年度別学術成果報告

2011年5月19日

オランダ日本書籍調査2011年度第1回研究会

会場: 国文学研究資料館2F第一会議室

主催: 国文学研究資料館・鈴木「ライデンA(書籍)チーム」

大津市民会館 学会風景

[参加者]

鈴木淳、古瀬蔵、陳捷、神作研一(以上、国文学研究資料館)、金田房子(清泉女子大学・非)、牧野悟資(国文学研究資料館・非)他、計11名。

[内容]

1.【研究発表】

金田房子氏「水谷助六(豊文)とライデン民族学博物館蔵『鷸十八品真写』について」

[発表要旨]

ライデン民族学博物館蔵『鷸十八品真写』は、「文政十一年子八月 ミヅタニスケロク」と奥書があり、『江戸参府紀行』に「帰国の時まで誠実に続けられた」と記される、シーボルトと尾張藩の本草家水谷助六との交流を跡付ける資料である。ここに描かれる鷸図は、意図的に省かれたと考えられる二点を除いて、全く同一の図が、順序もそのままに『水谷禽譜』(国立国会図書館蔵)に含まれている。

植物の方面に造詣の深かった助六が禽図を描いたのは、おそらくシーボルトのためだけではなかったと思われる。この時代『観文禽譜』(堀田正敦(※1))『梅園禽譜』(毛利梅園)等、大名に禽譜が流行する。尾張藩でも、御用絵師今村髄学が長崎に出向き、唐通事で絵師としても知られた神代熊斐(くましろゆうひ)から花鳥画をもらいうけるということもあった(※2)。このような禽図の流れの中に、今後『鷸十八品真写』をはじめライデン民族学博物館に所蔵される花鳥図を位置づけてゆきたい。また『ファウナ・ヤポニカ』鳥類編はシュレーゲル単独の書と考えられ(※3)、所収のシギの絵と助六の鷸図は全く異なるのだが、これら鷸図や花鳥図のシーボルトへの影響も考えてゆきたいと思う。

ところでこの頃、詩歌に詠まれた鳥・草木等の実際の姿への興味が高まり、文学と博物学とが深く関わった書物が俳書にもみられるようになる(※2)。助六の時代は、俳諧の大家として名古屋に大きな門戸をはった士朗に重なるが、士朗もまた尾張藩に出仕した医師であった。両者の関わりは、今のところ知られていないが、興味をそそられる点である。

     ※1 正敦は人を介してシーボルトに質問をし、その回答を得ている。

     ※2 今村理子『江戸の花鳥画―博物学をめぐる文化とその表象』(スカイドア1995)

     ※3 山口隆男「日本の鳥類研究におけるシーボルトの貢献」(『CALANUS』11 1994)

 

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