くらしの植物苑だより
◆くらしの植物苑観察会◆|
3月24日(土)第36回くらしの植物苑観察会
『伝統の植物』 講師:渡邊 重吉郎(国立歴史民俗博物館) |
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★春を告げる花ばな
「冬の花」ロウバイのあとは、春を告げる花ばなが次から次へと登場してきます。
東北日本で春を告げる花と言えば、真っ白な雪の中に金色の花びらを輝かせるマンサクです。植物苑にはシナマンサクが咲いています。この仲間は、日本から中国にかけて、いくつもの種類があります。金糸のようなちぢれた花びらが特徴です。この仲間は、遠く数百万年前では、北半球のどこにでもいましたが、いまでは東アジア、一部のものは北米に取り残された珍しい植物なのです。
和紙の原料になるミツマタも、黄色の花を咲かせています。たくさんの花が集まって、半球状の大きな花のかたまりになっているのです。植物苑にはミツマタと並んでニオイミツマタも大きな花を咲かせています。かぐわしい香で、すぐに居場所がわかることでしょう。
ミツマタによく似た植物が、街路や庭によく植えられています。ジンチョウです。たくさんの筒の形をした花がたくさん集まっているのも、ミツマタそっくりです。「じんちょうの香(かおり) ただよい花いまだ」(恵子)という句を思い出してしまいます。ほんのりとした香が、まだ肌寒い春にぴったりです。野山でまれにみるナニワズという植物も、この仲間です。これらは、自然の野山では大きな群れをつくらないのが特徴です。だからこそ、林床にポツンと咲き誇っている姿を見つけたときは、感激もひとしおです。
ウメやモモも、ほころびはじめました。どちらも、かつては日本になかった外来の植物です。中国や朝鮮半島から日本にもたらされたものですが、いつ、どのようにして渡来したのか、まだはっきりわかっていません。サクラの仲間は、虫が花粉を運ぶことによって実ができる植物です。植物の渡来のときに虫がいっしょに渡来しなかったために、日本にいる虫が花粉を運んでいます。開花が早くて、虫の活動と一致しないと、実があまりつかないことがあります。今年は、どんな年になるのでしょうか。
これらの木々には、葉にさきがけて花がまず開花するという共通点があります。そして、木の背丈が高くないのも大きな特徴で、共通点でもあります。もともと落葉広葉樹林の植物で、大きな高木の落葉広葉樹の下で、春先にいちはやく花を咲かせるのです。広葉樹の葉陰になる前に、花を咲かせ、結実するのです。これも高木と共存していくための、生き抜きの戦略なのです。
草にも、春を告げる植物がたくさんあります。フクジュソウはその代表格でしょう。江戸時代からたくさんの品種がつくり出されてきた伝統の植物です。東北で「ふくべら」と呼ばれるアズマイチゲは、雪の下でもう芽を出しはじめました。白い花が咲くころ、春の山菜として食卓にのぼります。ユリの仲間にもたくさんあります。カタクリ、ギョウジャニンニク(アイヌネギ)など。滋養と強壮に、開花する前の若々しい新芽・葉が春の食卓をにぎわしてくれます。
(辻 誠一郎)
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