連載「歴史の証人-写真による収蔵品紹介-」

中国陶磁コレクションより

この染付茶碗や皿をみて、「今朝、これと同じような茶碗でご飯を食べた」という読者がいるに違いない。染付は、日本人にとって茶碗や皿に最もなじみの深い焼物である。染付の碗や皿が庶民の日常生活品に加わったのは15世紀後半のことだが、それ以来、ずっと染付が好きなのだといえる。
中世の日本列島には、海外よりさまざまな品がもたらされたが、特に隣国中国の陶磁器は多い。それらには、どこの中世遺跡でも大量に出土する日常生活品だけではなく、「唐物(からもの)」の名で象徴された富や権威を表現する威信財としても憧憬の品であった。具体的には、座敷飾りや茶・花・香などの道具として使われたもので、中でも河北省定窯(ていよう)の白磁、江西省景徳鎮(けいとくちん)窯の青白磁や染付、浙江省龍泉窯(りゅうせんよう)青磁、福建省建窯の天目茶碗などが高く評価され、鎌倉時代以来の伝統的な価値観となって長く定着した。
一方、福建省泉州周辺で生産された緑・黄・青・紫など多彩色の釉薬を施した華南三彩陶は、中世から近世への過渡期に新しい嗜好で大流行した。これらをモデルとして、その色づかいから黄瀬戸や織部焼などの新たな国産の多彩釉陶器が生まれるのであった。

天目茶碗
13世紀

染付芭蕉文碗
15世紀後半~16世紀

染付玉取獅子文皿
15世紀後半~16世紀

青磁縞文酒海壺
13~14世紀

華南三彩海老文盤
17世紀初

華南三彩牡丹文壺
16世紀末

青磁牡丹文大花瓶
14世紀

本館考古研究部 小野 正敏