開催要項
時代を語る[染]と[織]-墨書のある近世の染織-
1997年7月15日(火)~8月24日(日)
展示の紹介
衣服をはじめとする染織品の類は,本来,実用に供され消費される運命にあります.幸運に伝存している作品にしても,製作者や使用者,用いられた時代などが 明らかなものはほとんどありません.しかし,寺院に納められた打敷や幡などの染織品には,寄進の期日やそれに関わる人物などについて墨書されたものがあります.これらは法会に際して用いられる仏具の一種で,金襴などの豪華な生地で新調されたり,故人に纏る衣服を仕立て直したりして製作されます.また,花鳥模様の辻が花染小袖や,京都の壬生寺に伝わる小袖などのように,墨書が認められた完形の遺品の存在も注目されます.このような墨書を有する品々は 作期や使用の下限を押える貴重な資料となり,染織の意匠や技術の変遷を探る重要な指標となります.一方,墨書の内容は,具体的な“もの”とともにあることによって,寄進という行為を通じて繰り広げられる近世の人々と寺院との多様で緊密な関わりを浮き彫りにしてくれます.今回の展示では,このような墨書のある作品群に焦点を絞り,新しい角度から近世における染織文化を見つめ直していきたいと考えています.
浅葱平絹地松軍配団扇模様旗指物 | 染分綾地秋草千鳥模様友禅染小袖 | 白綸子地蝶萩模様染縫打敷 | 黒練緯地松竹鶴亀宝尽模様縫腰巻 |
梅鳳凰亀甲模様唐織 | 黄縮緬地桜樹短冊模様友禅染小袖 |