基盤研究

多元的フィールド解析研究

歴史にみる人と自然の関係史

研究期間:平成26年度~平成28年度

研究代表者 原 正利 (千葉県立中央博物館・海の博物館)
研究組織

島立 理子 (千葉県立中央博物館)
加藤 久佳 (千葉県立中央博物館)
小田島 高之 (千葉県立中央博物館)
八木 令子 (千葉県立中央博物館)
梅﨑 昌裕 (東京大学大学院)
大久保 悟 (農業環境変動研究センター)
菅根 幸裕 (千葉経済大学)
岩淵 令治 (学習院女子大学)
後藤 雅知 (立教大学)
江口 誠一 (日本大学)
奥山 洋一郎 (鹿児島大学)
富田 瑞樹 (東京情報大学)
當山 啓介 (東京大学大学院)
広嶋 卓也(東京大学大学院)
村木 二郎 (本館研究部)
柴崎 茂光 (本館研究部)
工藤 雄一郎 (本館研究部)
青木 隆浩 (本館研究部)
松田 睦彦(本館研究部)
西谷 大(本館研究部)

研究目的

本共同研究の目的は、フィールド調査と文献資料調査によって近世から現代における村の歴史を、自然環境・自然資源利用の歴史、それに生業の歴史との関係性を含めて明らかにしつつ、人間側の歴史と生物側の歴史とを統一する方法をあみ出し、農村景観の背後に存在する歴史的な特質とその変遷を、実証的、具体的に明らかにすることである。

また本共同研究は、平成23~25年度に行った「日本の中山間地域における人と自然の文化誌」の成果を、継承し発展させることを目的としている。前回の共同研究では、千葉県君津市小櫃川沿いに現在も利用されているトンネル状の灌漑用水路(二五穴)を中心に、灌漑と水田の歴史、それに山林利用の実態と、それを維持していくためのシステムや資金の流れを明らかにしていった。

その結果、二五穴という灌漑用水路と水田の開削、さらにはその維持には、専門の工人集団の存在だけでなく、多額のしかも地元の資金が動き、しかも村内でも工賃としてお金が村人にいき渡っていることがわかった。なぜ江戸時代の終わりに、このような大規模で精密な土木工事が可能になったのか、その要因を探るには技術面だけでなく、工事そのものを可能にした原資を一体どこから得たのかということと、灌漑用水路を維持するシステムについて、資金面も含めてさらに深く研究を行う必要がある。

また地域における人びとの自然利用の歴史にみる二五穴や川回しによる河川改修、それに村周辺の山を焼き払うことで広大な草地を作る姿は、「自然との共生」という安易な枠組みを当てはめても理解できず、むしろ人間側に有利になるよう「自然をいかにして飼い慣らすか」という行為を、繰り返し試行してきた歴史ではなかったかと推測するとともに、この予測が他の地域でも当てはまるのか検証する必要がある。

今後の3年間の共同研究では、これまで調査してきた千葉県君津市の蔵玉・折木沢の人びとの里と、おそらく彼らの資金源となっていた山林利用の関係を継続して調査しつつ、3年間で培った研究方法を使って、千葉県内の生態的な環境や生業が異なる地域(候補地、大山千枚田周辺-地すべり地帯、富里・牧士-牧場、勝浦周辺-漁業)に調査範囲を広げたい。

そして、人びとが利用していた空間について人間側と生物の側の歴史とを統一する方法をあみ出し、地域の人びとと自然の関係史を動態的に解明しつつ、なぜこれほどまでに人びとが水田に固執してきたのかを明らかにしたいと考えている。