基盤研究

公募型共同研究

廣橋家旧蔵文書を中心とする年号勘文資料の整理と研究

研究期間:平成27年度~平成29年度

研究代表者 水上 雅晴 (中央大学)
研究組織

福島 金治 (愛知学院大学)
武田 時昌 (京都大学)
石井 行雄 (北海道教育大学)
名和 敏光 (山梨県立大学)
近藤 浩之 (北海道大学大学院)
石 立善 (中国・上海師範大学)
高田 宗平 (大阪府立大学)
末永 高康(広島大学大学院)平成27年10月1日より
大川 真(吉野作造記念館)平成28年10月1日より  
中川 仁喜(大正大学)平成28年12月1日より
尾留川 方孝(中央大学)平成28年12月1日より
小島 道裕 (本館研究部)
小倉 慈司 (本館研究部)平成29年度より
田中 大喜 (本館研究部)平成29年度より

研究目的

本研究では、廣橋家旧蔵記録文書典籍類の中、年号勘文に関わる資料を中心に研究を進め、資料活用の基盤を整備すると同時に、これまでほとんど活用されてこなかったこれらの資料群を通して、中世期における紀伝道諸家の政治・学問・文化・思想の諸分野に関わる研究を進化させるのに寄与することを目的とする。

廣橋家は藤原北家日野流に連なり、藤原北家は「改元定は朝廷の重事」(『古事類苑』)と称される朝議に中世中期に至るまで参与し続けている。廣橋家旧蔵記録文書典籍類のコレクションに属する1815件の資料群の中、ほぼ一割に相当する180数件の文書が年号勘文資料に数えられ、その多くは中世期に属する資料である。このように関連資料が大量に伝わっているのは、佐藤均が説く通り、年号勘文の勘申を命ぜられることが「紀伝道の家学を継承している家である証」(『革命・革令勘文と改元の研究』)になったからだと推察される。

年号勘文資料には、年号案とその出典が掲載された年号勘文本体に加え、審議の場における難陳、改元定の式次第、制定前後の状況を示す日記類、関連する故実や記録などが含まれ、これらを集成した菅家側の資料として高辻長成『元秘別録』等がある。年号勘文の出典となるのは全て漢籍であり、そこに引かれる文章は改元定に参加する資格を独占していた紀伝道の各家に伝わっていた典籍に記されていたものである。年号勘文は平安時代前半期に書かれたものまでその内容をたどることができる。つまり、年号勘文の中には、漢籍の古鈔本テキストが大量に収録されているわけであるが、研究代表者が最近発表した論文を除き、この点に留意した研究はほとんど為されていない。

年号勘文資料に収載されている難陳、すなわち勘文に対する論難と弁論については、森本角蔵によって「今日から見れば殆どとるに足らぬ」(『日本年号大観』)と片付けられており、内容に対する分析はほとんど加えられていない。現代人から見て詰まらぬことを議論しているように見えても、年号勘文の奏進者とそれを論難した者にとっては真剣に討議するのに値する問題だったのであり、議論を構成する言語や故実に関わる記述は、中世の学術史・政治史・精神史を論じる上での重要な題材と見なすことができる。

ここに例示した事柄を含め、年号勘文資料が持つ学術上の価値は多岐にわたるが、これまでの活用は極めて限られていたと言わざるを得ない。かかる現状に鑑み、本研究では、『廣橋家旧蔵記録文書典籍類目録[年号勘文資料編](仮題)』と年号勘文資料の翻刻作成により、資料活用の基礎的条件を確保した上で、研究組織を構成する様々な分野の研究者がそれぞれの専門分野にもとづく調査と考察を進めることで、中世史研究の新たな展開を支えるプラットホームの形成を目指す。

 

研究会等

概要

日程:2017年7月7日(金)~7月10日(月)
場所:国立歴史民俗博物館、東京都立中央図書館、国会図書館、東洋文庫

内容

7日と8日は館内での活動であり、主として秋に実施する特集展示に使う資料の調査と展示内容と方法に関する打合せ会議を実施し、陳列資料と箇所、配列、それに展示に使うパネルやキャプションの文章作成の割り当てを決めることができた。なお、8日午前は福島教授の研究報告と討議がなされた。

9日は、石井・近藤・吉田・水上の4名が都立中央図書館にて年号関連資料の調査を実施した。

10日は二手に分かれ、石教授は国会図書館にて年号関連資料の実施をした。石井と水上は東洋文庫にて、広橋家旧蔵本であり紙背に『元秘抄』が鈔写されている国宝『古文尚書』の調査を実施した。

成果

館内での調査と打合せ会議を通して、特集展示の内容・細目がほぼ固まり、準備作業の具体的内容と日程が明確になった。東洋文庫の調査では、白点と角筆を発見した。今後は、それらの訓点と広橋家の年号資料との関連について調査と研究を進める。