基幹研究

生業・権力と知の体系に関する歴史的研究

(総括研究代表者 本館・研究部 井原今朝男)

Bブランチ 中・近世における生業と技術・呪術信仰

研究期間:平成17年度~平成19年度

研究代表者 井原今朝男(本館・研究部)
研究組織 岡田荘司(國學院大學)
伊藤大輔(名古屋大学)
栄原永遠男(大阪市立大学)
平雅行(大阪大学)
奈倉哲三(跡見学園女子大学)
野本寛一(近畿大学)
服部英雄(九州大学)
春田直紀(熊本大学)
藤井恵介(東京大学)
山本隆志(筑波大学)
横田冬彦(京都橘大学)
青山宏夫(本館・研究部)
宇田川武久(本館・研究部)
高橋一樹(本館・研究部)
永嶋正春(本館・研究部)
松尾恒一(本館・研究部)
中島丈晴(特別研究員)
菱沼一憲(研究員)

研究目的

(1)全体課題「生業・権力と知の体系に関する歴史的研究」の設定

日本列島では、弥生時代以来、水を利用した多様な生業を通じて、権力や民衆がその時代と社会を生き抜くための知的体系をつくってきた。この前近代的な知の体系は、生業と技術・呪術・信仰・宗教などが未分化なまま結合した独自の知的体系を作り、近代合理主義からみると、不合理にみえても、当時においては理にかなった体系をそなえていた。その全体像をどう概念化するか。とりあえず「知の体系」の造語をあて、今後の研究課題にしたい。A「古代における生業と権力とイデオロギー」、B「中・近世における生業と技術・呪術信仰」の2つの組織をたちあげ、それぞれの視点で前近代人がもっていた知的体系=世界観をあきらかにしたい。それによって、競争原理や近代知を相対化し異文化世界を相互理解する方策をさぐりたい。研究期間は期として平成17年度~19年度の3年間を設定した。

(2)Bブランチ「中・近世における生業と技術・呪術信仰」の研究目的

前近代社会においては、民衆が飢饉・疫病・戦争や低い生産力の中で生存するために多様な生業活動を展開しており、そこには権力や民衆を含めてその時代の社会が、生存し生き抜くための知的体系をもっていたと考えられる。この前近代的な知的体系は、天文や自然に対する豊かな科学的地理的認識、そこから有用財を取り出すための技術的知識、ヒトの肉体や回復力に対する医療的知識などが、呪術・信仰、宗教儀礼などと未分化なままに結合して独自の知識体系を作っていたものと考える。前近代社会の中で、生業と技術と呪術・信仰との体系をとらえる新概念がないので、とりあえず「知の体系」の造語で代用し、新概念の創造をはかる。生業やこれまでの分業概念などについても、民俗・考古・歴史学における概念の相違点を論議しながら、概念の共有化をはかり、異分野の学際研究における概念と方法論の諸問題についても検討したい。

(3)活動計画

1:「水と生業」というテーマを共通にして、そこでの生きぬくための生業の多様性についての新潟・塩津潟遺跡のフィールドを中心に研究の到達点を共有する。
2:歴史学・考古学・民俗学など異分野において生業概念がどのような分業論への批判の中から登場したのか。生業概念がどのような違いをもっているのか方法論的論議を行い、概念の共通化を図る。
3:鹿児島県万ノ瀬川下流域などの現地見学や、研究報告・討論会を通じて、潟湖の環境と生業の関係、山野河海の生業における知的体系、河と海の一体視化などの理解を深化したい。
4:「生業と技術と呪術」の未分化な構造や、前近代の「知的体系」研究の交流により
* 縄文人と弥生人との生業と知的体系の違い
* 古墳造営の世界観と近代知の差
* 律令工房の技術と呪術
* 神道における儀礼と生業・技術の相互関係
* 仏教における技術と呪術の未分化構造
* 狩猟技術と呪術の一体的世界
* 商業における呪術と信仰世界
* 鉄砲と呪術
* 葬送の技術と呪術
* 農地・地名の知的体系
* 工匠の技術知と近代建築論
* 製鉄技術と呪術世界
* 漆器技術と呪術
といった諸問題にとりくんでゆく。
5:前近代の知的体系と近代合理主義的歴史観についての総括討議
6:前近代の知の体系について新概念の提起についての総括討議

(4)歴博のこれまでの研究プロジェクトとの関連

「都市」「基層信仰」「環境」「戦争」など個別に検討されてきた歴博基幹研究テーマについて「水と生業」の視点からその成果と課題を再検討したい。都市と農村では水利用や水環境が大きく異なり、それが生業の違いとなってあらわれ、ひいては技術体系や信仰・宗教の違いなどの多様性を生み出し、対立と協調、紛争と和解などの多様な交流をもたらすのではないか。いいかえれば、民衆・権力・社会が存続するために必要とした知的体系を各時代・社会ごとに検討することによって、前近代における都市・環境・戦争・生業・技術・呪術・信仰などの相互関係を知の体系として再検討することができるものと考える。

(5)本研究に関する国内外の研究状況

これまで生産は分業の発展が市場経済の発展と論じられてきたことに対して、歴史・考古・民俗学の分野において生業論が提起されるようになった。しかし、それが旧来の分業論の批判から提起されたものか、それぞれの学問分野での生業概念が同一か否かについての論議がなされていない。その状況を打破したい。近代の貨幣史や商業の分野において、貨幣の呪術性が提起されるようになっている。また仏教史研究においても技術と呪術が未分化なことが提起されている。近世社会における知の集積についても新しい研究がおきている。しかし、そうした諸研究にまなび、前近代社会における知の体系の全体像について問題にして、近代知との相対化をはかろうとする試みがなされていない。

(6)本研究の特色

歴史においても異なる研究テーマの研究者があつまっており、民俗・考古学などを含め異分野間による論議が深まるように工夫したい。概念や方法論の論議が期待できる。
歴博内外の研究者や若手研究者をゲストスピーカーとし、研究成果や到達点を共通化するとともに概念や方法論の違いについて論議を深める。
AB両ブランチ合同での研究会を組織するとともに、縄文から古代までのブランチと古代から近世までのブランチでの個別研究会を並行して実施するなど、機能的な研究スタイルを模索する。

活動概報(pdfファイル・22KB)

A:第1回研究会(AB一部共同)(pdfファイル・54KB)
B:第2回研究会(阿賀北地方見学会)(pdfファイル・109KB)
C:第3回研究会
D:2005年度の総括 井原今朝男
E:第4回研究会(AB一部共同)
F:第5回研究会
(万之瀬川下流域研究会の結果報告)(pdfファイル・153KB)
(鹿児島万之瀬川下流域・坊津見学会)(pdfファイル・180KB)
G:第56回歴博フォーラム「新しい歴史学と生業-なぜ生業概念が必要か-」レポート(pdfファイル・20KB)
H:第6回研究会(宗教と呪術 技術と呪術)(pdfファイル・151KB)
I: 第7回研究会(AB一部共同)(pdfファイル・71KB)
J:第8回研究会 [NEW]
(土佐国物部・浦戸大湊地域の現地調査・研究会)(pdfファイル・709KB)

参考文献目録 (pdfファイル・61KB)