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実共同研究(計画・実績一覧)
  ■平成20年度共同研究
  人間文化研究機構連携研究
  日本とユーラシアの交流に関する総合的研究
  ユーラシアと日本:交流と表象
(研究プロジェクト代表 本館 歴史研究系・教授 久留島浩)
  研究期間:平成17年度〜平成21年度
   
  研究目的
 

(1)目的
 ユーラシア大陸の諸国家・諸民族社会と日本とは、歴史上,密接な交流を行なって来た。この交流は、ものの移動という意味での交易だけでなく、ものや文化を伴った人の移動、さらに技術や文化面での相互作用など情報の伝達などを含めて広範な範囲に及ぶ。またこのさまざまなレベルでの交流は、その接触の局面でみると、協調的な関係のみならず衝突・戦争などの対立関係も見られる。こうした相互交流に関する諸問題・諸局面に注目した研究は少なくないが、「ユーラシアと日本」という関係に限定してみると、文明地帯(中国や西欧)と非文明地帯(日本を含む周辺地域)という対比的なとらえ方から自由ではなく、海域という交流の媒介項を入れた新しい地域研究や双方向的・相関的な関係という観点からとらえ直そうという研究潮流はあるものの、その方法や視点、対象そのものについては、まだ検討する余地を残していると考えられる。また、日本の歴史を見直すためには、ユーラシア大陸にまたがる広大な地域を視野に入れ、ものとひとと情報の往来に注目した、ユーラシアと日本の相互作用についての総合的な議論と比較研究が必要である。

 さらに、ユーラシアと日本との関わりにおいて、相互にどのようなイメージで見てきたのか、逆にどう見なされてきたのかという点の解明は、近年異文化と自文化という対比や、他者表象・自己認識の問題として注目されているが、そこでも解明されるべき論点は少なくない。他者表象ひとつをとってみても、異集団との接触によって「自然に」生み出されるものではなく、そこに支配・被支配関係が介在してはじめて生じるとも言えよう。日本を含む東アジア世界ではそれが、権力システムや国家システムの一部をなすことも多かった。たとえば,中国で生まれた周辺諸民族を表す「東夷・西戎・南蛮・北狄」という用語や概念は、中国の国家像や国家システムと密接に結びついており、日本や朝鮮では、それが「小中華」という二重構造となっているだけでなく、その「小中華」同士の歴史的関係性にも留意する必要がある。他者表象と権力システムとの関連を、異集団間の相互作用と独自性に留意しつつ検討することは、ユーラシアと日本とのちがいや共通点を構造的に明らかにする際に重要なポイントとなるのではないかと考える。

 そこで本研究は、大きくは「交流と表象」という観点から「ユーラシアと日本」の関係史について、「比較」という研究手法で検討する。具体的には、「交流」「権力システム」「表象」の3つを共有テーマとし、それぞれ「ひとやものの移動から文化の受容と変容および文化表象の問題を見直すこと」、「権力システムだけでなく、ひとの移動をも視野に入れて国民国家形成過程を比較すること」「文化の表象から物質文化を問い直すこと」と相互に関連づける課題を設定して比較研究を深める。

(2)意義
 ここで取り上げる問題はいずれも,単一の研究分野では解決することができないほど、関係する問題が複雑に絡まっているため、文化人類学、民族学、民俗学、歴史学、文学など、複数の分野が協力してこの3つのテーマに取り組むことになる。検討に際してはさまざまな学問分野が方法論の上でも相互乗り入れするような 新たな学際的な研究方法を用いることになる。たとえば民族学側からは、文献資料を分析するとともに、現地調査を通じて口頭伝承、習俗・技術・芸能・民具等に関する個人や集団の記憶としての伝承を掘り起こし、文字媒体・非文字媒体によるものの双方に目配りし、両者を有機的に関連付けて研究を行う。また歴史学側は民族学の最新の理論や視点を取り入れて、文献や事物の歴史的解釈に新たな見直しをする。しかも、ここでは説明の便宜上二つの学問分野に限ったが、この二分法そのものも研究を進めるなかで克服されるべき対象となろう。後述するように、現地で同じ資料や同じ展示を見て議論することを通じて、はじめてその資料や展示そのもの、あるいは聞き取りを共有の研究資源となしうるのである。本研究は、海外調査を、ある特定の分野の調査に終わらせないで、必ず他分野の研究者、現地の研究者との研究交流の機会をあわせて設定することによって、新たな研究に不可欠な新たな研究資源を開発することができると考えており、これは大学共同利用機関にとっては、新たに共有しうる「文化資源の発掘作業」にほかならない。

 なお、本研究では、共通で議論する時代として19世紀を選んでいる。現代の状況を見直すために、それにつながる19世紀に注目し、この時代から現代に至る時期の状況を重点的に扱うことにしたい。なぜならば、今とかく「伝統的」と思われがちな事象が19世紀あたりで形成される場合が少なくないからである。現在、国際社会間の交流は、情報通信技術の飛躍的な発展によって、かつてないほど錯綜化するとともに高速化しているために、かえって相互理解が難しくなるという状況にある。しかも、往々にして、その難しさの原因を「伝統的文化」の違いに帰してしまい、深い歴史が深い溝を呼ぶかのような言説がはびこってしまう。しかし、本研究を通じて、「伝統」とされてきたものがそれほど歴史深度の深いものではないことを示しつつ、複雑に絡まり合ったかのように見えるユーラシアと日本の相互関係を解きほぐすような新たな展望と認識を持つことが可能となろう。

(3)連携研究としての特徴・独創性
 本研究は、国立民族学博物館(以下、民博)と国立歴史民俗博物館(以下、歴博)の両機関がもとになって企画されたものである。具体的に研究を進めるうえで、全参加者が共有すべきもの(少なくとも意識すべきもの)として、三つの共有テーマと19世紀という時間枠とを設定したが、実際に研究を進めるうえでは、さらに絞られた具体的な研究課題をいくつか設定せざるをえない。交流ひとつをとっても、対象は無限に存在するし、そのアプローチの仕方もさまざまである。したがって、限られた期間内での連携研究として成果をあげるためには、中心となる民博・歴博でこれまで蓄積されてきた研究成果を踏まえつつ新たな研究課題や研究方法を模索することが不可欠であり、この点は連携研究の特徴としては譲れない点である。しかし、連携研究に求められているものは、新たな人間文化研究の方法および課題群の発見と大学共同利用機関として共有しうる新たな研究資源(文化資源)の発掘であり、この点で本研究は以下のような特徴・独創性を有する。

 大学共同利用機関にふさわしく、機関外の研究者を広く組織するだけでなく、三つのテーマごとに、あるいは研究会を合同で行うことによって、普段ならできない議論を組織することである。同時に、共通して議論する対象を具体的なものや文献だけでなく、展示や記録映像、音楽など、これまで共通して議論することの少なかったものにまで対象を広げることである。この過程で、今後連携研究で立ち上げるべき規模の大きな新しい共同研究の方法と課題を発見しうると同時に、違う視点から共通するものを見る(聞く)ことによって、新たな研究的文化資源を得ることができ、大きな研究的意義があると考える。

   
 
総括班(研究全体を総括する)
研究代表者

久留島浩 (本館・研究部)

研究組織

今泉裕美子 (法政大学)
趙景達 (千葉大学)
林雅彦 (明治大学)
杉山晋作 (本館・研究部)

   
 
交流A班 古代東アジアにおける対外交流と文化受容の比較研究
研究代表者

杉山晋作 (本館・研究部)

研究組織

佐々木史郎 (国立民族学博物館)
加藤雄三 (総合地球環境学研究所)
東潮 (徳島大学総合科学部)
上野祥史 (本館・研究部)

   
 
交流B班 移民史の比較研究
研究代表者

今泉裕美子(法政大学国際文化学部)

研究組織

塚田誠之 (国立民族学博物館)
楊海英 (静岡大学)
安田常雄 (本館・研究部)
原山浩介 (本館・研究部)

   
 
権力システム斑 国民国家の比較史的研究
研究代表者 趙景達 (千葉大学・教授)
研究組織

竹沢尚一郎 (国立民族学博物館)
野林厚志 (国立民族学博物館)
久留島浩 (本館・研究部)

   
 
表象斑 唱導文化の比較研究
研究代表者 林雅彦 (明治大学)
研究組織

笹原亮二 (国立民族学博物館)
寺田吉孝 (国立民族学博物館)
福岡正太 (国立民族学博物館)
小池淳一 (本館・研究部)

   
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