19世紀の日本における絵具素材の移り変わり

科研費研究

研究代表者 島津 美子(本館・研究部)

研究目的

本研究では、絵画、錦絵、写真といったさまざまなジャンルの彩色資料を対象に、とくに19世紀の絵具はどのような素材で作られ、流通して いたのかを明らかにすることを目指す。

日本絵画などの絵具分析は、1950年代から行われているが、無機質の顔料分析が主流であって、染料から作られた顔料分析まで行っている事 例は限られている。他方、たとえば、江戸時代中期(18世紀後半)に誕生した多色摺の木版画である錦絵では、主に染料を粉末に加工したもの を絵具に用いていた。こうした染料を加工して作られた有機質の顔料の素材や製造法については明らかにされていないことも多い。当該時期に 製作された彩色資料を対象に、資料の属性を問わず横断的な絵具の材質分析を行うことで、江戸時代から明治期にかけての絵具の素材とその加 工方法、流通について明らかにすることを目的とする。