くらしの植物苑だより
◆くらしの植物苑観察会◆| 『花を観る』 |
| 講師:辻 誠一郎(国立歴史民俗博物館) |
| 4月29日(土)くらしの植物苑観察会 |
| 13:30〜 くらしの植物苑[みどりの日は入苑が誰でも無料となります] |
おやっ、と思われるかも知れません。3月の観察会は「サクラの仲間」がテーマだったからです。しかも、城址公園のサクラ(ソメイヨシノ)は、もう葉桜なのです。
しかし、サクラの仲間はまだ終わっていません。これからが本番というサクラの仲間がまだまだいるのです。
サクラの仲間と言えば、ヤマザクラやソメイヨシノだけが目立っているようですが、実に多くの種類が含まれているのです。植物学ではサクラ属という仲間です。
| サクラ属 | ||
| [1] | スモモ亜属 | アンズやスモモからなる |
| [2] | モモ亜属 | モモからなる |
| [3] | ウワミズザクラ亜属 | イヌザクラやウワミズザクラからなる |
| [4] | バクチノキ亜属 | バクチノキやリンボクからなる |
| [5] | サクラ亜属 | ソメイヨシノなど狭い意味でのサクラ類からなる |
サクラ属は、表に示すとおり五つの仲間に分けることができます。
[1]と[2]は果実のうち果肉と呼ばれる部分を食用にしています。これらの果実には、縦の方向に浅い溝か、くぼみがあります。ウメやモモの果実を思い出してください。ところが、その他の仲間、すなわち[3][4][5]の果実には、縦の方向の溝やくぼみがありません。
ところで、サクラ類からなる[5]サクラ亜属はあまりにもよく知られていますが、[3]ウワミズザクラ亜属や[4]バクチノキ亜属は、サクラ亜属に近縁でありながら、あまりなじまれていない仲間です。これら二つの仲間は、多数の花が集まって真っ白な房のような長い花序をつくります(図参照)。サクラ亜属のほとんどのものが、単生といって、一花づつが枝に群がってついているのと大きな違いです。
ウワミズザクラやイヌザクラは城址公園にもたくさんあります。もう花序が伸びはじめているはずです。4月のおわりから、真っ白な花序が突然出現するに違いありません。もう一つのバクチノキの仲間は、同じような白い花序をつけますが、花はずっとあとの9月から10月にかけてです。
さて、ソメイヨシノと同様に、古くから愛でられてきたのがサトザクラです。八重咲きで、4月下旬から5月上旬に花が咲くので、もう一度花見を楽しむことができるのです。オオシマザクラを中心に、ヤマザクラやカスミザクラなどとの交配によってつくり出されてきた品種です。平安時代にはすでにつくり出されていたと言われています。
栽培植物の碩学(せきがく)、故・中尾佐助さんが、サトザクラについてたいへん興味深いことを言っています。サトザクラは自然破壊から起こったというのです。適度の自然の生態系の破壊が、それまで住み分けていた近縁の植物が隣り合い、交雑をうながして、それまでにはなかった新しい種類がつくり出されると考えたのです。大胆ですが、なるほどと思える仮説です。
(辻 誠一郎)
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