、世界史の中に位置づけた新たな歴史像を探りたい。

研究会等

概要

日程:2017年4月22日(土)~4月23日(日)
場所:国立歴史民俗博物館 大会議室

内容

研究報告会実施。(各研究者による報告題は以下の通り。)
佐々木健策「宮古島における石積み技術について」
池谷初恵・岩元康成・小野正敏・小出麻友美・佐々木健策・村木二郎「陶磁器研究の成果」
池谷初恵「琉球列島、北と南の陶磁器様相」
池田榮史「琉球列島における古代末~中世の在地土器研究の現況」
鈴木康之「草戸千軒町遺跡出土のビロースクタイプ白磁碗について」
村木二郎「琉球帝国を語る要件」
松田睦彦「民俗学・人類学的記録に見る八重山のムラ-波照間島ミシク村遺跡をめぐって-」
田中大喜「薩摩千竃氏と南薩摩の領主間競合」
荒木和憲「尚泰久の王権と〈帝国〉」
岡本弘道「琉球王国の活動の拡大と「人の動き」」

成果

現地調査に基づいた研究調査報告のほか、共有するテーマに沿った研究報告を重ねたことで、活発な議論を生んだ。研究会のとりまとめ方向も見えてきた。