基盤研究

多元的フィールド解析研究

古墳時代・三国時代における日朝関係史の再構築-倭と栄山江流域の関係を中心に-

研究期間:平成26年度~平成28年度

研究代表者 高田 貫太 (本館研究部)
研究組織

李 暎澈 (大韓文化財研究院)
金 永煕 (大韓文化財研究院)平成27年4月30日まで
林 智娜 (大韓文化財研究院)
権 五栄 (韓神大学校)
李 正鎬 (東新大学校)
李 昌煕 (学識経験者)
鄭 一 (大韓文化財研究院)
金 洛中 (全北大学校)
中久保 辰夫 (大阪大学大学院)
山本 孝文 (日本大学)
諫早 直人 (奈良文化財研究所)
右島 和夫 (群馬県立歴史博物館)
仁藤 敦史 (本館研究部)
上野 祥史 (本館研究部)

研究目的

本共同研究の目的は、古墳時代(朝鮮三国時代)における日朝関係史像を、栄山江流域と倭という観点から再構築することにある。

古墳時代は,日本列島の倭人社会が朝鮮半島から先進文化を盛んに受容した時期である。これまでの日本側の研究においては、古墳時代における朝鮮半島からの先進文化の受容の契機として、倭王権の軍事的活動を重視してきた。多くの場合、日本列島各地で出土する朝鮮半島系の遺構、遺物の導入過程は「倭王権による朝鮮出兵→獲得した品物や技術者の独占→地方への配布」という枠組みで(ある時は、朝鮮出兵を軍事的提携と置き換えて)説明されてきた。しかし、近年の調査、研究の進展によって、軍事的契機のみならず、より恒常的かつ多元的な交渉の様態が想定できるようになり、朝鮮半島諸勢力の側にも明確な交渉意図があったことも想定されている。このような研究動向を踏まえ、本共同研究ではこれまで付随的、補完的に解釈されてきた朝鮮半島西南部、栄山江流域と日本列島諸の交渉の実態を再構築することを目的とする。栄山江流域をフィールドとして選択した理由、ならびに具体的な研究目的は大きく2つある。

1つは 近年、栄山江流域で確認されている前方後円墳の性格を明らかにすることが、日朝交渉の動向を考えるうえで不可避的な研究課題である点である。この課題に迫るためには、その前方後円墳のみに焦点を定めるだけでは不十分であり、その地を根拠地とした政治勢力(時に馬韓とも称される社会)の社会統合の度合いを検討する必要がある。近年の発掘調査、研究の成果によって、その検討を具体的に推し進めることが可能となっている。そして、調査、研究を推し進める機関(大韓文化財研究院)と連携することで、本共同研究において、前方後円墳を受容した栄山江流域の社会構造や倭との交渉の様態を再構成していきたい。

2つめは、栄山江流域社会という、特定の地域社会の側から当時の対倭交渉の目的や様態を明らかにしていくことが可能である点である。当時の朝鮮半島においては、様々な政治的な緊張関係が生じており、栄山江流域社会も百済の社会統合の動きへの対応を迫られていたことは確かである。よって、栄山江流域の側がどのような意図で倭との交渉に臨んだのかという観点を踏まえ、当時の交渉様態を明らかにしていくことは、栄山江流域社会の構造を考えるうえでも重要である。この点に焦点を定めて、単なる交流史にとどまらない地域社会論を展開したい。これは、これまでとかく倭王権の政治経済的立場でのみ解釈されてきた日朝関係史像を再構築していくことにつながると考える。