年度別学術成果報告

2014年2月11日・12日

ボーフム・ルール大学国際シンポジウム 「シーボルトが紹介したかった日本―欧米における日本関連コレクションを使った日本研究・日本展示を進めるために-」

会場: ボーフム・ルール大学 ルール大学国際会合センター(ルール上海)

主催: 人間文化研究機構、ボーフム・ルール大学 (国立歴史民俗博物館・久留島「総括チーム」)

2014年2月11日(火)・12日(水)の2日間にわたって、ドイツ、ボーフム・ルール大学(以下略称ボーフム大学)で人間文化機構主催・ボーフム大学共催により開催した(日独両言語の同時通訳付)。日本から20名、日本以外から41名の参加者を得、この4年間の調査・研究の成果を広く共有することができた。

とくに、シーボルト父子関係資料の文献の調査およびデータベース化が進んだこと、ミュンヘン国立民族学博物館のシーボルト・コレクション調査が進んだことによって、現在同館に残る資料群についての詳細な情報を得ることができ、2016年度に国際巡回展示を予定している「シーボルトの見せたかった日本-シーボルト最後の日本展示―」(仮称)の実現に向けて大きな前提条件ができた。シーボルト以外の日本関連資料調査も進んでおり、この事業が国際的に認知されていることが証明された。


ルール大学国際会合センター前にて参加者全員
 

〈シンポジウムの主旨〉

人間文化研究機構「日本関連在外資料の調査研究」プロジェクトは、2010年以来、シーボルト関連資料を中心とする海外所在の日本関係資料の調査研究を進めている。

なかでもミュンヘン国立民族学博物館に収蔵されているシーボルト(父)の2度目の来日時の収集品を中心にしたコレクションの調査を重点的に行っている。当コレクションは、地図・漆器・陶磁器・絵画資料・書籍などのほか、日用品についてもその製品とその素材(原料)および製作のための道具のミニチュアなどまで含めると、多岐にわたる大規模な資料群で、収蔵した時期(19世紀半ば迄)がほぼ確定できるために、日本関連コレクションの製作・使用年代などを推定するための「規準」資料としての価値を持つものである。さらにシーボルトに関する文献資料についても、シーボルト父子の書簡・記録・草稿などの調査研究を、ボーフム・ルール大学・ブランデンシュタイン家・ベルリン中央図書館の所蔵資料を中心に進めている。

またさらに、ほぼ同時期に同じく日本関連のコレクションを形成した、ブロムホフとフィッセル、ならびに、シーボルトよりも少し後のエドワード・モースのコレクション等、その他の近接する時代のコレクションも対象とし、近代に海外で収集された様々な日本関連資料の比較検討を通じた、視野の広い日本文化研究を進めている。

そこで今回は、2015年の最終年度の成果発表に向け、本調査・研究の一層の発展を図るため、一度中間的な総括を行い、今後の長期的な調査計画を構築すべく、日本研究の専門的研究機関を持つボーフム大学との共催で国際シンポジウムを開催し、その成果を公開するものである。

(文責:久留島)

[報告者と演題]

2月11日(火)

総合司会:大久保純一(国立歴史民俗博物館教授)・スヴェン・オスターカンプ(ボーフム大学授)

開会のあいさつ 
エルマール・ヴァイラー(ボーフム・ルール大学学長)
今西祐一郎(国文学研究資料館長)
趣旨説明 レジーネ・マティアス(ボーフム大学教授 )

第1部  シーボルトの描く「日本」像歴史と文化
(座長 ハンス・トムセン チューリッヒ大学教授)

1. シーボルトと19世紀の日本神話研究」山田仁史(東北大学准教授)
2.「シーボルト第一次滞在時蒐集書籍」鈴木 淳(国文学研究資料館名誉教授)
3.「シーボルトの朝鮮研究―朝鮮語関係の資料と著作ー」スヴェン・オスターカンプ
討論

第2部 欧米(ドイツ語圏を除く)における日本関連コレクションの現状と課題
(座長 マティー・フォラー 国立ライデン民族学博物館学芸員)

1.「イェール大学の日本関連コレクション」近藤成一(東京大学史料編纂所教授)
2.「北欧における日本関連アジア資料の調査研究」加藤幸治(東北学院大学准教授)
3.「モース・コレクション:もう一つの在外19世紀日本コレクション」小林淳一(江戸東京博物館副館長)
4.「イギリスにおける日本関係コレクションの現状と課題」三木美裕(国立歴史民俗博物館客員教授)
5.「スイスの日本関係美術コレクション」ハンス・トムセン(チューリッヒ大学教授)
6.「国際共同に基づく日本研究推進事業:「欧州の博物館等保管の日本仏教美術資料の悉皆調査、その実施と結果」 トモエ・シュタイネック(チューリッヒ大学客員研究員)
討論


エルマール・ヴァイラー(ボーフム・ルール大学学長)挨拶
 


レジーネ・マティアス(ボーフム大学教授 )報告


2月12日(水)

第3部 シーボルトの「日本博物館」構想について日本を「展示」する (ミュンヘン国立民族学博物館所蔵シーボルト・コレクションを中心に)」
(座長 宮坂正英 長崎純心大学教授 / ウド・バイライス ドイツ・シーボルト協会会長)

1.「シーボルト・コレクションにおける川原慶賀の動植物画と風俗画」野藤妙(九州大学大学院)
2.「シーボルトの地図編纂とブランデンシュタイン家所蔵資料」青山宏夫(国立歴史民俗博物館教授)
3.「トラウツ・コレクションからみたシーボルトとその日本研究」湯川史郎(ボン大学人文科学系講師)
4.「シーボルトの勘定帳:出島における経済活動を探る」松井洋子(東京大学史料編纂所教授)
5.「ミュンヘンのシーボルト・コレクションについての考察 シーボルト・コレクションとフィレヌーフェコレクションの混在か?」マティ・フォラー(国立ライデン民族学博物館学芸員)
6.「シーボルト・コレクションの陶磁器」櫻庭美咲(国立歴史民俗博物館機関研究員)
7.「シーボルト・コレクションの染織品」澤田和人(国立歴史民俗博物館准教授)
8.「シーボルト・コレクションの漆器」日高 薫(国立歴史民俗博物館教授)
9.「バイエルンにおける民族学への組織的取り組みの起源」ブルーノ・J・リヒツフェルト(ミュンヘン国立民族学博物館学芸員)
討論

閉会の辞(総括と今後の課題)  久留島 浩(国立歴史民俗博物館教授)

 


久留島浩報告
 


討論(左から:スヴェン・オスターカンプ、鈴木淳、山田仁史、ハンス・トムセン)


討論(左から:近藤成一、ハンス・トムセン、加藤幸治、鈴木淳一、トモエ・シュタイネック、三木美裕、マティー・フォラー)

近藤成一報告(質問:ブルーノ・リヒツフェルト、司会:マティー・フォラー)

 

年度別学術成果報告 一覧へ