基幹研究

交流と文化変容に関する史的研究

(総括研究代表者 本館・研究部 久留島 浩)

研究目的

ユーラシア大陸の諸国家・諸民族社会と日本とは、歴史上、密接な交流を行なって来た。この交流は、ものの移動という意味での交易だけでなく、ものや文化を伴った人の移動、さらに技術や文化面での相互作用など情報の伝達などを含めて広範な範囲に及ぶ。またこのさまざまなレベルでの交流は、その接触の局面でみると、協調的な関係のみならず衝突・戦争などの対立関係も見られる。こうした相互交流に関する諸問題・諸局面に注目した研究は少なくないが、「ユーラシアと日本」という関係に限定してみると、文明地帯(中国や西欧)と非文明地帯(日本を含む周辺地域)という対比的なとらえ方から自由ではなく、海域という交流の媒介項を入れた新しい地域研究や双方向的・相関的な関係という観点からとらえ直そうという研究潮流はあるものの、その方法や視点、対象そのものについては、まだ検討する余地を残していると考えられる。また、日本の歴史を見直すためには、ユーラシア大陸にまたがる広大な地域を視野に入れ、ものとひとと情報の往来に注目した、ユーラシアと日本の相互作用についての総合的な議論と比較研究が必要である。

さらに、ユーラシアと日本との関わりにおいて、相互にどのようなイメージで見てきたのか、逆にどう見なされてきたのかという点の解明は、近年異文化と自文化という対比や、他者表象・自己認識の問題として注目されているが、そこでも解明されるべき論点は少なくない。他者表象ひとつをとってみても、異集団との接触によって「自然に」生み出されるものではなく、そこに支配・被支配関係が介在してはじめて生じるとも言えよう。日本を含む東アジア世界ではそれが、権力システムや国家システムの一部をなすことも多かった。たとえば、中国で生まれた周辺諸民族を表す「東夷・西戎・南蛮・北狄」という用語や概念は、中国の国家像や国家システムと密接に結びついており、日本や朝鮮では、それが「小中華」という二重構造となっているだけでなく、その「小中華」同士の歴史的関係性にも留意する必要がある。他者表象と権力システムとの関連を、異集団間の相互作用と独自性に留意しつつ検討することは、ユーラシアと日本とのちがいや共通点を構造的に明らかにする際に重要なポイントとなるのではないかと考える。

そこで、本研究は、おおきくは「交流と表象」という観点から「ユーラシアと日本」の関係史について、「比較」という研究手法で検討することにしたい。具体的には、「交流」「権力システム」「表象」の三つを共有テーマとし、それぞれ「ひとやものの移動から文化の受容と変容および文化表象の問題を見直すこと」、「権力システムだけでなく、ひとの移動をも視野に入れて国民国家形成過程を比較すること」「文化の表象から物質文化を問い直すこと」と相互に関連づける課題を設定して比較研究を深めたい。

継続

唱導文化の比較研究

国民国家の比較史的研究

移民史の比較研究