人間文化研究機構連携研究

文化資源の高度活用
アイヌ文化の図像表象に関する比較研究
-『夷酋列像図』とマンローコレクションのデジタルコンテンツ化の試み-

視覚文化におけるアイヌ・マンローコレクション研究

(研究代表者 本館 民俗研究系 内田順子)
研究期間:平成17年度~平成20年度

研究代表者 内田順子 (本館・研究部)
研究組織 森岡健治 (沙流川歴史館)
出利葉浩司 (北海道開拓記念館)
手塚薫 (北海道開拓記念館)
吉原秀喜 (平取町立二風谷アイヌ文化博物館)
岡田一男 (下中記念財団・ECJA)
Susanne Hammacher (Royal Anthropological Institute(RAI))
Sarah Walpole (Royal Anthropological Institute(RAI))
Arek Bentkowski (Royal Anthropological Institute(RAI))
宮田公佳(本館・研究部)

研究目的

[全体]
本研究の目的は、国立民族学博物館(民博)に所蔵されている『夷酋列像図』と国立歴史民俗博物館(歴博)に所蔵されているニール・ゴードン・マンローの映像資料を、両館の連携と国内外の研究機関との協力の下に、デジタル資料化して整理を行い、資料批判から内容分析までを行って、最終的にはアイヌ民族の歴史を根本から見直すための研究資料とすることにある。

アイヌ文化に関する映像・図像資料は数多く残されているが、資料批判から内容分析に至るまで、総合的に研究された例は少ない。それは従来各資料が一人の研究者あるいは一つの研究分野の中で独占的に扱われることが多く、異なる研究分野が協力し合うような研究体制が取れなかったからである。しかし、人間文化研究機構の発足によって、民博と歴博との連携が可能になり、異分野間の共同研究の幅が広がった。本研究では、両博物館所蔵の2つの資料を題材にして、フィールド系の研究分野と文献系の研究分野が協力し合い、両者の統合による新しい人文系研究分野の開拓も視野に入れた研究を行う。

[夷酋列像]
夷酋列像の真筆、諸写本の中でも民博所蔵の「夷酋列像図」は真筆に次ぐ早い時期の写本である可能性があり、しかも寛政の改革を断行した松平定信所蔵と伝えられるものであることから、図像の画風や内容の分析とともに、その来歴の謎を解くことも重要である。本研究班は、まず真筆、諸写本における民博本の位置づけを確定するとともに、この図像が書かれた目的と民博本が作られた理由を探り、さらに描かれた像から18世紀末、19世紀初頭のアイヌ社会とアイヌ文化を明らかにすることを目的としている。そして、最終的にはこの図像を巡る研究から、現代のアイヌの人々の位置づけについて考えていく予定である。

[マンロー班]
マンロー関係資料のうち、器物類についてはすでに全体像が把握され、カタログ化されているが、写真、映画、テキスト類については悉皆調査が未着手である。国内外にある研究機関の協力の下に、これらの資料の全体をリスト化し、デジタル化および整理を行って、資料批判、比較研究を行うことを目的とする。