みやこ展の日々20 超拡大装置

  1. 2007/04/27(金) 14:39:37
4月27日(金)
 いよいよ明日からはゴールデンウィーク、会期も最後のクライマックスを迎えます。連休中は家族連れのお客様が多いので、休日プログラムの定番である常設展示の「れきはく親子クイズ」も、ロビーに特設受付デスクを出して対応しています。
 みやこ展と常設展を楽しんで(みやこ展の入場券で両方見られます)、新緑の城址公園を通り抜けて、「くらしの植物苑」で特別企画「伝統の桜草」を見れば、一日たっぷり楽しめます。
 さて、みやこ展はだんだんとお客様も増えてきましたが、会場で人気なのは、タッチパネルの「超拡大自在閲覧装置」で、よく人だかりがしています。
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 後期展示では、洛中洛外図屏風の甲本・乙本、江戸図屏風、江戸城登城図屏風、の4点について、大小計5台の装置を配置していますが、細部まで拡大してもボケないすぐれものなので、屏風の細かな所を見るのに絶大な威力を発揮しています。これは、当館の誇るIT専門家集団が開発したもので、もう7、8年前から展示にも随時導入しているのですが、細かい屏風絵とは特に相性がよく、今回のアンケートでも大変お褒めに預かっています。
 「DVDにして売ってほしい」という声も寄せられていますが、実はれきはくホームページ上でも、ついこの間から、これに近いことができるようになっています(http://www.rekihaku.ac.jp/events/gallery/index.html)。甲本と江戸図屏風については、自由に拡大縮小と場面の移動ができるようになりました。タッチパネルのように文字の解説は出ませんが、別に用意してある読み解き画像や、「電子企画展」の個別画像解説(これは甲本のみ)を合わせて御覧いただけば、かなりお分かりいただけるはずなので、ぜひお試しください。ポッドキャスティングの音声による解説を聞きながら見ていただくのも一興かと存じます。
  
【今日のこの人(たち)】
 洛中洛外図屏風(歴博乙本)の、「御霊神事(ごりょうしんじ)」の神輿(みこし)をかつぐ人々です。やや動きの固い人物が多い乙本の中で、ここは躍動感あふれるシーンです。おそらく中心となった画家が描いた部分なのでしょう。上京(かみぎょう)の代表的な祭りであるこの「御霊神事」(上御霊社の祭)は、出品中の『拾遺都名所図会』によれば、八月十八日に行われていた行事です。屏風の中では、左隻第6扇という、四季絵としては「秋」に当たる場所に描かれています。甲本でも、左隻の左側、つまり第4〜6扇は秋の光景で、第6扇には、現在の盆踊りにつながる七月の「念仏風流」が描かれています。暦の上では七・八・九月が「秋」だということに、改めて気づかされます。
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みやこ展の日々19 厳重な警備

  1. 2007/04/23(月) 18:00:00
4月23日(月)
 今回の展示資料の中には、ちょっと異色なものもあります。「修学院御行御道筋図巻」((読みは、しゅがくいんごこうおんみちすじずかん、かな?本館蔵です)がそれで、江戸後期の文政7年(1824)9月に、光格上皇が、徳川家斉(いえなり)によって修復された修学院離宮に出かけた時の道筋を描いたものです。
 江戸前期の洛中洛外図屏風には、後水尾(ごみずのお)天皇が二条城に行幸した「寛永行幸」がよく描かれているので(前期展示だとC本、後期展示だとF本がその例です)、行幸関連の資料も少し出品しているのですが、この図巻は行列の様子自体を描くのではなく、通行する道筋の警備の様子を事細かに描いています。人物はいっさい登場しません。道には白砂が敷かれ、通行路に面した門や道、そしてなんと川の中までことごとく竹矢来で封鎖され、お帰りの際に道を照らす高提灯(たかちょうちん)や篝火(かがりび)の位置が印で示されています。
 いかにもものものしい警備のありさまですが、御所の清和院門の外には「拝見埒(らち、柵のこと)」と書かれたスペースがあり、つまり行列は公開のパレードとして見物されていたこともわかります。

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 この資料は、警備の計画あるいは記録のために作った図面、ということになると思うのですが、美麗な絵画として作られているのがなんとも不思議です。
 
【今日のこの人】
 鳳輦(ほうれん)の中にいるのが、寛永3年(1626)9月6日に行われた「寛永行幸」での後水尾天皇です(「洛中洛外図屏風(歴博F本)」より)。これは移動中ですから当然姿は見えませんが、そもそも高貴な人は御簾(みす)などで隠して、あからさまには描かないことが多いです。江戸図屏風の家光も朱傘などに隠れていますし、洛中洛外図屏風(歴博甲本)でも、幕府の会所に描かれている面会中の将軍らしき人物は、顔が庇(ひさし)に隠れています。 
 なお、ここで鳳輦をかついでいる「駕輿丁(かよちょう)」たちが赤い衣を着ているのは、「延喜式」に見られる古代の規定を元にしているようで、他の絵ではたいてい白装束です。F本は少し時代が下がるので、全体にどうも現実から離れた表現になってきているようです。
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みやこ展の日々18 面接調査 

  1. 2007/04/20(金) 15:04:23
4月20日(金)
 今週は、なんだか冬に逆戻りしたような寒さになりました。お客様の数も今ひとつですが、でもずいぶん遠方から見える方もかなりいらっしゃるようです。
 お客様からは、自記式のアンケート(自由に書いてアンケート箱にいれていただくもの)の他に、面接による調査も行っています。どんな方が、どこからお見えになっているのか、といったことや、展示の内容について、あるいは気づかれたことについて、廊下に設けたデスクでおうかがいしています。
 自記式だけだと、何か書きたい方、つまり「よかったから褒めたい」か「よくなかったから苦情を言いたい」の両端に偏りますし、こちらが意図したことがうまく伝わっているかもよくわからないので、面談でご意見を聞くことも重視しています。今回の面接調査は、18日から22日の日曜日までですが、今後の展示でも、もしお見かけになったら、どうぞ御協力ください。
 水曜日には、ボランティアさんのスキルアップ講座も行いました。展示替えのポイントを確認し、これまでのお客様の質問やご意見を元に、対応の仕方や参考図書の使い方などについて研修しました。ボランティアさんも日々進化しています。
 それにしても、あの60もある甲本パズルのピースが一つもなくならないのは、なんだか感動的です。
大学からの見学もあります。今日は、K大学のN先生が学生さんを連れてこられたので、ご案内をしました。御連絡をいただいた時には、「展示替えがあるから、2回行きますよ」とおっしゃってました。そうこなくっちゃ!
 なお、当館は「大学共同利用機関」という制度の組織なので、大学教育に貢献すべく、大学の授業で展示を利用される場合は、事前に申請すると入館料が免除されます。その場合は、「サービス・普及係」まで御連絡ください。

【今日のこの人】
来館者調査担当のイノウエさんです。「異文化理解教育」がご専門の教育学のエキスパートで、当館には非常勤でお出でいただいています。イギリスで学位を取られたので、英語もご堪能です。
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みやこ展の日々17 休館日

  1. 2007/04/16(月) 18:00:00
4月16日(月)
 佐倉では、桜の後はチューリップです。蘭学が盛んだったことにちなんでオランダと交流があり、印旛沼のほとりに風車のある「チューリップ広場」が作られています。京成電車の車窓からよく見えますので、京成でみやこ展を見に来られる方は、臼井―佐倉間で左側にご注目ください。今年のチューリップ祭りは15日で終わりましたが、まだしばらくはきれいだと思います。
 さて、先週は、土曜日に講堂でオークボさんとジョイントの講演会を行いました。『江戸図屏風』に描かれた徳川家光には頼朝のイメージが投影されている、というオークボさんの指摘は、むむ、なるほどでした。300人以上の方が聞きに来てくれて、展示室もにぎやかでした。11日にはA日新聞、15日にはテレビのN曜美術館など、マスコミにもかなり取り上げられましたので、おかげさまで後半は入場者も増えそうです。
 今日は月曜日で展示はお休みですが、休館日は休館日にしかできない仕事がいろいろあります。ここまでも、2日はカツタさんの展示写真撮影、9日は記録ビデオ撮影、そして会期の中日に当たる今日は、また総出で展示替えです。6週間の会期だと、彩色の痛みやすい絵画は出しっぱなしにできないので、半ばでかなりの資料を入れ替えることになります。
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 屏風類は「屏風台車」に積んで収蔵庫から運び出し、洛中洛外図屏風の甲本は乙本に、C本・D本は、F本・E本に替わりました。江戸図屏風はレプリカからついに原品登場です! 錦絵類はすべて作品が入れ替わり、巻物や冊子も巻き替え・めくり替えをしました。タッチパネルの超拡大装置も、プロジェクト委員のスズキさんが調整してくれて、乙本のものが初登場します。
 作品が替わると、前期とはまた違った面白さです。乙本は大きくて見栄えがしますが、E本・F本も、なかなかかわいらしい絵です。前期にご来場された方も、ぜひまたお越しください。

【今日のこの人(たち)】
(前回の続き。洛中洛外図屏風(歴博甲本)右隻6扇の三条西邸で)
 「しーっ!いま鶯(うぐいす)が鳴く所じゃ。静かに静かに! ・・・・あ、これは失礼いたした。私は、室町時代の文化人として有名な三条西実隆(さんじょうにしさねたか)の息子で、やはり学者の公条(きんえだ)、だと思います。年代からいうと、たぶん。
いや、しかし春と言えば、やはりこの鶯合わせでしょうなあ。」
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(洛中洛外図屏風(歴博乙本)右隻5扇の二条邸で)
「さよう、今日から展示された乙本の私の家でも、飼っている鶯の声につられて、龍躍池で有名なこの庭に鶯がやって来るのです。ほら、こうして耳をかたむけていると・・・・」
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みやこ展の日々16 ご質問

  1. 2007/04/09(月) 18:00:00
4月9日(月)
 展示が始まると、ご来場のお客様からいろいろなご質問が寄せられます。いつも担当者が展示室にいるわけにはいかないので、答えられることはボランティアさんに答えていただき、さらに回答を求められる時は、質問用紙にご記入いただいて、郵送等でお答えすることになっています。実際は、その場の会話だけで済まされる方が多いので、どんな質問があるかはボランティアさんからの日誌などを元に、回答を用意しておくようにしています。
 「洛中洛外図屏風の作者は誰か」―名前まで分かることは少ないです。甲本は、土佐派や狩野派の有力絵師でしょう。
 「一人でかいたのですか」―このように大きな屏風は、弟子を動員して手分けして描くのがふつうだったようです。
 「どんな風に保存しているのですか」―ふだんは畳んで桐箱に入れ、温湿度管理をした収蔵庫の中に置いています。状態にもよりますが、重文クラスの彩色絵画は、基本的に年間4週間以内しか展示できません。
 といった具合です。
 こんな質問もありました。
 「洛中洛外図屏風(歴博甲本)には、どうしてカマキリが描かれているんですか」―甲本パズルのピースにした祇園祭の「蟷螂山(とうろうやま)」ですね。個別画像の解説に書いてあるように、非力なのに相手に立ち向かう「蟷螂の斧(おの)」という故事からです。
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 「あれ(解説にある『文選(もんぜん)』の引用)、見たけどむずかしくてやっぱり分からないですね。それに、マイナスイメージのものを、どうして使うんですか?」―えーと、それは・・・
 結局、オークボさんが「その話、たしか子どもの漢文の参考書にでていたから、持ってきます」ということになりました。元の出典は中国の『准南子(えなんじ)』という本で、中国の春秋時代の話、斉の荘公という王様が、乗っている車に打ちかかろうとするカマキリを見て、その勇気をほめ、よけて通らせた、という逸話であることがわかりました。いや〜、勉強になります^^;
 それにしても、これくらいのことを普通に知ってたわけですから、室町時代の町人の教養はすごいですね。 

【今日のこの人(たち)】
(甲本右隻6扇中上の三条西邸で)
「お母さん、たいへん!わたしたち、まわりの世界から切り離されているわ!」
「あら、困ったわね。きっとコジマさんのいたずらね。」
「はい。でもご心配なく。そのうち、パズルをしに来たお客さまが、元の絵の所にはめ込んでくださいますよ。」
「そうなの?でも早くお父さんに知らせなきゃ。お父さ〜ん!」
(つづく)

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