- このページの目次
- 開催要項趣旨展示の紹介関連の催し
趣旨
「番匠(ばんしょう)」とは、建築技術者すなわち今でいう大工のことで、その番匠が使う道具の一つに墨壷がある。墨壷は、木材を削ったりする前の墨付けをする道具で、奈良時代から使われていた。墨付けによって工事が始まり、仕事の良し悪しも墨付けで決まることから、墨壷には工事の安全と成功を祈る番匠の願いが込められていて、もっぱら機能性が求められる他の道具とは異なり、精神的な意義があり、造形的な美しさをもつものが多い。
また、建築工事では、工程上の節目ごとに無事成就を祈り、進捗を祝う儀式が行われてきた。なかでも、木造りを始める前の釿(ちょうな)始め、軸組が組み上がったときの棟上げは、番匠にとってとくに重要な儀式であり、御幣や弓矢を飾り、供物を供え、儀式用に調えられた墨壷や曲尺(かねしゃく)・釿などの道具を使って厳粛に行われる。
しかし、近年は墨壷のもつ重要性が忘れられ、それを使った古来の儀式も失われゆく状況にある。今回の展示は、第一級の墨壷コレクション(大塚集古資料館旧蔵)を収蔵した機会に、墨壷とそれに関連する儀式を取り上げたもので、それらの内容と歴史的意義を明らかにし、日本古来の建築文化を再認識することとしたい。
展示の紹介
1.墨壺
|
- 墨壺
- 墨壷の意義と働き/日本の墨壷/朝鮮半島・中国の墨壷
|
2.儀式
-
|
|
- 儀式用道具
- 儀式用道具/釿始めと棟上げ/文献・棟札にみる儀式と工程
|
錦絵 |
|
|
錦絵[幕府御本丸棟上式の図] |
岩松宮本[北野天神縁起絵巻] |
主な展示資料
- 墨壷
- 栄根遺跡出土墨壷(川西市蔵)
- 東大寺南大門発見墨壷(東京芸術大学蔵)
- 天正五年在銘墨壷(竹中大工道具館蔵)
- 天保九年在銘墨壷(東京大学蔵)
- 儀式用道具
- 日光東照宮儀式用道具一式
- 春日大社儀式用道具一式
- 松井家伝来儀式用道具一式(松井建設蔵)
- 平内家伝来儀式用道具一式(東京国立博物館蔵)
- 江戸城本丸御殿上棟式木槌(清水建設蔵)
- 瑞龍寺山門文政元年上棟式柱
- 絵巻等
- 松崎天神縁起(巻六、防府天満宮蔵)
- 春日権現験記模本(巻一、東京国立博物館蔵)
- 真如堂縁起(中・下巻、真正極楽寺蔵)
- 長谷寺縁起(下巻、出光美術館蔵)
- 三芳野天神縁起(三芳野神社蔵)
- 伊勢和山中興図(極楽寺蔵)
- 文書等
- 長命寺本堂大永再建観進書
- 西本願寺本堂宝暦九年上棟式関係文書
- 立川流宮坂昌敬関係文書(諏訪市博物館蔵)
- 志那神社本殿永仁六年旧棟木
- 苗村神社西本殿徳治三年棟札
関連の催し
歴博講演会
第151回歴博講演会 匠のまつり
日時 |
1996 年 7 月 13 日(土) 午前 1 時 30 分 ~ 午後 3 時 30 分 |
会場 |
歴博講堂 |
話者 |
濱島正士(情報資料研究部) |