基盤研究
歴史資源開発研究
年代情報に基づく木材の利用・活用に関する横断的研究
研究期間:平成25年度~平成27年度
研究代表者 | 坂本 稔 (本館研究部) |
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研究組織 | 木村 勝彦 (福島大学) 中塚 武 (総合地球環境学研究所) 小林謙一 (中央大学) 中尾 七重 (武蔵大学総合研究所) 横山 操 (京都大学生存圏研究所) 尾嵜 大真 (東京大学総合研究博物館) 齋藤 努 (本館研究部) 大久保 純一 (本館研究部) 鈴木 卓治 (本館研究部) 小瀬戸 恵美 (本館研究部) 工藤 雄一郎 (本館研究部) |
研究目的
先史時代から現代に至るまで、木材は様々な形で利用・活用されてきた。森林資源に富む日本では木材が比較的入手しやすい。また、木材は比重が小さく容易に加工できる一方、耐久性に優れ、埋没や再利用などによっても後世まで残存する。さらに、樹木に形成される年輪には、生育時の環境が時間情報とともに記録されている。年輪の幅は年輪年代法に生かされ、年輪自体は炭素14年代測定の代表的な試料である。両者の組み合わせは、炭素14年代を実年代に修正する較正曲線の整備に役立てられる。年輪の安定同位体分析による古環境・古気候の復元はさまざまに試みられてきたが、近年その過程で年輪セルロースの酸素同位体による年代法が提案され、効率的かつ精密な時間情報の獲得への道が拓かれつつある。
本課題では埋没樹、建築部材、木製品をはじめとする木材資料を素材とし、年輪年代法、炭素14年代法、酸素同位体法などによる高精度年代情報に基づき、考古時代・歴史時代の人と木材の関わりについて横断的な研究の実施を目指す。さまざまな資料を対象とするなかで、重点項目として以下の3テーマを挙げる。なお、本館は法隆寺古材や歌川派浮世絵版木といった他に類のない木材資料を収蔵していて、将来的な調査の可能性について検討したい。
- 炭素14年代法における日本版較正曲線の整備・充実
- 年代情報に基づく木材資料の追跡(遺構,建築部材など)
- 高密度・高精度安定同位体測定による古環境の復元
木材には、燃料材や素材として用いられる側面もある。木炭の年代測定などから時間軸の得られる金属精錬技術の追究や、版木に用いられる樹種の同定、ならびに顔料分析を行うことで、木材の利用に関する横断的な研究として発展させる。なお、蓄積される年代情報を効率的に整理・閲覧するデータベースの開発も行う。