災害研究のうち、近代科学の手法による分析が可能になる以前の災害を歴史災害と呼びます。そのうち、特に地震、津波、噴火などの突発的災害は、人の一生に比べて発生頻度が低いため、災害体験が世代間で直接伝えられることがあまりありません。しかし、日本ではこれらの災害がしばしば起こり、またその記録類も豊富に残されています。
理学的、工学的研究は、歴史災害の研究が早くから行われ、成果を収めてきました。しかし、災害を克服し社会回復を行う人間や社会に関する研究の蓄積はあまりありません。歴史災害に関する研究は理学的研究だけでなく、人文社会科学的研究が必要ですが、あまり進展をみていないといえます。
この状況を打破し研究を一歩進めるため、共同研究と展示という形で、これまでの理学・工学分野の歴史災害研究の成果をまとめ、今後、歴史災害研究がとりうる方向を総合的に探りたいと考えています。
研究計画
共同研究メンバー
共同研究(展示)で取り上げる災害
共同研究会での研究状況
ニュースレター
2001年度
この年度は展示に向けての共同研究を行います。
研究会の開催は4回を予定しています。全体会と個別の災害にわかれた部会(地震、火山、津波)を開催する予定です。
第1回研究会(全体会) 2001年5月24日(日)
第2回研究会(地震部会) 2001年7月14日(土)〜15日(日)
第3回研究会(津波部会) 2001年10月16日(火)〜17日(水)(予定)
第4回研究会(火山部会) 2001年11月17日(土)〜18日(日)(予定)
2002年度
この年度は前年度の共同研究の成果をもとにして、展示プロジェクト委員会が発足し、展示の具体的な準備を行う予定です。
2003年度
この年度には展示を行います。約2ヶ月間の展示を予定しています。
北原糸子 歴史地震研究会幹事 歴史学
赤羽貞幸 信州大学教育学部教授 地質学
井上公夫 日本工営(株)副技師長 砂防学
岩崎伸一 防災科学技術研究所室長 津波学
今村文彦 東北大学大学院工学研究科教授 水工学
上田和枝 歴史地震研究会幹事 歴史地震
河田恵昭 京都大学防災研究所教授 防災学
小山真人 静岡大学教育学部教授 火山学
小林 茂 大阪大学大学院文学研究科教授 歴史地理学
首藤伸夫 岩手県立大学総合政策学部教授 津波学
武村雅之 鹿島建設(株)地震地盤研究部次長 防災学
都司嘉宣 東京大学地震研究所助教授 地震学
長谷川成一 弘前大学人文学部教授 歴史学
村上仁士 徳島大学大学院工学研究科教授 津波学
安達文夫 国立歴史民俗博物館教授 情報学
篠原 徹 国立歴史民俗博物館教授 民俗学
平川 南 国立歴史民俗博物館教授 歴史学
辻誠一郎 国立歴史民俗博物館助教授 歴史学
西谷 大 国立歴史民俗博物館助手 考古学
寺田匡宏 国立歴史民俗博物館COE研究員 歴史学
荒牧重雄 東京大学名誉教授 火山学
伊藤和明 災害情報機構理事 防災学
広井 脩 東京大学社会情報研究所教授 社会学
中村 操 ? 防災情報サービス取締役 防災学
林信太郎 秋田大学教育文化学部教授 地学
諸井孝文 鹿島建設? 地震地盤研究部 工学
元禄地震 元禄16(1703)年11月23日に関東で起こった地震。東海道の相模〜川崎は壊滅的被害を受けた。地震後発生した津波により犬吠埼〜下田でも6,500人以上の死者が出た。
安政江戸地震 安政2(1855)10月2日江戸で起こった地震。江戸町方の死者約4,300人、武家の死者約2,600人、倒壊家屋は15,000戸。地震後多数の瓦版や鯰絵が出版された。
関東大震災 大正12(1923)年9月1日発生した地震。東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、静岡、山梨で被害。東京市では火災のため死者9万人、負傷者10万人、行方不明者4万人。全壊家屋12万戸。
宝永4(1707)年11月23〜12月8日まで続いた噴火。火山弾によって山麓の須走村は75軒すべてが炎上倒壊、駿河竃優武蔵一帯に火山灰が降り田畑に被害が出た。
天明3(1783)年に起きた噴火。埋没,800戸、死者2,000人。吾妻川の決壊や利根川の水害などをもたらした。
寛政4(1792)年に起きた噴火。噴火と地震によって起きた眉山崩壊によって大規模な津波が発生。島原半島と肥後に大きな被害をもたらした。死者は14,000人以上とされる。その後小康状態を保っていたが、平成2(1990)年噴火。火砕流により死者43名を出した。
文化1(1804)年6月4日出羽で起こった地震。死者500人以上、被害家屋1万戸以上。名勝象潟の景観が失われた。
弘化4(1847)年3月24日、善光寺を中心として起こった地震。善光寺開帳の参詣者約6〜7,000人が地震と火災によって死亡した。
嘉永7(1854)11月4日、東海・東山・南海道で起こった東海地震と、5日に畿内・東海・東山・北陸・南海で起こった地震による津波。前者では房総から土佐沿岸、後者では紀伊・四国・豊後・日向が大きく約3000人の死者が出た。
明治29(1896)年6月15日、起こった地震による津波の被害。死者27,123人、被害家屋8,891戸。波高24mの被害を受けた村もあった。昭和8(1933)年3月3日の津波被害では死者3,008人、被害家屋7,263戸。また、昭和35年5月23日のチリ沖地震で発生した津波では死者106人、被害家屋約4,700戸を出した。
安政5(1858)年に飛騨・越中・加賀・越前で起こった地震。飛騨北部・越中で被害が大きかった。死者425人。 ※なお歴史災害との対比で現代の災害も取り上げる予定です。
日時:2001年5月27日(日)
場所:国立歴史民俗博物館第1会議室
内容:北原糸子「これまでの経緯と共同研究・展示プロジェクトの概要について」
今村文彦「明治・昭和三陸津波について」
村上仁士「安政東南海地震津波について」
河田恵昭「安政東南海地震津波について」
小林茂「島原大変関係絵図の分類」
荒巻重雄「天明浅間山噴火について」
伊藤和明「飛越地震について」
古沢勝幸「天明浅間山噴火展示資料リスト」
中村操・上田和枝「安政江戸地震の被害と地震像」
諸井孝文「関東大震災の被害データについて」
赤羽貞幸・原田和彦「善光寺地震資料について」
林信太郎「象潟地震の史料について」
安達文夫「歴史資料表示システムについて」
西谷大「展示までの作業工程」
北原糸子「展示構想」
日時:7月14日(土)〜15日(日)
場所:富山県立山カルデラ砂防博物館
内容:
研究会(7月14日)
北原糸子「展示方針について」
国香正稔(立山カルデラ砂防博物館)「立山カルデラ博物館の概要および周辺情報」
嶋本隆一氏(立山カルデラ砂防博物館)「飛越地震の資料について」
井上公夫「常願寺川の地形特性と鳶崩れ」
今村隆正氏(日本工営)「古文書・絵図から見た鳶崩れ」
中村操・上田和枝「安政江戸地震のデータベース」
武村雅之・諸井孝文「1923年関東地震の住家全壊による死亡危険度の地域分布」
新田太郎(江戸東京博物館)「歴史地震の地理情報化」
西谷大「展示構想試案-善光寺地震を参考にして-」
林信太郎「象潟地震について」
(現地見学会)
立山カルデラ大規模崩壊地
有峰湖、水谷出張所、六九谷、旧立山温泉と泥鰌池、真川第4砂防ダムと跡津川断層
日時:2001年10月16日(火)
場所:東北大学工学部
内容:北原糸子・寺田匡宏「共同研究の進捗状況について」
北原糸子「展示構想」
西谷大「展示構成案」
今村文彦「津波展示について」
村上仁士「安政地震津波について」
河田恵昭「安政地震津波について」
岩崎伸一「安政地震津波について」
首藤伸夫「三陸津波について」
卯花政孝「三陸津波碑について」
山下文男「三陸津波の写真について」
都司嘉宣「元禄津波データベースについて」
原田憲一「環境学と災害史について」(コメント)
日時:2001年11月17日(土)〜18日(日)
場所:群馬県立歴史博物館、浅間山山麓
内容:
17日(研究会)
記念講演 峰岸純夫「浅間山火山噴火と中世史研究」
記念講演 菅原征子「火山と神格」
北原糸子・寺田匡宏「経過報告」
西谷大「3D画像による展示場構成試案」
井上公夫「島原大変,眉山大崩壊前後の地形変化と展示の仕方」
小林茂「島原大変絵図類の読み取り方と展示方法」(欠席のため代読)
小山真人「富士山宝永噴火の火山学的解釈と展示の仕方」
松尾美恵子「富士山宝永噴火の社会的対応」
井上公夫「富士山宝永噴火に伴う土砂災害と展示の仕方」
荒牧重雄「浅間山天明噴火の火山学的解釈と展示の仕方」
能登健「浅間天明噴火の発掘調査について」
井上公夫「浅間山天明噴火に伴う土砂災害と展示の仕方」
古沢勝幸「天明浅間噴火の村落史料の扱いと展示への反映」
長谷川成一・林信太郎「象潟地震と鳥海山噴火について」
北原糸子・篠原徹「まとめと共同研究から展示プロジェクトへの移行について」
18日(現地見学会)
浅間山麓被災地見学
北牧宿・人助けのカヤ、金島の浅間石、善導寺供養塔、神代杉、吾妻渓谷、八ッ場ダム発掘現場、鎌原観音堂・資料館、浅間石、鬼押出し
「歴史資料と災害像」の展示に向けて 北原糸子
なぜ公募型共同研究なのか 篠原 徹
展示の文法(1) 主語(研究)と述語(展示) 西谷 大
記憶と歴史 寺田匡宏
特集 津波
津波工学からみた防災と展示 首藤伸夫
津波の比較史料学 都司嘉宣
連載 展示の文法(2) 展示視点の異相 西谷 大
三陸綾里湾津波語り 寺田匡宏
研究会ニュース/現地調査ノート
特集 災害とメディア
テレビの現場から見た災害 伊藤和明
災害の社会心理史 廣井脩
「災害展示」再考 山本唯人
展示もまた、生きもののように
−<ニュースの誕生>の2年間を読む− 寺田匡宏
特集 火山
日本と世界の火山学と私 荒牧重雄
地形変化と土砂災害 井上公夫
連載 展示の文法(3) 災害展示のメッセージ 西谷大
人は火山に何をみるのか
−池澤夏樹著『真昼のプリニウス』を読む− 寺田匡宏
特集 阪神大震災
災害精神医学の実践について 中井久夫
「美術は役に立たない」か?
−震災を体験した美術家と美術館の問い−河崎晃一
揺さ振られた建築表現
−二つの震災と表現としての建築− 笠原一人
神戸を歩いて見えたもの
−2002年1月17日、震災7年目紀行− 寺田匡宏
※『展示通信−歴史・人間・災害−』の内容について詳しくお知りになりたい方、郵送希望の方は、国立歴史民俗博物館 共同研究「歴史資料と災害像」事務局 COE研究員 寺田 匡宏(043-486-4281(直通)、fax043-486-4299、e-mail ms-terada@rekihaku.ac.jp)までお問い合わせ下さい。