国立歴史民俗博物館企画展示「建築文化からみた東アジアと日本」
2009年7月から8月に予定
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2008年8月4日
第1回:中国の宮殿建築 天壇祈年殿と紫禁城(故宮)太和殿
まず第一に取り上げるのは、東アジア建築の中心である中国の宮殿です。北京は元がこの地に大都を築いたことに始まりますが、現在の北京の原型ができたのは明が南京から遷都した15世紀初めです。皇帝が天を祀り五穀豊穣を祈願する天壇、皇帝の即位をはじめとする重要儀式の行われた紫禁城太和殿は、いずれも明・清時代を通じて重要な役割を果たした中国の宮殿建築を代表する建物です。
国立歴史民俗博物館教授 玉井哲雄
(展示プロジェクト代表者) |
北京/紫禁城大和殿
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北京/天壇祈年殿
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2008年8月19日
第2回:韓国の宮殿建築 ソウル崇礼門(南大門)と景福宮勤政殿
朝鮮王朝初代李成桂(太祖)は風水にかなったソウルの地を選定して1394年に漢陽城と命名しました。崇礼門(通称・南大門)は、1398年完成しましたが、その後第四代世宗代(1419〜51)の大改修工事によって建て直されました。昨年2008年放火によって焼失しましたが、1960年代に行われた解体工事の資料などにより再建計画が進められています。
景福宮は王朝の正宮として太祖によって建設されましたが、兵火などで焼失。正殿である勤政殿は1867年の建設です。現在景福宮全体で復元工事が進行しており、全体の雰囲気が大いに変わりつつあります。
国立歴史民俗博物館教授 玉井哲雄
(展示プロジェクト代表者)
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ソウル/崇礼門(南大門)
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ソウル/景福宮勤政殿
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2008年9月1日
第3回:チベットの宮殿建築 ラサ/ポタラ宮
中国文明圏には漢民族以外に数多く少数民族が住んでおり、それぞれが特徴ある建築文化を受け継いでいます。チベットの中心都市ラサの山麓から山上にかけて築かれたポタラ宮は、チベット仏教の指導者ダライ・ラマの歴代の霊廟であると同時に政治支配の場としての宮殿でもありました。古く7世紀に創建されたとされますが、現在の建物は17世紀に再建されたもので、チベット族の建築様式を基礎にし、建物には漢民族建築の組物も用いられています。積み上げた石垣上に白亜外壁の木造建築をのせて外観を誇示するところは、ほぼ同時期の日本の近世城郭と対応しています。
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ラサ/ポタラ宮
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ラサ/ポタラ宮
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2008年9月18日
第4回:中国の寺院建築 山西省/応県仏宮寺釈迦塔(応県木塔)と天津市/薊県独楽寺観音閣
仏宮寺釈迦塔は遼の時代1056年に建立された中国現存最古の木塔で高さは67mです。八角形平面で、外観は初層に裳階を設け、上部四層には高覧付き回り縁を回らした五層です。日本の五重塔とは違って内部には床があり、塑造の仏像が安置されています。
独楽寺観音閣は同じく遼の時代884年に建てられました。外観は二層ですが、内部は三階です。中央が吹き抜けになっていて高さ16m中国最大の塑像十一面観世音菩薩を安置しています。
これらの仏教建築は外観などは日本の建築と異なっているようにも見えますが、組物を用いた木造は基本的に共通しており相互の影響関係がよくわかります。
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山西省応県/仏宮寺釈迦塔(応県木塔)
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天津市/薊県独楽寺観音閣
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2008年9月29日
第5回:韓国の寺院建築 慶尚北道安東/鳳停寺極楽殿 慶尚北道栄州/浮石寺無量寿殿
韓国に残された木造仏教建築で最も古い建物が、ここに上げた鳳停寺極楽殿と浮石寺無量寿殿です。正確な建立年代はわかりませんが、他の年代のわかる建物との様式比較などからいずれも高麗時代中期、13世紀にはさかのぼると考えられています。屋根の軒を支える柱上の組物は、いずれも柱心包系と呼ばれる形式ですが、浮石寺無量寿殿が後の時代にも受け継がれる典型であるのに対して、鳳停寺極楽殿は中国南宋の影響が入る前の古風な形式ですので、年代も少し古いと考えられています。
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慶尚北道安東/鳳停寺極楽殿
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慶尚北道栄州/浮石寺無量寿殿
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(c)Tamai, Tetsuo 2008
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