基幹研究

交流と文化変容に関する史的研究

(本館・研究部 久留島 浩 他)

国民国家の比較史的研究

研究期間:平成18年度~平成21年度

研究代表者 趙景達 (千葉大学)
研究組織 M.S.スティール (国際基督教大学)
アン.ウォルソール (カリフォルニア大学)
鶴巻 孝雄 (東京成徳大学)
高木 博志 (京都大学)
羽賀 祥二 (名古屋大学)
若尾 政希 (一橋大学大学院)
須田 努 (明治大学)
山田 賢 (千葉大学)
秋葉 淳 (千葉大学普遍教育センター)
小沢 弘明 (千葉大学)
石田 憲 (千葉大学)
今井 昭夫 (東京外国語大学)
朴 花珍 (釜慶大学)
小川原 宏幸 (明治大学)
慎 蒼宇 (都留文科大学)
野林 厚志 (国立民族学博物館)
川口 幸也 (国立民族学博物館)
渡辺 浩一 (国文学研究資料館)
岩淵 令治 (本館・研究部)
青山 宏夫 (本館・研究部)
大久保 純一(本館・研究部)
日高 薫 (本館・研究部)
小池 淳一 (本館・研究部)
久留島 浩 (本館・研究部)

研究目的

本研究は、非ヨーロッパ世界で、ヨーロッパとの接触・交流によって、国民国家が形成される歴史的過程について、19世紀という時間的枠組みを設定して比較研究しようとするものである。19世紀という枠組みを設定したのは、たとえば日本で考えてみると、18世紀末期の寛政期に明確になり始めた社会的な変化が、ロシアの南下政策をきっかけとする対外的危機と関係しながら、広く、深く進行することを念頭においているからである。19世紀の前半期は、18世紀後半以降の民間教育力の飛躍的な向上、生産流通過程の下から変質を背景として、おもに都市・在郷町の文化人層を担い手としてではあるが、自らの地域社会から広く国家・民族全体にまで及ぶ歴史や文化を自覚的に学ぼうという動きが顕著に見られる。こうした言わば対外的な危機感に刺激されつつ、自らの民族的アイデンティティを探そうとする動きのなかから、のちの国文学・国史学・民俗学などにつながるような諸学問が生まれ、あえて言えば「国民」が形成されるのである。18世紀末から19世紀初頭まで、「長い19世紀」としてくくることで、日本における国民国家形成過程を総体として捉え直すことができるのではないかと考える。また、非西ヨーロッパ世界では、国家権力によって一方的に「国民が創られる」のではなく、「国民になる」という自発的契機をも含めて考え直すことが求められているとともに、ヨーロッパ世界、とくにフランスで「発見された」国民国家のモジュールをそのまま当てはめるのではなく、非ヨーロッパ世界のそれぞれの国家や社会における特質をも含めて比較研究することが不可欠である。また、一般に、東アジア世界では、日本という先行した国民国家の大きな影響を受けて、言わば日本語や日本文化(政治制度)に「翻訳された」国民国家のモジュールも効力を発揮していると指摘する研究もあるが、西ヨーロッパモジュールと日本モジュールの相互関係を含めた問い直しが必要である。この間、とくにアジアでは、「共通の歴史認識」を形成することが政治的な課題として急速に浮上しているが、国を超えた研究者が、ここであげたような、たとえば「日本」の影響の持つ問題(「日本から」の、だけではなく「日本へ」の影響をも含めた総合的な把握は前提であるが)をも含めて、19世紀におけるヨーロッパ世界からの影響と、国民国家の形成過程の問題についての共同研究に参加し、あるいはそれをベースに新たな研究を組織するような研究状況をつくることができれば、これからの新しい人文科学の方向性も見えてくるのではないかと考える。さらに、同じユーラシアのなかの東欧、北欧世界でも、アジアと前後して国民国家の形成がみられ、そこではアジア同様に「ヨーロッパ世界」との接触・交流による影響がある。この点での比較研究も模索してみたい。