基幹研究

震災と博物館活動・歴史叙述に関する総合的研究

(総括研究代表者 本館・研究部 久留島 浩)

【歴史資源開発研究】災害の記録と記憶をめぐる資料論的研究

研究期間:平成24年度~平成26年度

研究代表者 樋口 雄彦 (本館・研究部)
研究組織 中塚 武 (総合地球環境学研究所)
若林 邦彦 (同志社大学歴史資料館)
宮瀧 交二 (大東文化大学)
小椋 純一 (京都精華大学)
三浦 正幸 (広島大学大学院)
大久保 純一 (本館・研究部)
藤尾 慎一郎 (本館・研究部)
関沢 まゆみ (本館・研究部)

研究目的

今年3月11日の東日本大震災を受け、少なからぬ研究者が反省をこめて学会誌上で指摘したように、戦後日本の歴史学は、わずかな例外を除き、災害史研究に真正面から取り組んだことがなかったといってよい。また、現在、歴史研究者に何ができるのか、何をしなければならないのかについて、現代的課題が鋭くつきつけられてもいる(『歴史学研究』第884号、2011など)。そのような認識を前提としつつ、本研究では、限られた範囲ではあるが軸足を定めて一定の課題に取り組みたい。

まず本研究の目的の第一は、災害に関する歴史資料について、考古学・民俗学・文献史学の立場から通史的におさえることである。あらゆる歴史研究が資料にもとづくものであるように、災害研究も特定の資料に依拠して実現される。何を資料とするか、何が資料となるのか、またその資料にはどのような特徴があるのかについて、時代や地域、分野を横断して学際的な視点で考える。

目的の第二は、災害に関する記録と記憶との関係について、文献、遺物、伝承などを素材としながら考えることである。

〔文献資料〕とくに古代以降に起きた災害は、まず公的文書に記録されたあと、多様な素材に様々な目的で遺されていく。その際、素材によって記録される内容が少しずつずれていったり、故意に改竄されたりすることもある。本研究ではそうした媒体によって異なる記録内容を資料の属性と規定し、その歴史的背景をさぐることにある。

〔遺物資料〕先史時代においては人為的に記録が残される場合は希有で、古代以降と同じレベルの資料論は難しい。そのため、むしろこれまで知られていなかった先史時代の災害を、考古学、分析化学、地層学などをもとに掘り起こすことを目的とする。併せて歴史時代の災害に関する遺物資料情報の収集と分析にもつとめる。

〔民俗資料〕災害の事実は記録や遺物とともに語りや儀礼などの民俗伝承としても共有される。それらについての日本各地の具体的な事例情報の収集と比較分析を行なうことを目的とする。

目的の第三は、災害と復興の関係性を、社会的、経済的な側面からとらえ直すことである。とくに歴史的なその反復の関係に注目して、被災と復興のメカニズムについての分析を試みる。

以上、三点の目的を設定して災害史研究の基礎をなす資料についての学際的な総合的研究を試みることとする。