基盤研究

先端博物館構築研究

民俗儀礼の変容に関する資料論的研究

研究期間:平成23年度~平成25年度

研究代表者 山田慎也(本館・研究部)
研究組織 前田 俊一郎 (文化庁伝統文化課)
土居 浩 (ものつくり大学)
板橋 春夫 (國學院大學、平成24年度まで伊勢崎市立赤堀歴史民俗資料館、平成23年まで國學院大學)
鈴木 由利子 (宮城学院女子大学)
浮ヶ谷 幸代 (相模女子大学)
岩本 通弥 (東京大学大学院)
門田 岳久 (立教大学、平成24年度まで日本学術振興会)
小国 喜弘 (早稲田大学、平成23年度まで東京大学大学院)
松田 香代子 (愛知大学)
加藤 紫識 (千代田区四番町歴史民俗資料館)
大本 敬久 (愛媛県立歴史文化博物館)
俵木 悟 (成城大学、平成24年度まで東京文化財研究所、平成23年度まで成城大学)
立石 尚之 (古河歴史博物館)
小山 隆秀 (青森県教育庁、平成24年度まで青森県立郷土館)
小井川 理 (神奈川県立歴史博物館)
重信 幸彦 (本館客員教授、平成24年度まで北九州市立大学基盤教育センター、平成23年度まで東京大学)
青木 隆浩 (本館・研究部)
原山 浩介 (本館・研究部)
常光 徹 (本館・研究部)
松尾 恒一 (本館・研究部)
小池 淳一 (本館・研究部)

研究目的

通過儀礼や年中行事など、地域で伝承されてきた諸儀礼や習俗等の民俗は、近代化の過程で大きく変容している。なかでも、現在実践されている儀礼は、さまざまな要因によって地域のコンテキストからはずれ、均質化する傾向が多くみられる。例えば、七五三は、地域によりさまざまな年齢別、男女別などの組み合わせによって従来行われてきたが、現在、女子の三、七歳、男子の三、五歳とされ、従来慣習のない地域でも行われるようになっている。これは商業化による宣伝と作法書の普及で全国に浸透したことによる。また墓制は、明治17年の墓地取締規則(のちの墓地埋葬法)により、多様な墓の習俗の有り様も次第に平準化しつつある。

こうした民俗儀礼を取り巻く環境については、法令の施行や行政の働きかけ、風俗改良運動や生活改善運動などの影響などを含む政治的要因、出産や終末期、死亡確認など生物医療の進展による医療的要因、またデパートや葬祭業など、儀礼の産業か化による消費文化的要因、地域の過疎化、少子高齢化などによる社会的要因による変容などが考えられ、日本という国民国家の枠組みの中での均質化であり、一種の「国民儀礼」ということができよう。

しかしこうした点について、産育や年中行事などの一部で個別的には指摘されているが、それを総合化する研究はあまりなされてこなかった。むしろ民俗学では、地域が独自に実践している儀礼をおもに取り上げてきた。だが地域の儀礼が成立するのも、情報が容易に流動する現代において、全国的な平準化とのせめぎ合いの中で生じているものであり、全国的動向の理解は地域性を持つ儀礼を理解する上でも重要である。

なかでも地域博物館は、地域性を帯びた儀礼については積極的に調査を行い資料収集する一方、平準化していくものについてはあまり体系的に取り上げることはなく、とくにモノ資料も体系的にまた積極的に収集されてはない。

そこで本研究では、第一に通過儀礼、年中行事を中心に現代の民俗儀礼の様相と変容の要因について、政治的、医療的、経済的、社会的な観点など多様な視点から総合的に分析検討し、地域から乖離し国民儀礼化した民俗の傾向を検証する。第二にそれにともなう関連する資料、なかでもモノ資料の収集の方向性を確立する。以上の研究を行うことで現代の民俗儀礼の動態を明らかにすることを目的とする。