みやこ展の日々22 上がり、そしてふり出し

  1. 2007/05/06(日) 18:00:00
5月6日(日)

おかげさまで、みやこ展は最後にぐっと盛り上がって無事終了いたしました。5日のギャラリートークも、予想通りかなりのお客様がお越しくださり、オークボさんと同時並行で、午前午後各二回行いました。総入場者は残念ながら2万人弱とやや少なく、もっと多くの方に見ていただきたかったという思いはありますが、しかしご来観いただいた方々の「満足度」がかなり高かったのは、担当者としてうれしいことでした。
 わたくしも、このブログも含め、考えつく限りのあの手この手を試みて、思う存分やらせていただきました。体験コーナーで好評だった「甲本パズル」や「江戸図屏風ワークシート」は今後も別の形で利用したいと思いますし、意外なほどの人気を博した「双六」も、またどこかでやりたいですね。
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 よく見るとこの双六、「上り」と「ふり出し」が同じ日本橋です。終わりは次の始まり、なんですね。
 リニューアルで来年3月半ばまで工事中の第3展示室(近世)では、「寺子屋れきはく」という体験コーナーができることになっているので、ボランティアさんたちには、そこでまたご活躍いただく予定です。「寺子屋」の中身は、近世担当のクルシマさんたちが頭をひねっていますが、みやこ展の「遊ぼう」コーナー以上に楽しい場所になりそうです。ご期待ください。
 みやこ展の方は、この後にもちろん撤収や返却などの後始末があるのですが、作った時の逆のことをするだけで、あまり面白い話ではないですから、ブログはこれで終了させていただきます。
 書いていて思ったのは、展示は本当にいろいろな方に支えられていて、いつのまにか「チームみやこ展」ができていた、ということです。歴史の小さなひとこまを、多くの人と共に作ることができた、ということでしょうか。
 館の内外でいろいろな作業にあたってくれたみなさま、ありがとうございました。会場を盛り上げてくださいましたボランティアのみなさま、ありがとうございました。
 そして、何よりもご来場いただいたお客様、ブログにつきあってくださったみなさま、本当にありがとうございました。
 
 なお、会場にお越しいただけなかった方のために、前回の判じ絵クイズをめくってお見せします。答えは、
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でした。
 判じ絵については、たばこと塩の博物館学芸員である岩崎均史さんの『江戸の判じ絵―これを判じてごろうじろ』(小学館、2003年、定価2400円+税)を参考にさせていただきました。実に面白い本で、売店のブックフェアでも、最後は売り切れでした。 

【今日のこの人(筆者)】
 ブログを書き始めたころから、「本人はいつ登場するんだ」とお叱り(?)を受けておりました。最後のお礼の機会に登場させていただきます。
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 歴博には、恥ずかしながらもう19年目になります。博物館の中は面白いことがたくさんあるので、いつか「内幕」をご紹介したいと思っていたのですが、こんな形で実現できたのは幸いでした。この欄にご登場いただいたみなさまには、改めてお礼申し上げます。
ふり返ってみると、このブログは、作者が企画展示という期間限定の空間を作り、そこにある屏風絵の世界に入り込み、展示が終わって戻ってくる、という物語になりました。これは、実は博物館に来て、歴史の展示を見て(体験して)帰る、というお客様の行為と同じことだと思います。歴博の出口の向こうにある世界は、私たちが今作りつつある歴史という未来の展示室なのです。
 屏風の中の人物(と動物)たちがあまりに魅力的なので、わたしも途中でそちらに住所を移してしまいそうになりました^^;。でも、彼らには彼らの世界を語らせておきましょう。わたしは、現在進行中の自分の世界で、みなさんと一緒に「新しい屏風」を作っていきたいと思います。これからも、どうぞよろしく御願いいたします。

※展示図録『西のみやこ 東のみやこ―描かれた中・近世都市』は、引き続き「歴史民俗博物館振興会」が販売しております。1200円+送料 ですので、どうぞ御利用下さい。

みやこ展の日々21 研究会

  1. 2007/05/01(火) 13:25:17
5月1日(火)
 連休前半は好天に恵まれ、展示室の方も、おかげさまでぐっとにぎやかになりました。すいていてゆったり見られるのも悪くありませんが、やはり展示室は人でにぎわっている方が熱気があって楽しいですね。

 さて、前にも書きましたが、当館は制度的には「大学共同利用機関」という、大学の研究者が共同で利用する施設、ということになっており、たとえば「国立天文台」とか、「国立民族学博物館」、「国文学研究資料館」などがお仲間です。で、展示を作って御覧いただくだけでなく、本来的な業務として、大学をはじめとする外部の研究者と一緒に、いろいろな共同研究を行っています。企画展は、実物資料を一堂に並べた研究の絶好の機会ですから、いろいろな研究課題で、「じゃ、期間中に研究会を設定しましょう」ということになります。
 連休中には、わたしが直接関わっているだけで、博物館教育の研究会、武士についての研究会、それに来年の企画展「旅から旅行へ」の展示プロジェクト(これも一種の共同研究です)があり、おとといは協力校の先生と、高校生を相手に展示を使った実験授業も行いました。さまざまな分野の専門家からご意見をいただくことで、研究もまた進みますから、いろいろなお客様に来ていただくのはとてもありがたいことです。でも、わたしは三連休じゃなくて三連投になってしまいました^^;。

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展示の人気スポットをもうひとつご紹介しておきましょう。展示資料を体験コーナーの遊びにしたものに、江戸の地名を絵で表した「判じ絵」があります。めくると答えが出るクイズに仕立てたところ、「だじゃれ」の面白さに笑いが絶えません。一つ例を挙げると、上のような絵ですが、さて、何という地名でしょうか?
 風が絵を吹き飛ばしている・・・よく見ると濁点がある・・・?? 答えを知りたい人は、展示室へお急ぎください。5月6日(日)までですよ! 
 
【今日のこの人】
 総合研究大学大学院(総研大)院生のニシヤマ君です。当館には、大学共同利用機関が集まってできている総研大の「日本歴史研究専攻」が置かれており、博士課程の学生さんがいます。博物館に関心のある人には、館の仕事を積極的に手伝ってもらっていて、今回評判のよかった洛中洛外図屏風「甲本」床面展示の地図も、実はニシヤマ君が制作してくれた力作です。高校生が「京都名所図屏風」を読み解くプログラムの指導も手伝ってもらいました。
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みやこ展の日々20 超拡大装置

  1. 2007/04/27(金) 14:39:37
4月27日(金)
 いよいよ明日からはゴールデンウィーク、会期も最後のクライマックスを迎えます。連休中は家族連れのお客様が多いので、休日プログラムの定番である常設展示の「れきはく親子クイズ」も、ロビーに特設受付デスクを出して対応しています。
 みやこ展と常設展を楽しんで(みやこ展の入場券で両方見られます)、新緑の城址公園を通り抜けて、「くらしの植物苑」で特別企画「伝統の桜草」を見れば、一日たっぷり楽しめます。
 さて、みやこ展はだんだんとお客様も増えてきましたが、会場で人気なのは、タッチパネルの「超拡大自在閲覧装置」で、よく人だかりがしています。
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 後期展示では、洛中洛外図屏風の甲本・乙本、江戸図屏風、江戸城登城図屏風、の4点について、大小計5台の装置を配置していますが、細部まで拡大してもボケないすぐれものなので、屏風の細かな所を見るのに絶大な威力を発揮しています。これは、当館の誇るIT専門家集団が開発したもので、もう7、8年前から展示にも随時導入しているのですが、細かい屏風絵とは特に相性がよく、今回のアンケートでも大変お褒めに預かっています。
 「DVDにして売ってほしい」という声も寄せられていますが、実はれきはくホームページ上でも、ついこの間から、これに近いことができるようになっています(http://www.rekihaku.ac.jp/events/gallery/index.html)。甲本と江戸図屏風については、自由に拡大縮小と場面の移動ができるようになりました。タッチパネルのように文字の解説は出ませんが、別に用意してある読み解き画像や、「電子企画展」の個別画像解説(これは甲本のみ)を合わせて御覧いただけば、かなりお分かりいただけるはずなので、ぜひお試しください。ポッドキャスティングの音声による解説を聞きながら見ていただくのも一興かと存じます。
  
【今日のこの人(たち)】
 洛中洛外図屏風(歴博乙本)の、「御霊神事(ごりょうしんじ)」の神輿(みこし)をかつぐ人々です。やや動きの固い人物が多い乙本の中で、ここは躍動感あふれるシーンです。おそらく中心となった画家が描いた部分なのでしょう。上京(かみぎょう)の代表的な祭りであるこの「御霊神事」(上御霊社の祭)は、出品中の『拾遺都名所図会』によれば、八月十八日に行われていた行事です。屏風の中では、左隻第6扇という、四季絵としては「秋」に当たる場所に描かれています。甲本でも、左隻の左側、つまり第4〜6扇は秋の光景で、第6扇には、現在の盆踊りにつながる七月の「念仏風流」が描かれています。暦の上では七・八・九月が「秋」だということに、改めて気づかされます。
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みやこ展の日々19 厳重な警備

  1. 2007/04/23(月) 18:00:00
4月23日(月)
 今回の展示資料の中には、ちょっと異色なものもあります。「修学院御行御道筋図巻」((読みは、しゅがくいんごこうおんみちすじずかん、かな?本館蔵です)がそれで、江戸後期の文政7年(1824)9月に、光格上皇が、徳川家斉(いえなり)によって修復された修学院離宮に出かけた時の道筋を描いたものです。
 江戸前期の洛中洛外図屏風には、後水尾(ごみずのお)天皇が二条城に行幸した「寛永行幸」がよく描かれているので(前期展示だとC本、後期展示だとF本がその例です)、行幸関連の資料も少し出品しているのですが、この図巻は行列の様子自体を描くのではなく、通行する道筋の警備の様子を事細かに描いています。人物はいっさい登場しません。道には白砂が敷かれ、通行路に面した門や道、そしてなんと川の中までことごとく竹矢来で封鎖され、お帰りの際に道を照らす高提灯(たかちょうちん)や篝火(かがりび)の位置が印で示されています。
 いかにもものものしい警備のありさまですが、御所の清和院門の外には「拝見埒(らち、柵のこと)」と書かれたスペースがあり、つまり行列は公開のパレードとして見物されていたこともわかります。

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 この資料は、警備の計画あるいは記録のために作った図面、ということになると思うのですが、美麗な絵画として作られているのがなんとも不思議です。
 
【今日のこの人】
 鳳輦(ほうれん)の中にいるのが、寛永3年(1626)9月6日に行われた「寛永行幸」での後水尾天皇です(「洛中洛外図屏風(歴博F本)」より)。これは移動中ですから当然姿は見えませんが、そもそも高貴な人は御簾(みす)などで隠して、あからさまには描かないことが多いです。江戸図屏風の家光も朱傘などに隠れていますし、洛中洛外図屏風(歴博甲本)でも、幕府の会所に描かれている面会中の将軍らしき人物は、顔が庇(ひさし)に隠れています。 
 なお、ここで鳳輦をかついでいる「駕輿丁(かよちょう)」たちが赤い衣を着ているのは、「延喜式」に見られる古代の規定を元にしているようで、他の絵ではたいてい白装束です。F本は少し時代が下がるので、全体にどうも現実から離れた表現になってきているようです。
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みやこ展の日々18 面接調査 

  1. 2007/04/20(金) 15:04:23
4月20日(金)
 今週は、なんだか冬に逆戻りしたような寒さになりました。お客様の数も今ひとつですが、でもずいぶん遠方から見える方もかなりいらっしゃるようです。
 お客様からは、自記式のアンケート(自由に書いてアンケート箱にいれていただくもの)の他に、面接による調査も行っています。どんな方が、どこからお見えになっているのか、といったことや、展示の内容について、あるいは気づかれたことについて、廊下に設けたデスクでおうかがいしています。
 自記式だけだと、何か書きたい方、つまり「よかったから褒めたい」か「よくなかったから苦情を言いたい」の両端に偏りますし、こちらが意図したことがうまく伝わっているかもよくわからないので、面談でご意見を聞くことも重視しています。今回の面接調査は、18日から22日の日曜日までですが、今後の展示でも、もしお見かけになったら、どうぞ御協力ください。
 水曜日には、ボランティアさんのスキルアップ講座も行いました。展示替えのポイントを確認し、これまでのお客様の質問やご意見を元に、対応の仕方や参考図書の使い方などについて研修しました。ボランティアさんも日々進化しています。
 それにしても、あの60もある甲本パズルのピースが一つもなくならないのは、なんだか感動的です。
大学からの見学もあります。今日は、K大学のN先生が学生さんを連れてこられたので、ご案内をしました。御連絡をいただいた時には、「展示替えがあるから、2回行きますよ」とおっしゃってました。そうこなくっちゃ!
 なお、当館は「大学共同利用機関」という制度の組織なので、大学教育に貢献すべく、大学の授業で展示を利用される場合は、事前に申請すると入館料が免除されます。その場合は、「サービス・普及係」まで御連絡ください。

【今日のこの人】
来館者調査担当のイノウエさんです。「異文化理解教育」がご専門の教育学のエキスパートで、当館には非常勤でお出でいただいています。イギリスで学位を取られたので、英語もご堪能です。
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