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AMS14C法による縄文時代中期土器の暦年代

 本報は、AMS14C年代測定による高精度年代体系の構築研究の一環として行ってきた、東日本縄文時代中期を中心とした年代測定の成果の概要である。
 文献資料がない縄文時代では、土器のスタイルの変化に基づいて、土器編年を設定し、その順序で相対的な時間の尺度が定められている。この土器編年に対して年代を数値として与えれば、より具体的な歴史的復元が可能となる。さらに、これまで推測の域を出なかった、それぞれの土器型式の継続期間など、考古学的問題についても検討可能となる。今回は、縄文時代中期の年代を求め、各土器型式の継続期間を明らかにする研究を行った。
 東日本縄文時代の土器に付着しているおこげ状の炭化物や土器に付着していた漆、竪穴住居の炉や柱穴出土の炭化物、火災住居の炭化材などの試料約900点を採取し、これまでに260点以上の測定を行った。炭素14濃度の測定値から、較正曲線を使って、暦年代を計算した。
 測定結果のなかには、予想される年代と300年以上の開きがある年代を示した20数点が含まれた。この特異な数値を示したうちの半数は炭化材や種子のサンプルで、明らかに新しく、埋没後にあとから混入した可能性が高い。残りは土器付着物で、予想される年代よりも古い場合が多いが、これらは炭素含有量の割合が低い試料が多く、調理の煮炊きによるおこげ以外の炭化物であった可能性が考えられる。よって、これらのデータは除外して検討した。今回の検討では、縄文中期に関わる測定例約130点を中心に、編年的位置の不明瞭なデータ、同一時期で年代の重複するデータを省略した上で、図1に炭素14年代、図2に暦年較正年代を示す。それぞれ、左側に関東・甲信・北陸の中部日本、右側に岩手県・福島県を中心とした南東北地方のデータを示す。関東・中部と東北地方の土器型式同士の、時間的関係をたどることができる。


 これらの測定結果を検討し、縄文時代中期の細かな土器型式ごとの暦年代比定が可能となった。まず、中期初頭の五領ケ台1式・新保1式・大木7a式は、紀元前(cal BC)3550〜3500年頃に、前期末葉の朝日下層式・十三菩提式・大木6式の土器群との境が想定でき、中期はじめの年代がかなり正確に判明した。同様に、関東地方の加曽利E4式〜称名寺式・関沢類型土器、及び福島県の大木式土器群の暦年代を検討した結果から、称名寺式土器成立をもって後期とした場合、紀元前(cal BC)2500〜2450年頃に、中期と後期の境が想定できることが判明した。
 土器型式ごとの継続期間については以下のことがわかった。従来、関東地方の縄文中期は、おおむね10型式に大きく区別され、さらに各型式が細分されて、もっとも細かく編年されている場合、中期全体で30数期の細別時期に区分されていた。大別型式では、1型式が100年程度、細別時期区分では、1時期30数年ごとに、ほぼ等間隔に各土器型式が継続していたと想定されていた。しかし、今回の研究の結果、細別時期ごとに暦年代を推定していくと、20年程度と明らかに短い継続期間の時期と、90年近くは存続が想定される長い継続期間の時期とが認められた。おおまかにいって、中期前半の五領ケ台式・勝坂1式は土器の文様が早く変化し、中期中頃の勝坂2・3式と後半の加曽利E3式は、土器の変化が緩やかで1時期が長年にわたることが判明した。土器型式でまとめてみても、細線紋の五領ケ台1式期(30年間)、沈線紋の五領ケ台2式期(60年間)、角押紋の狢沢式(60年間)、三角押文の新道式期(40年間)、キャタピラ紋の勝坂2式期(200年間)、立体装飾の勝坂3式期(180年間)、頸部文様帯を持つ加曽利E1式(90年間)、胴部柱状区画の加曽利E2式(100年間)、磨消区画の加曽利E3式(190年間)、口縁部文様帯を喪失する加曽利E4式(100年間)と推測され、やはり中期中葉と後葉とにおいて、比較的長期にわたる土器型式の継続が想定される。(小林謙一、今村峯雄、坂本稔、西本豊弘)

 

用語説明


土器型式

土器の形・文様などのスタイルから、時期・地域ごとにまとめられた土器の分類体系。特に、縄文時代の土器の場合、文様装飾が豊かで、地域や時代によって、特徴が大きく異なっている。たとえば、中期中頃の新潟県域には火炎土器(馬高式)が存在し、同時期の長野県域には水煙土器(曽利?式)が存在する。

大別と細別

縄文時代は、大きく草創期・早期・前期・中期・後期・晩期に時期区分され、さらに地域ごとの土器型式として、おおまかな特徴によって大別される(例:勝坂式)。さらに、必要に応じ細別として、各型式の中で細かな差異によって細かく時期や系譜が区分される(勝坂1a式、狢沢式など)。

較正年代

較正された暦年代で、cal BC は紀元前での年数、cal BPは、1950年を起点としての年数。


 

縄文住居内出土炭化材の採取状況
 

 

縄文土器への炭化物付着状況
 

 

炭化物採取状況

 

採取された炭化物


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