年度別学術成果報告

2016年3月31日

『五大陸博物館所蔵シーボルト・コレクション関係史料集成』刊行

 

編集・発行: 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館「日本関連在外資料の調査研究」プロジェクト カテゴリーA「シーボルト父子関係資料をはじめとする前近代(19世紀)日本で収集された資料についての基本的調査研究」

発行日:2016年3月31日

本書は、江戸時代後期に出島勤務の医師として来日したフィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト(Philipp Franz Balthasar von Siebold, 1796-1886)が、二度目の日本滞在中に収集した日本関連資料コレクション(現、ミュンヘン五大陸博物館所蔵)に関わる各種の史料を翻刻・翻訳して刊行するものである。

人間文化研究機構では、「日本関連在外資料の調査研究事業」の一環として、国立歴史民俗博物館を中心に、「シーボルト父子関係資料をはじめとする前近代(19世紀)に日本で蒐集された資料についての基本的調査研究」(2010~2015年度)を推進してきた。このプロジェクトでは、従来、あまり注目されてこなかった2回目の訪日時のシーボルト・コレクションにとくに注目し、五大陸博物館が所蔵するシーボルト関係資料の悉皆調査およびデータ・ベース作成をおこなうとともに、関連する資料の調査研究をすすめてきた。

シーボルトは、1859年から1862(安政6~文久2)年までの間、長男のアレクサンダーと共に二度目の訪日を果たし、多数の日本関係資料を収集して持ち帰ったが、帰国直後の1863年に、収集資料を用いた展覧会をアムステルダムで開催している。その際の展示品リストが、本書で紹介する『ヨンクへールPh. F. フォン・シーボルトにより1859年から1862年までに収集され、民族学および輸出に適する物品の知識普及を目的として、アムステルダムの産業振興協室の一室に展示されている学術・芸術並びに産業に関係する物品と日本国の産物・生産物のコレクションの通覧手引』(本書掲載)と題する小冊子である。この展示を実見したP. H. ヴィトカンプによる『オランダの雑誌』中の記事(本書掲載)と合わせることによって、展示の具体的な状況が知られ興味深い。

1864年にオランダでの職務を退いたシーボルトは、生まれ故郷のヴュルツブルクにコレクションを移し、ここでも展示をおこなっているが、その間に、ミュンヘンのバイエルン国王への接近がはかられた。シーボルト・コレクションがバイエルン国王に売却される経緯を知る手がかりとなる資料として、「フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトより国王ルードヴィッヒ二世への書簡」(1864年11月)、コレクションの購入を働きかけたモーリッツ・ワーグナーによる「バイエルン国政府への請願書草稿」を紹介する。

同コレクションの内容については、「アレクサンダー・ フォン・シーボルトによるミュンヘン五大陸博物館所在の彼の父親のコレクションに関する目録」(本書掲載)に詳細に記録されており、コレクションの主要な部分が網羅される。博物館の公文書館に保存されたアレクサンダー・フォン・シーボルトの手紙によれば、この作成は既に1867年には行われていた。

最後に、ミュンヘンのホーフガルテンで行われた展示に関する史料として、1868年1月の『アルゲマイネ新聞』に掲載された「ミュンヘンにおける新しい民族学博物館とシーボルト・コレクションに関わるモーリッツ・ワーグナーの報告」(本書掲載)を紹介する。

このたび、五大陸博物館およびブランデンシュタイン家と国立歴史民俗博物館との間で締結された学術協力に関する覚え書きにもとづき、ドイツ、オランダおよび日本の研究者による協業の成果として、本書が刊行されるはこびとなった。ここに翻刻・翻訳する史料は、いずれも、ミュンヘンの五大陸博物館が所蔵するシーボルト・コレクションの内容との間で、それらがどのように活用されたかを示すものとして重要であり、今後のシーボルト研究の進展に大きく寄与することが期待される。

本研究の遂行に際して惜しみない協力をたまわり、成果の公刊を快諾してくださった所蔵機関および関係者に深く御礼申し上げたい。

2016年3月
人間文化研究機構「日本関連在外資料の調査研究」
カテゴリーA「シーボルト父子関係資料をはじめとする前近代
(19世紀)に日本で収集された資料についての基本的調査研究」
総括責任者
人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館
日高 薫

(本書序文より転載)


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