基幹研究

古代列島世界の歴史像の再構築

(総括研究代表者 本館・研究部 林部 均)

【広領域歴史創成研究】先史時代における社会複雑化・地域多様化の研究

研究期間:平成24年度~平成26年度

研究代表者 山田 康弘 (本館・研究部)
研究組織 設楽 博己 (東京大学大学院)
谷口 康浩 (國學院大學大学院) 平成25年度から
高橋 龍三郎 (早稲田大学)
阿部 芳郎 (明治大学大学院)
瀬口 眞司 ((公財)滋賀県文化財保護協会)
佐々木 由香 ((株)パレオ・ラボ)
高瀬 克範 (北海道大学大学院)
松村 博文 (札幌医科大学)
近藤 修 (東京大学大学院)
米田 穣 (東京大学総合研究博物館)
舟橋 京子 (九州大学総合研究博物館)
長田 友也 (中部大学)
冨井 眞 (京都大学文化財総合研究センター)
小畑 弘己 (熊本大学)
福田 正宏 (東京大学大学院)
菅野 智則 (東北大学埋蔵文化財調査室)
伊藤慎二 (西南学院大学)平成25年度から
西本 豊弘 (本館・研究部) 平成24年度まで
工藤 雄一郎 (本館・研究部)

研究目的

日本列島における昨今の先史時代研究を概観してみると、そこで語られる時代像(特に縄文時代像)は、研究者間で大きく異なっている。その理由の一つとして、1980年代以降の膨大な発掘調査資料の蓄積に加え、各地における地域研究が進展した結果、個々の地域における社会や文化の独自性・特殊性に焦点をあてる機会が多くなり、各地域を自律的な空間として捉えるようになったことが挙げられる。また、約13,000年間の時間幅を含む縄文時代の社会や文化の時期的な違いが明瞭になり、どの時期のどの地域の特徴を「縄文的」として捉えるかで、時代像が大きく異なることも関係している。縄文時代・縄文文化という統一的な枠組みを所与のものとみなす視点に対して、再検討を促す研究動向と連動しており、一部の研究者の中からは、縄文文化というまとまりがあるという構図そのものが虚構であり、その本質は多様な文化の集合体であるといった意見も出されるようになってきた。このような状況は、従来私たちが縄文時代・縄文文化と一括してきた枠組みとその内容に対して、時期性・多様性・地域性という観点から再検討を要請していると言ってよいだろう。

理由の二つめとして、80年代までに構築されてきた縄文社会論・集団論が、新しい視点や方法論の導入によって再検討されるようになり、各研究者がその結果を肯定的に見るか否かによって、個々にイメ−ジされる社会像が大きく異なっている点を挙げることができる。具体的には、90年代以降における形質人類学的手法および民族学的視点の導入などをきっかけとする縄文集団論の再検討、社会成層化・複雑化の議論がこれにあたる。80年代に形成された縄文時代観、すなわち縄文時代の社会が、「身内」「他所者」という二つ区分からなる比較的単純な集団構造を持ち、成層化の傾向が見られない等質的なものであったとする従来の縄文社会像は、近年の研究成果によって様々な修正を余儀なくされており、場合によっては大きな変更を迫られる可能性がある。
地域多様化および社会複雑化という視座は、現在の縄文時代研究、ひいては人類史的な先史時代研究には欠くことのできないものはずであるが、社会構造や地域性に関する既存の研究において、両者が列島規模(この領域設定方法に一国史的歴史観が内在されているとしても)で総合的に検討されたことはほとんどない。これは、そのような視座を現在の研究者たちが持ちえなかったということではなく、より細分化への傾向を強めていく昨今の考古学研究の動向からすれば、個々の研究者のキャパシティを大きく超えるからでもあろう。今回の共同研究においては、まずこのような大規模な議論の場を形成することを最初の目的とし、各研究分担者が多様な見解を出し合い議論を交えながら、意見の統合が可能かどうか、可能であればどのような形で意見を調整・統合し、時代像を再構築できるか見極め、その結果を展示に結びつけたいと思う。

また、先史時代社会の地域多様化・社会複雑化というプロセスについては、時空間を超えて、人類史的な課題として取り組むべき課題でもある。ここに組織立てて共同研究を行い、従来の時代像を再検討し、生業形態(含む環境史的視点、自然資源利用技術等)・居住形態・集団構造・精神文化などといった様々な要素の複合的に検討していくことによって、特に社会構造と地域性に重心を置きながら「新たな先史時代像」を模索する意義がある。