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概要広報用素材の提供について問い合わせ先

謹啓 時下益々ご清祥のこと、お慶び申し上げます。平素より、当館の運営等につきましては、格別のご配慮を賜り、深くお礼申し上げます。

日韓の研究者による文化財科学の見地からアプローチした共同研究の成果から、 青銅器にみる古代日本と朝鮮半島の交流・流通の新たな展開を紹介します。 
これは、韓国慶尚道・釜山地域で出土した三国時代前後の青銅器と、それに関連する楽浪や日本国内の青銅器の鉛同位体比を調べることによって得られたものです。
これまで、鉛同位体比に基づいた弥生中・後期~古墳時代の青銅器原料については、中国との関係を中心に考察されてきましたが、今回の結果により、朝鮮半島との関係についてもあらためて視野に入れた上で調査を行う必要のあることが明らかになりました。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金 基盤研究B「東アジア地域における青銅器文化の移入と変容および流通に関する多角的比較研究」(代表研究者 国立歴史民俗博物館情報資料研究系助教授 齋藤努)であり、3年間の共同研究を終え成果を今年3月に報告書として発行しました。 
そして、来たる2006年6月17・18日開催の日本文化財科学会 第23回大会  (於 東京学芸大学 東京都小金井市)において発表いたします。

敬具

-成果を6月17,18日開催の日本文化財科学会 第23回大会で発表-

目次

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趣旨

日韓両国で文化財科学的な共同研究を行い、自然科学と考古学の両側面から考察を加えることにより、古代の朝鮮半島における青銅資料などの原料産地、朝鮮半島と日本の交流関係を明らかにしていこうとするものです。

出土資料について

韓国国内遺跡の出土資料と日本の各地に所蔵する資料計240点 ※図[1]参照

韓国

韓国慶尚道・釜山地域出土資料:青銅製品126点、銀製品7点、溶融物8点、方鉛鉱2点 
楽浪土城出土資料:青銅製品44点、方鉛鉱6点

日本

宮内庁所蔵:青銅製品34点 
長野市教育委員会所蔵:青銅製品1点
国立歴史民俗博物館所蔵:青銅製品12点

調査方法

鉛同位体比を測定し、使用されている原料に基づくグループ分けをおこなう。

成果

測定結果の中から、特にデータの集中する2つのグループを見いだすことができた(グループA・Bとする)。※図[2]参照

[1]グループA

データの一致性がきわめて高く、加えて近畿式・三遠式銅鐸の鉛同位体比とよく一致している。年代も、紀元2世紀を中心とし紀元前2世紀~紀元4世紀の間におさまる。楽浪郡出土資料の8割がこのグループとその周辺数値範囲に分布する。

[2]グループB

グループAと比べると分布に広がりがあるものの、今回の測定資料の多くがここに含まれている。この時期の韓国青銅製品の鉛原料の主要な産地の一つと推測できそう。時代は4世紀~7世紀初めでグループAより新しい年代の資料が該当する。

考察

[1]グループA

産地の候補としては中国の鉱床との関連性が考えられる。 
←前漢鏡の数値範囲内、これまで報告されている朝鮮半島の鉱床でこれに近いデータを示すものがない。 
日本の銅鐸原料にこれが使用されていること、楽浪出土品でこれに含まれるものが多いことから、日本と朝鮮半島との交流を考える上で重要である。これまでも、前漢の武帝が紀元前108年に楽浪など四郡を朝鮮半島においたのに伴い、漢からの文物が楽浪経由で日本列島に入ってきたと考えられていたが、今回の自然科学的分析でも、それに矛盾しない結果が得られたことになる。

[2]グループB

原料の産地について、これまでの鉛同位体比研究の結果に従えば、中国の華中~華南産原料の数値範囲内にあり中国の鉱床の可能性がまず考えられる。 
しかし、慶尚北道の漆谷鉱山の数値がこれと近接していること、その近くに位置する鉱山の地質などから、新たに、朝鮮半島南部地域の鉱床からもたらされた可能性について考慮しておく必要がある。 
その場合、このグループが4世紀以降の資料ということを考えると、313年楽浪郡の滅亡による技術者達の朝鮮半島南部地域への流入の可能性や4世紀の朝鮮半島南部地域における古代国家形成の動きも無視できない。

[3]倭系遺物の出自をめぐる議論への影響 

今回の調査資料には、いわゆる倭系遺物である「馬形帯(たい)鉤(こう)」(写真[1])と「筒形銅器」を意識的に含めている。 
馬形帯鉤は研究者の共通認識では、出土地が圧倒的に朝鮮半島が多いこと、4世紀には基本的に日本には馬がほとんどおらず、精緻な造形や装飾ができたとは考えにくいことから、朝鮮半島製(百済・加耶系)であるとしている。今回の測定結果ではグループBに属するものが多いという結果が得られ、時期的にも合致する。 
筒形銅器は、現在出土数が朝鮮半島と日本で拮抗していることから、どちらで制作されたものか判断が下せない状況にある。測定結果では25点中11点がBグループに属しており、これが主要な原料の一つとみることができるが、出自は朝鮮半島製の可能性もあれば、素材を朝鮮半島から持ち込んで日本で製作した可能性もあるため、製作地を測定値だけから判断することは難しい。ここからは考古学的見地による議論が展開されていく必要がある。

これまで、鉛同位体比に基づいた弥生中・後期~古墳時代の青銅器原料については、中国との関係を中心に考察されてきた。しかし、今回の結果により、朝鮮半島との関係についてもあらためて視野に入れた上で調査を行う必要のあることが明らかになった。 
このように、日韓の相互協力による文化財科学的な共同研究を行うことは、古代の朝鮮半島と日本との交流関係をより明らかにしていくうえで有効であり、今後も活発に分野を超えた交流が必要であることを示した点からも重要であるといえる。

広報用素材の提供について

ご希望の写真(データ)を送付いたしますので、各プレスリリースの写真番号をご連絡ください。e-mailでも結構です。問い合わせ先は下記の「このリリースに関するお問い合わせ」をご覧ください。ご掲載いただいた場合は、お手数ですが掲載物をご送付ください。

図[1] 測定資料遺跡分布図

図[2] グループAおよびBの分布図

写真[1]:馬形帯鉤(本館蔵)

このリリースに関するお問い合わせ

人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館 博物館事業課
広報サービス室広報係 後藤・山本・坂本

〒285-8502千葉県佐倉市城内町117番地 
TEL 043-486-0123(代)  FAX 043-486-4482
E-mail:koho@ml.rekihaku.ac.jp