共同研究:イソガネの形状と機能に関する研究

歴博共同研究

共同利用型共同研究

イソガネの形状と機能に関する研究

研究代表者 瀬川 渉(横須賀市自然・人文博物館/民俗誌)
館内担当教員 松田 睦彦(本館研究部 民俗研究系)

研究目的

本研究は、館蔵資料群「裸潜水漁撈及び蛸漁関係用具」のなかからイソガネ134点を対象とし、各資料の形状を分類整理し、館外各地の資料群とも比較をおこなうことで、形状の差と類似の生じる要因を、海女・海士個人が得意とする漁場や海洋環境、他地域からの伝播、歴史的変遷という視点で明らかにするものである。

イソガネはアワビなどを捕採するために必要不可欠な道具であり、鹿角製のアワビオコシが古墳時代の遺跡等から発掘されるなど、歴史的にも裸潜水漁撈の基本となる道具である。しかしながら、本研究の対象であるイソガネ134点は、大きさや形状は同一県内でも一様ではない。田辺悟氏(本資料群の収集者の一人と目される)の『日本蜑人伝統の研究』ではイソガネは地域差が出やすい民具であるとされ、岩礁の深い棚や洞穴中のアワビを捕採する場合にはイソガネの全長が長くなり、反りや先端部の大きさも地形に合わせたものになると指摘されている。申請者は、2022年度共同利用型共同研究で館蔵「裸潜水漁撈及び蛸漁関係用具」のイソガネを対象とし、長崎県や神奈川県を中心に9県と韓国・済州島の館蔵イソガネや館外各地のイソガネを実測・撮影した。長崎県で多く見られる短銃型のイソガネは他と一線を画す形状であるが、それ以外でも、アワビだけでなくウニの捕採も可能なように先端部が鉤状になっているもの、イソガネ自体に重量があり潜水する際のオモリの役割があるもの、先端部の反りが違うものなど様々な形状が存在することが2022年度の共同研究で分かった。地域を限定した2022年度でも先に挙げたイソガネの形状や機能を見出すことができたが、2023年度は地域を限定せず、収集範囲が全国に及ぶという資料群の特徴を生かし、それらイソガネの形状の差や類似を全国規模で地域別に整理し、海女・海士の移住や出稼ぎによる影響、文献資料や考古遺物との比較による形状の歴史的変遷を検討する。

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