基盤研究

歴史資源開発研究

学際的研究による漆文化史の新構築

研究期間:平成25年度~平成27年度

研究代表者 日高 薫 (本館研究部)
研究組織 岡田文男 (京都造形芸術大学)
北野信彦 (東京文化財研究所)
鈴木三男 (東北大学)
竹内奈美子 (東京国立博物館)
多比羅菜美子 (根津美術館)
中里壽克 (東京文化財研究所)
能城修一 (森林総合研究所)
宮腰哲雄 (明治大学)
宮里正子 (浦添市美術館)
山崎剛 (金沢美術工芸大学)
吉田邦夫 (東京大学総合博物館)
四柳嘉章 (石川県輪島漆芸美術館)
岩淵令治 (学習院女子大学)
永嶋正春 (本館研究部・客員教授)
工藤雄一郎 (本館研究部)
小池淳一 (本館研究部)
齋藤努(本館研究部)
林部均(本館研究部)

研究目的

漆の木が生育する東アジアおよび東南アジアの諸地域では、それぞれ特色ある漆工技術が発達し、ユニークな文化をかたち作ってきた。漆文化圏とも呼びうるこれらの地域にみられる漆の文化は、多くの共通点をもち相互に影響を与え合う反面、実際には、利用される漆の木の種類の相違や、気候風土・民族などによって、それぞれの個性を強調する方向で発展している。

本研究は、このようなアジアの漆文化の総体を視野に含めつつ、縄文時代から現代にわたる日本の漆文化を、多視点的なアプローチにより、総合的にとらえることを目的とする。

多様な様相と展開を示す漆文化の全体像は、出土資料・伝世資料・文献資料・伝承資料・伝統技術等をあわせて検討することによってはじめて理解されるが、従来の研究では各学問分野で個別に論じられ、一部の領域では大きな成果をあげながらも、これらが統合されることはなかった。本研究においては、研究手法を異にするさまざまな分野のトピックを、展示の主要な構成要素と位置づけ、具体的な展示資料を通じて可視化し、これらを総合することによって、植物としてのウルシの特性とそれを利用する漆文化の全体像を浮き彫りにすることを目指す。このような過程で明らかとなった課題をもとに、新しい漆文化史の構築をはかりたい。

本研究の研究期間においては、各時代・地域の漆文化の多面的展開を網羅することは困難であるため、近年成果が著しく、注目されるテーマを中心に、研究成果の整理・再検討をおこない、あわせて今後展開可能な研究課題の発見の機会とする。本研究においては、以下の3つの点にとくに重点を置く。

  1. 国内外における漆および漆器の流通と技術交流 植物学・考古学・文献史学・美術史学等に共通するテーマとして交流の問題に注目する
  2. 自然科学的分析手法の開発による漆文化の解明 自然科学との協業により、何が明らかにされるかを紹介し、また、開発された分析手法の応用として、館蔵漆器資料の剥落片、出土漆器等の分析を行う
  3. 漆の特性と多様な漆文化 漆のもつ特異な性格が、漆文化を特徴づけてきたことを、現代的な視点を交えて考察する