基盤研究

展示型共同研究

【展示型】「地理写真」の資料化と活用

研究期間:平成21年度~平成23年度

研究代表者 青山 宏夫 (本館・研究部)
研究組織 津 俊之 (和歌山大学)
磯谷 達宏 (国士舘大学)
中林 一樹 (明治大学大学院)
関戸 明子 (群馬大学)
松尾 容孝 (専修大学)
椿 真智子 (東京学芸大学)
畠山 豊 (町田市立博物館)
小方 登 (京都大学大学院)
福田 珠己 (大阪府立大学)
安達 文夫 (本館・研究部)
大久保 純一 (本館・研究部)
久留島 浩 (本館・研究部)
岩淵 令治 (本館・研究部)
松尾 恒一 (本館・研究部)
原山 浩介 (本館・研究部)

研究目的

本館への寄贈が予定されている「石井實フォトライブラリー」は、小学校・高校・大学の地理教員であった故石井實氏(1926-2007)が、終戦直後から2007年までの60年あまりのあいだに、日本各地(一部に外国を含む)で撮影した、40万点を越える「地理写真」を中心とする一大資料群である。本研究は、この「地理写真」を研究利用に供しうるように資料化するとともに、有効性と限界を見きわめつつ、その活用を図ることを目的とする。これは、近代以降において多量に残されている写真を、近現代研究に活用する可能性を探る試みでもある。また、最終年度の平成23(2011)年秋には、その成果にもとづいて企画展示を開催する。

石井のいう「地理写真」とは、地理学的に意義のある自然景観あるいは文化景観などを記録した写真をさす。その石井が撮影した地理写真の一部は、たとえば戦後最大の科学的地誌書とされる『日本地誌』全21巻(1967-1980、二宮書店)に数多く掲載されており、すでに学術的に高い評価を得ている。また、地域を「記述する」方法としての写真の可能性を自ら追求するなかで、東京都市部の各地や奥多摩の山村など、地域を定めて継続的かつ多角的・体系的に撮影した写真も多く、地域を記録した資料群としてきわめて高い価値を有している。しかも、こうした撮影者の意図から離れて、写真は多様な事物を写し込んでいるものであるため、研究資料としての潜在的な意義もきわめて大きい。

しかしながら、近代以降、写真は多量に撮影されてはきているが、撮影日や撮影場所などの基礎データが整備されたものは一部に限られている。また、資料としての写真の利用法や読解法も含めた資料論も、必ずしも充分に確立しているわけではない。

幸い、同フォトライブラリーの写真は、撮影日ごとに整理され、克明な撮影日誌も残されている。本研究では、以上の点をふまえて、第一に、同フォトライブラリーの写真について、時間データ・空間データ・被写体・撮影テーマなどの付与すべき基礎データの検討と、写真資料データベースの検索法の検討とを試みる(写真の資料化)。第二に、写真に写された景観について、(1)当該分野の専門的研究者によるモノグラフ的な視点、(2)関連する写真以外の資料からの検討、(3)写真相互の時間的・空間的連続性への配慮などの諸点から読解する(写真の活用)。とりわけ、自然景観・都市景観・農山村景観などや、生業・祭礼などの生活文化に注目して読解し、その成果を展示として公開する。これらを通じて、資料化・主題的研究・展示などを連関させて、写真資料を中心とした博物館型研究統合を実践する。

なお、本研究における作業効率の向上、および3年後に開催予定の企画展示とその後の写真資料の公開のためには、同フォトライブラリーの写真フィルム約40万点をスキャニングしてデジタル化することが早急に望まれる。これについては、本研究と並行して、科研費の基盤研究(A)「学際的利用のための『地理写真』データベース構築の試み」(平成21~25年度)を同一研究組織によって申請し、デジタル化作業を実施する計画である。