基盤研究

高度歴史情報化研究

【公募型】中世における儀礼テクストの綜合的研究-館蔵田中旧蔵文書『転法輪鈔』を中心として-

研究期間:平成20年度~平成22年度

研究代表者 阿部 泰郎 (名古屋大学大学院)
研究組織 近本 謙介 (筑波大学)
牧野 淳司 (明治大学)
筒井 早苗 (金城学院大学)
阿部 美香 (昭和女子大学)
康 保成 (中国・中山大学)
ブライアン・ルパート (アメリカ・イリノイ大学)
尹 光鳳 (広島大学)
荒見 泰史 (広島大学大学院)
小島 裕子 (和光大学)
西岡 芳文 (神奈川県立金沢文庫)
蓑輪 顕量 (東京大学)
内田 澪子 (本館・研究支援推進員)
小池 淳一 (本館・研究部)
高橋 一樹 (本館・研究部)
松尾 恒一 (本館・研究部)

研究目的

唱導文献は、中世の仏教文化の中核を担うテクストとして、儀礼と結びつき、芸能に展開する基盤となり、また、歴史状況と密接に関わり、時代をその人間の心意を象る史料としても高い価値を有する資料である。その研究は、文献学的資料調査と解読分析を基礎として、人文学の諸分野から学際的になされる必要がある。

田中文書中の『転法輪鈔』は、中世唱導の主流であった安居院唱導の代表的文献の中で最古最善のテクストであり、金沢文庫蔵安居院唱導文献群に比して遙かに古態を留め、それらを位置付ける上で不可欠な伝本である。安居院唱導文献の研究については、『安居院唱導集上巻』(1975)以降、大きな進展がみられない。その停滞は、こうした基幹資料が多く未公刊であることが影響している。この状況を打開する一歩として、歴博本『転法輪鈔』を研究・紹介することは急務であり、その公刊は、歴史・文学および美術史と建築史等の重要資料として学界の求めに応えるものとなろう。

加えて、唱導文献を広く宗教テクストとして認識し、特に儀礼テクストとしての普遍性の許に把えることにより、唱導が担う仏教文化の構造と体系が明らかになり、ひいては説経や延年など芸能へと展開する機能を明らかにできよう。それらは、仏教が王権や国家と結びついた東アジアに共通する現象であり、中国・韓国の仏教儀礼と芸能の研究者が参加することは、そうした広い地平において唱導文献の位相を捉える格好の機会となろう。また米国の中世仏教に深い知識と多様な問題意識を有する研究者の参加も、こうした課題を国際的な視野の許で展開する契機である。

既に研究代表者は、副代表も加わった共同研究として、科研費基盤研究(B)「中世寺院の知的体系の研究」で真福寺等において唱導文献を含む仏教資料全般にわたる綜合的研究を深め、また21世紀COEプログラム「統合テクスト科学の構築」の推進担当者として、その宗教テクストとしての普遍的構造を追究してきた。更に、新たに採択されたグローバルCOE「テクスト布置の解釈学的研究と教育」では、その成果をより高度化して、自身の科研費研究の主題である中世宗教テクストの綜合的研究を、国際的な連携を築きつつ展開すべく努めているが、その重要な基盤をなす本研究は、これらと連動してより大きな次元の成果へ発展させることが可能となるだろう。