基幹研究

古代列島世界の歴史像の再構築

(総括研究代表者 本館・研究部 林部 均)

【広領域歴史創成研究】東アジアにおける倭世界の実態

研究期間:平成24年度~平成26年度

研究代表者 上野 祥史(本館・研究部)
研究組織 岸本 直文(大阪市立大学大学院)
下垣 仁志(立命館大学)
山本 孝文(日本大学)
吉井 秀夫(京都大学大学院)
井上 直樹(京都府立大学)
杉井 健(熊本大学)
新納 泉(岡山大学大学院)
坂 靖(奈良県立橿原考古学研究所附属博物館)
若狭 徹(高崎市教育委員会)
高久 健二(専修大学)
橋本 達也(鹿児島大学総合研究博物館)
藤澤 敦(東北大学埋蔵文化財調査室)
広瀬 和雄(本館名誉教授)
仁藤 敦史(本館・研究部)
高田 貫太(本館・研究部)
松木 武彦(本館・研究部)

研究目的

倭という表現は、漢書地理志を初出として、宋書や隋書などの中国史書や、広開土王碑文などにみえており、日本列島に対する古代東アジア世界からの呼称である。東アジアが倭と呼ぶ日本列島の世界は、弥生時代中期後半から古墳時代終末期に相当する。それは、前方後円墳という存在が象徴するように、日本列島で広く共有した規範・価値観が確立した時代であり、国家形成の歩みを進める時代でもあった。

本課題では、倭世界を中央(王権)と地域(地域社会)の関係が規定する世界としてとらえ、日本列島的な視点と東アジア的な視点―内なる視点と外なる視点―を対照することによって、この倭世界の実態を評価することを目的とする。

求心性を志向した王権は、倭世界の周縁(九州等)や外部(朝鮮半島)との接触によって得た情報をもとに、絶えず新たな規範や価値観を創出し続けた。それは、王権が地域社会を序列化し包摂する動きに他ならない。本研究では、その規範や価値観を創出するプロセスや、如何にそれが序列化のシステムとして機能したのかに注目することによって、倭王権の実態を整理する。この実態と新羅や百済など朝鮮半島の諸王権との比較を通じて、東アジアの視点で倭王権の特質を相対化し、史書や金石文に記す王権の天下観との対照を通じて、理念と実態の交錯する倭王権の本質を相対化することが可能となる。

一方、地域社会にとっては、王権との関係は外部世界とのつながりの一つである。地域社会と朝鮮半島の各地や日本列島の他地域との関係を対照し比較することによって、王権の意図とは必ずしも重ならない地域社会の独自の動きがみえてくる。本研究では、渡来系集団を受け入れた地域等を対象として、東アジア諸地域や王権との関係に注目し、倭世界を構成する地域社会の動きを整理する。無意識に従属的な性格が強調されやすい王権との関係を、地域社会の対外交渉という視点から相対化することが可能である。それは、王権と地域社会との間に想定される「内なる境界」と、東アジア諸地域と王権・地域社会との間に想定される「外なる境界」を改めて問うことにもなる。

総じて言えば、「東アジア諸地域」「王権」「地域社会」という3つのカテゴリーの相互関係を、王権と地域社会という二つの視座で整理し、王権と地域社会の関係によって規定される倭世界の実態を明らかにするものである。倭世界を自明のものとしてとらえるのではなく、「対外交渉」という視点そのものを相対化することも目的である。本研究では、東アジア諸地域と王権・地域社会がもっとも密接に関係をもった5世紀を中心として検討を進めるものとする。