基幹研究

列島における生活誌の総合的研究

(総括研究代表者 本館・研究部 常光 徹)

研究目的

人びとが生きていく生活の現場を注視するとき、そこに展開している知(知識)と技(わざ)(技術・技能)に関する伝承は、人間の営為の根幹に横たわるテーマとして浮上してくる。本研究は、日本列島を舞台に日々の生活を営む人びとのあいだに培われてきた知と技のあり方を、現代の民俗を基軸に総合的に研究するものである。

人間は手段としての技術を介して自然に働きかけていくが、そこには技術を保有する人びとの自然観や自然認識が深く関与している場合が少なくない。Aブランチ「自然と技の生活誌」では、農業、漁業、狩猟、採集、都市の生業等を取り上げて、自然と直に向かい合う人びとの身体的技能の特質と、技能を裏づけている自然知や暗黙知の考察をすすめる。さらに、生業の技術をとりまく社会的、歴史的課題に取り組む。Aブランチでは、生業の現場における自然と人間が織り成す知と技との関係が主題であるが、Bブランチ「兆・応・禁・呪の民俗誌」は、人の生死にまつわる予兆や禁忌、治病の呪いなど、日々の人間関係や衣食住・身体などに関する伝承が対象である。災禍を防除する方法・手段としての呪術(呪い)は生活技術として機能しているが、従来、技術を裏づける基礎としてあるべき知識や心意との関係については十分な検討がなされてこなかった。ここでは、技術と知識のありかたを多面的な視座から考察することで新たな知見の獲得を目指したい。

A・B両ブランチが措定する対象の違いとそこでの多様なありようへの関心は、知と技の関係について総合的研究を目論む本企画の基本的な枠組みだが、同時に、一見異質に映る両者のあいだに通底している諸課題についても議論を重ねたい。自然知や暗黙知といわれるものの内実は、兆・応・禁・呪の背後にある感性や価値観といった心性の問題と深層のレベルで交錯していると予想される。相互の研究状況を共有し幅広い発想を醸成する機会として、年に1回は合同研究会の開催を計画したい。なお、本共同研究は、平成22、23年度に予定されている第四室(民俗展示)の総合リニューアルの構築と連動するもので、研究の成果を展示に反映させることを意図している。

継続

兆・応・禁・呪の民俗誌 (常光 徹 他20名)

自然と技の生活誌 (安室 知 他12名)

新規

地域開発における文化の保存と利用 (常光 徹 他20名)