個別共同研究

日本歴史における水田環境の存在意義に関する総合的研究

研究期間:平成17年度~平成19年度

研究代表者 安室知(本館・研究部)
研究組織 大場信義(横須賀市自然博物館)
中島経夫(滋賀県立琵琶湖博物館)
大畑孝二(豊田自然観察の森)
山下裕作(農業工学研究所)
菊地直樹(姫路工業大学自然環境研究所)
大門哲(石川県立歴史博物館)
角南聡一郎(元興寺文化財研究所)
春田直紀(熊本大学教育学部)
佐野静代(滋賀大学教育学部)
今里悟之(大阪教育大学教養学科)
福澤仁之(東京都立大学理学部)
日比野光敏(名古屋経済大学短期大学部)
吉村郊子(本館・研究部)
西谷大(本館・研究部)
青木隆浩(本館・研究部)
篠原徹(本館・研究部)

研究目的

歴史的にみると、近代以前において日本の稲作は生業として強い特化傾向を示し、結果として水田率90パーセントを超えるような水田稲作に高度に特化した地域が日本各地に形成された。しかし、生活者の視点に立つとき、そうした水田環境は稲作のためだけに利用されてきたのではなかったことは明白である。

たとえば、内水面漁撈の主たる漁場は、従来、湖沼と河川に大別されてきたが、稲作との複合関係でみていくとき、水田が漁場として重要な意味を持っていたと考えられる。農薬や化学肥料が導入される以前の水田は稲を作るだけの空間ではなく、ドジョウやフナといった魚類においては重要な繁殖の場となっており、人はそうした魚介類を対象とした漁撈活動をおこなってきた。また、日本列島の場合、人工的な湿地ともいえる水田には、ガン・カモ科の鳥類をはじめとして多くの渡り鳥が越冬のために訪れるが、そうした鳥類を対象とした狩猟活動が水田耕作者によっておこなわれてきた。

そうした複合生業の視点をもって日本列島の水田環境を眺めたとき、稲作だけでなくさまざまな機能が水田には備わっていたことが理解される。また、生業だけでなく、信仰・儀礼や日本人の自然観の形成といった精神文化にまでそれは及んでいると考えられる。

そしてまた、現在は、1999年に新農業基本法(食料・農業・農村基本法)が施行され、圃場としての機能だけでなく、環境の保全、景観の形成、地域文化の伝承といった水田環境の持つ多面的機能が見直されてきており、水田環境の持つ意義をさまざまな視点から考究することは現代的課題ともなっている。

そうした点を踏まえ、文献史学・民俗学・考古学・歴史地理学などの人文科学を中心としながらも、環境社会学・農村計画学といった社会科学、および魚類生態学・昆虫生態学・鳥類生態学・自然地理学などの自然科学の研究者をまじえて学際的に討論し、日本列島における水田環境の存在意義について歴史的かつ現代的視点を持って考察することが本研究の目的となる。