年度別学術成果報告

2016年3月18日

『ライデン国立民族学博物館・国立歴史民俗博物館所蔵 死絵』刊行

 

編集・発行: 大学共同利用機関法人人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館

発行日:2016年3月18日

この図録は、オランダのライデン国立民族学博物館が所蔵する死絵資料に、国立歴史民俗博物館所蔵の死絵資料の一
部を併せて収録するものである。

死絵とは、歌舞伎役者が亡くなった際に訃報と追善を兼ねて刊行されるもので、役者の似顔絵に没年月日や戒名、埋
葬された寺院などを添えた錦絵であり、江戸時代後期から昭和初期にかけて制作された。この絵の大きな特徴は、死や
仏事を表象するものを描き加えることで、基本的に死後の姿を表現している点である。こうした構図から、死絵は当時
の死者表象のあり方を示しており、人々の死の認識を解明することができる貴重な資料である。

国立歴史民俗博物館では、二〇〇一年の企画展示「異界万華鏡─あの世・妖怪・占い」における死絵の展示をきっか
けに、死絵の収集と関連資料の蓄積につとめてきた。二〇一〇年には、企画展示の開催以前から当館で収蔵されていた
錦絵コレクション中の死絵に、その後意識的に収集された死絵を併せ、国立歴史民俗博物館資料図録7『死絵』を刊行
した。その後も資料の収集・整理を継続し、現在では日本国内有数の死絵コレクションを構築するにいたっている。

このような経緯から、人間文化研究機構「日本関連在外資料の調査研究」カテゴリーA「シーボルト父子関係資料を
はじめとする前近代(一九世紀)に日本で収集された資料についての基本的調査研究」(二〇一〇~二〇一五年度)プ
ロジェクトの一環として、ライデン国立民族学博物館所蔵の死絵及び関連資料の調査をおこなった結果、日本国内のお
もだった死絵所蔵機関においても所蔵例のない死絵が、ライデンに相当数存在することが判明した。死絵は、錦絵の刊
行形態を把握できることから美術史においても、また歌舞伎役者に関する情報を含んでいることから演劇史においても
重要な資料であるとともに、前述のように死の認識や仏教の浸透を把握できるなど民俗学、宗教学の研究にも寄与する
ものである。そこで、ライデン国立民族学博物館所蔵の死絵と、国立歴史民俗博物館が二〇一〇年以降に新たに収集し
た死絵とを併せて図録とすることで、死絵研究の基礎的な資料としたいと考える。

このたび、ライデン民族学博物館と国立歴史民俗博物館との間で締結された学術協力に関する覚え書きにもとづき、
オランダおよび日本の研究者の協業の成果としての本図録が刊行されるはこびとなったことは、この上ない喜びである。

この図録がさまざまな分野において今後活用され、研究の一助になれば幸いである。
末筆ながら、研究の遂行に際して惜しみないご協力を賜り、成果の公刊を快諾してくださったライデン国立民族学博
物館をはじめ、本図録刊行にあたり、ご協力、ご助言を賜ったその他の関係諸機関の方々にお礼申し上げたい。

2016年3月
人間文化研究機構「日本関連在外資料の調査研究」プロジェクト
カテゴリーA「シーボルト父子関係資料をはじめとする前近代
(19世紀)に日本で蒐集された資料についての基本的調査研究」
総括責任者
人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館
日高 薫

(本書序文より転載)


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