企画展示をより楽しく、より深く鑑賞していただくため、本館の広報担当職員が企画展示の担当者から展示の見どころや作り手の気持ちを取材します。

今回は7月7日から開催する企画展示「ドイツと日本を結ぶもの-日独修好150年の歴史-」の保谷徹代表(東京大学史料編纂所・本館客員教授)にお話をうかがって来ました。
※画像掲載の資料はすべて出展されます。

展示案内「ドイツと日本を結ぶもの-日独修好150年の歴史-」

各回リンク
第1回「プロイセンがやって来た!」 第2回「貴重資料からみる日独外交」 第3回「深まる交流」 
第4回「第一次世界大戦~ワイマール共和国時代の日独関係」 第5回「第二次世界大戦以降の日独関係」

第5回 第二次世界大戦以降の日独関係

保谷:今回、日独防共協定などの実物も外交史料館からお借りしてきますので、そこも見ていただきたいですね。最初、満州事変が起きた時などは、ドイツは日本に対して批判的なんですよね。

その後の歴史を考えると、それはちょっと意外ですね。

保谷:ただ、ナチスが政権を握ると日独は接近していって、防共協定が結ばれて、三国同盟までいってしまうという流れです。そうして日独関係が密接になっていくと、防共協定の直後なんかはドイツ研究が雨後のタケノコのように大量に出てきます。文化的な面でいえば、「新しき土」(ドイツ側タイトルは「サムライの娘」)という映画が共同制作されたりします。日本側の監督は伊丹万作で、主演は原節子でした。


映画『新しき土』ポスター(ドイツ版)(個人蔵)

また、ベルリンでは日本美術の展示会が開かれ、ヒトラーが鑑賞に来る、といったこともありました。

そんな出来事もあったんですね。知らなかったです。

保谷:面白いエピソードですよね。ここはNHKに2〜3分の短い映像をつくってもらっていますから、展示室ではそちらを流します。ヒトラーは力強い山水画みたいなものが好きで、反対に浮世絵は嫌いだったので浮世絵は一点もなかったんです。その他、ヒトラー・ユーゲントが日本に来たりもしています。

戦時下でいえば、杉原千畝(すぎはら ちうね)のコーナーもありますよね。

保谷:殺伐とした時代で一服の清涼剤ですね。ドイツの侵攻が迫っている時に、命の危険がありながらビザを発給したという点で「諸国民の中の正義の人」という称号を得ています。彼は生き残ったユダヤ人の方々がつくった団体で表彰しているたった一人の日本人ですね。

終戦直前の秘話もご紹介しています。ドイツが降伏する直前、ドイツ製の最新のジェットエンジンなどの軍事情報と原子爆弾製造用のウランをUボートにのせて日本に出航するんですね。ですが、大西洋上でドイツが降伏してしまったので、艦長は最寄りの連合軍の港に投降しようとします。そのUボートには日本人の将校が二人乗っていて、彼らは投降に反対するのですが、多勢に無勢で「仕方なし」と最後はドイツ人の迷惑にならないよう服毒自殺をします。このエピソードは数年前に遺族の方が中心になって本が出版されています。

全く知りませんでした。まさに秘話ですね。

保谷:戦後の復興の様子も取り上げています。市民友好都市提携を結んでいるヴュルツブルクと長崎や、広島の話題などもご紹介しています。それから、ドイツは東西に分かれてしまうので、日本とどのように国交を回復していったのかといった部分も展示しています。

戦後の文化交流については、ブレヒト研究で著名な岩淵達治氏を取り上げています。それから、ポスターでは「ビールとサッカーだけがドイツじゃない」と言っておきながら、サッカーも少し取り上げています(笑)。「日本サッカーの父」と呼ばれ、サッカー殿堂入りもしたクラマーについてご紹介しています。クラマーは東京オリンピックの直前に招聘されて、日本代表のコーチをしています。川淵三郎氏が写っている当時の日本代表の写真なども展示します。

エピローグはこれまでのお話を凝縮したエピソードとして宮古島の3つの石碑をご紹介しています。


ドイツ皇帝博愛記念の碑(1876年)

「独逸商船遭難之地」の碑(1936年)
 
ドイツ連邦共和国首相来島記念碑(2000年)

保谷:1873年に宮古島で遭難したドイツ商船を島民が助けたので、ドイツ皇帝がそのお礼に記念碑を建てるんですね。その後日独関係が接近したのが1936年の防共協定で、その時に近衛文麿が日独友好をうたって新たに記念碑を建てます。さらに2000年にシュレーダー首相が宮古島を訪問し、3つ目の記念碑を建てます。政治に翻弄されながらも日本とドイツの人々の交流は続いてきたということですね。

最後にお伺いしたいのですが、日独150年の歴史を振り返って、どのような感想をお持ちですか?

保谷:本当にいろんな歴史があるのですが、おそらくほとんどの方は詳しくご存じではないのではないでしょうか。一つ一つのエピソードも面白いですし、大きな流れの中で、日本とドイツの関係を世界史の視点から見てみるというのも面白いですよね。日米関係の歴史はさまざまな場面で宣伝されますが、日独関係から世界史を見るというのもまた違った面白さがあると思います。

日本は大名が各地に割拠していましたし、ドイツも30カ国以上の国家に分かれていました。また、後進国として近代に出ていくという点でも似たような歴史を持っているわけです。そして、時には戦争をしたり、時には手を結んだりしながら両国は歩んできました。ただ最近の両国の歩みを見ていると、日本はちゃんとドイツを見て学んでいるかな、もうちょっとドイツを見て学ぶことがあるのではないかな、とあえて申し上げておきます。

本日は長時間ありがとうございました。

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