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学術創成研究費
「弥生農耕の起源と東アジア−炭素年代測定による高精度編年体系の構築−」

国際研究集会報告

日 時:平成16年12月25日(土)13:30〜17:00
    平成16年12月26日(日) 9:30〜16:00
会 場:国立歴史民俗博物館 講堂
内 容: 司会 (広瀬和雄・今村峯雄)
25日
2004年度の調査報告
報告1 韓国・九州の年代測定 (藤尾慎一郎)
報告2 中四国・近畿の年代測 春成秀爾・小林謙一)
報告3 東日本の年代測定 (小林謙一)
報告4 「年輪年代」−年輪年代法の調査現場から− (奈良文化財研究所 光谷拓実)
報告5 炭素年代測定値の暦年較正におけるいくつかの課題−統計的課題と資料の海洋リザーバー効果− (今村峯雄)
報告6 歴博における炭素14年代研究の現状と展開 (坂本 稔)
質 疑・応 答

26日
研究発表1 韓国中西部地域における無文土器時代の実年代 (高麗大學校 李 弘鍾)
研究発表2 ソウル大學校におけるAMS-14C年代測定施設の現状と韓国考古学への適用 (ソウル大學校 金 鍾賛 )
研究発表3 北京大学におけるAMS-14C年代測定法とその関連研究の現状 (北京大学 呉 小紅・陳 建立・趙 輝)
研究発表4 中国社会科学院考古研究所の炭素14年代測定 (中国社会科学院 仇 士華)
研究発表5 中国農耕儀礼の東方伝播 (京都大学 岡村秀典)
討  論 : 司 会 (名古屋大学 中村俊夫)/(九州大学 宮本一夫)

研究会の概要
本研究グループで2004年に行った研究の成果公表を目的とした国際研究集会を2004年12月25・26日の2日間に渡って国立歴史民俗博物館講堂にて開催しました。年度末の忙しい時期にも関わらず100名を上回る参加者となり、少なからぬ興味が本研究グループの経過に置かれていることが感じられました。
まず、一日目の25日は本研究グループの成果公表が主に行われました。考古学的な視点から韓国・九州、中四国・近畿、東日本の三つに地域ごとに分けて炭素14年代測定の結果が発表され、2004年度以前の分析結果を含め、現状の分析状況と今後どのような資料について採取・分析していくかなどの展望がなされました。炭素14年代法の方法論的な視点からは、炭素14年代測定およびその暦年較正から得られる情報の解釈の仕方、そして海洋リザーバー効果の弁別法などが示され、本研究グループの加速器質量分析(AMS)用測定試料の作成に関する現況についても報告がありました。奈良文化財研究所の光谷拓実氏からは日本版炭素14較正曲線の作成のため、年輪年代法で実年代の決められた貴重な資料の提供があったことなどが報告され、年輪年代法と考古学のつながりについて興味深い話もありました。
二日目の26日には中国、韓国におけるAMSによる炭素14年代測定の現況やそれを用いた考古学に対しての貢献についての研究発表が行われました。
日本の考古学と引き離しては考えられない韓国の土器の実年代に関する研究からは弥生時代の始まりが500年さかのぼることとほぼ整合的であるという発表がありました。ソウル大学のAMS-14C年代測定施設は本研究グループでも利用しているベータアナリティク社の測定機関にもなっており、その資料調整施設や加速器質量分析計による分析の実際についての発表は我々にとって非常に興味深いものでした。北京大学でも最近年代測定のための施設が立ち上げられ(施設見学の報告が本ニューズレターに掲載されています)、これも我々にとってとても刺激的な発表でありました。
中国では中国社会科学院で早くから炭素14年代法の考古学へ応用が行われており、今回発表されたその成果は日本においても年代決定法と考古学の緊密な連携による研究を強く後押しするものであると思われます。研究発表の最後には農耕儀礼についての講演が京都大学の岡村秀典氏よりありました。東アジアにおける農耕について研究する上で年代だけにとらわれない視点としてとても有意義なものであったと思います。また、この日の最後には一時間半ほどの総合討論が行われました。AMS炭素14年代測定の技術的な面に関して2400年問題や正確な日本版較正曲線の作成などそして土器付着炭化物以外の試料についての測定などの展望について意見交換が行われました。考古学的な観点からは土器付着炭化物の年代測定に関して、本研究グループではこれまで希薄であった大陸との関連性について議論が行われ、中国・韓国の研究者との交流による今後の進展が注目されます。
全般的に本研究集会は、本年度から始まった学術創成研究の成果公表そして中国・韓国の研究者との意見交換や双方の現況把握など今後の研究の進展に大きく寄与する研究会であったように思われます。光谷氏の講演にもありましたが、日本では考古学において自然科学的な年代決定法と密接な関係を持った研究が少ないようです。しかし、考古学者と自然科学者の有機的な結びつきの重要性を再確認し、多くの考古学者と自然科学者が忌憚のない意見交換のできた点においてこの研究集会は非常に意義深いものであったと思われます。
(文責 尾嵜大真)


仇士華先生の発表(右は通訳)

国際研究集会の様子1

国際研究集会の様子2


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